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第十章 されど幸せな日々
25 何でも、良かったことになる所 成人
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「ようこそいらっしゃいました、緋色殿下、成人殿下。並びにお付きの皆々様。ただいま西賀を預かっとります、各務梅光と伴侶の千代でございます」
ちょっと前、遊びに来て過ごしていた、屋敷くらいの大きさの西賀のお城に着いた。ここは、過ごしやすくて好き。皇国で最初に緋色と一緒に暮らした屋敷に似ているし、人の気配が何故かあまり気にならないから。持ち主が変わっても、お城は何にも変わっていないように見えた。やっぱり好き。
梅光は外で待っていた。しっかり包拳礼をしてご挨拶してくれた。隣で、同じように包拳礼をして頭を下げている伴侶は千代って言うんだね。覚えた。
「出迎え御苦労。とりあえず七人だ。聞いているか」
「はい。こちらは問題ございません」
梅光は、目の下に隈ができていない。隣の千代も。千寿と寿々丸も元気いっぱい。
走って、俺たちのバスに少しの間付いてきていた近くの小さい子どもたちも、元気いっぱいだった。バスが珍しいんやろ、って窓から手を振りながら寿々丸が言った。俺も一緒に手を振った。外の子どもたちは、わあって喜んで手を振り返してくれた。
見かけるのが小さな子どもばかりだな、って思っていたら、もう少し大きい子どもたちは学校に行っとる時間なんですって、千寿が教えてくれた。
なるほど。決まった年齢になると皆、学校に通うんだよって力丸と青葉が言っていたやつか。灯可と見可が毎日通っている所。皇国と西国と一緒なんだな。
千寿と寿々丸は今日は、公務って言って、学校をお休みしたそうだ。公務は、国のお仕事のことなんだって。俺たちをお迎えするために学校を休むことになったってこと? いいの? って聞いたら、もちろんって二人の声が揃った。大きな猪をうちらだけで仕留められたし、バスにも乗れたし、嬉しいことばっかり、なんだって。それなら良かった。
西賀国の人は、何かいつもと違う出来事があっても、それで良かったんだよって言ってくれるのがいい。
竹光が、任せられることは梅光んとこに任せてしまおう、って言っていた気持ち、分かるな。何でも、良かったことに変えてくれそうだから。
「頼もしいな」
「ええ。兄の残してくれた家臣たちが、とても頼もしいです」
「そうか」
緋色は、竹光たちに話すのと同じように梅光と話し始めた。
「こっちばっかり大丈夫でもあかんので、西中国に行ってもええ、と言うてくれとる者の何人かは準備を整えさせとります。そろそろあちらに行ってもらおうと思っとった所で」
「それは心強い。すぐに出られるなら、バスに乗せて連れていこう」
「よろしいんですか。そりゃ、大変に助かります。ほな、」
仕事の話が始まってしまったかな、と前を向くと、頭を上げた千代と目が合った。
にこって笑われて、釣られて笑う。千代は、青葉にちょっと似ている。顔の形が、とかじゃなくて、笑い方とか、そういうのが何となく。
「失礼しますよ、緋色殿下。旦那様も」
ぽん、と千代は少しふっくらした手を打ち鳴らす。
「お話は、中に入ってなさりませ」
西賀の人は、強そうに見えなくても強い時があるから油断できない。
ちょっと前、遊びに来て過ごしていた、屋敷くらいの大きさの西賀のお城に着いた。ここは、過ごしやすくて好き。皇国で最初に緋色と一緒に暮らした屋敷に似ているし、人の気配が何故かあまり気にならないから。持ち主が変わっても、お城は何にも変わっていないように見えた。やっぱり好き。
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「はい。こちらは問題ございません」
梅光は、目の下に隈ができていない。隣の千代も。千寿と寿々丸も元気いっぱい。
走って、俺たちのバスに少しの間付いてきていた近くの小さい子どもたちも、元気いっぱいだった。バスが珍しいんやろ、って窓から手を振りながら寿々丸が言った。俺も一緒に手を振った。外の子どもたちは、わあって喜んで手を振り返してくれた。
見かけるのが小さな子どもばかりだな、って思っていたら、もう少し大きい子どもたちは学校に行っとる時間なんですって、千寿が教えてくれた。
なるほど。決まった年齢になると皆、学校に通うんだよって力丸と青葉が言っていたやつか。灯可と見可が毎日通っている所。皇国と西国と一緒なんだな。
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「頼もしいな」
「ええ。兄の残してくれた家臣たちが、とても頼もしいです」
「そうか」
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「こっちばっかり大丈夫でもあかんので、西中国に行ってもええ、と言うてくれとる者の何人かは準備を整えさせとります。そろそろあちらに行ってもらおうと思っとった所で」
「それは心強い。すぐに出られるなら、バスに乗せて連れていこう」
「よろしいんですか。そりゃ、大変に助かります。ほな、」
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にこって笑われて、釣られて笑う。千代は、青葉にちょっと似ている。顔の形が、とかじゃなくて、笑い方とか、そういうのが何となく。
「失礼しますよ、緋色殿下。旦那様も」
ぽん、と千代は少しふっくらした手を打ち鳴らす。
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