【完結】人形と皇子

かずえ

文字の大きさ
上 下
1,232 / 1,321
第十章 されど幸せな日々

23 人それぞれの可愛い  成人

しおりを挟む
「すみません。発言をよろしいか」
 
 さくが、包拳礼をしながら言った。

「うん」

 もちろん。
 
「ご挨拶申し上げます。各務かがみ寿々丸すずまるさまの護衛を務めます戸次とつぎさくです」
「あ、はい。成人なるひとです。それと緋色ひいろ常陸丸ひたちまるです。ええっと、常陸丸ひたちまる泉門院せんもんいん常陸丸ひたちまるです。それとじいじ。じいじは九条くじょう……」

 あれ? なんだったっけ? 
 名前。じいじの名前が出てこない。
 うーん。
 人を何人か連れてトラックから戻ってきたじいじをじっと見ていると、どうした? と聞かれた。
 ま、いっか。

「じいじです」
「お、自己紹介か。九条利胤としたねじゃ。よろしく頼む」

 そうそう、それそれ。利胤としたねだ、利胤としたね緋色ひいろがいつも呼んでいるのに、全然出てこなかった。びっくり。覚えることが増えると、いつも気にしていない事ってすぐに出てこなくなるんだな。気をつけないと。常陸丸ひたちまる力丸りきまるもじいじの事、じい様って呼ぶし、九条家の人は、義父上ちちうえかお祖父様って言うから、じいじの名前を呼ぶのって緋色ひいろくらいなんだよなあ。

利胤としたね。うん。利胤としたね
「なんじゃ、成人なるひと成人なるひとに名を呼ばれるのは何だかおかしな心地じゃな。成人なるひとはわしの孫なんじゃから、じいじでよろしい」
「んー?」 

 孫? 俺も孫? 三郎と一緒? そうだったのか。

「誰が孫だ。あっちにもこっちにも孫をこしらえやがって」

 緋色ひいろが俺を後ろから抱えながら言った。ふふ。あったかい。

「可愛い子はみんなわしの孫じゃ。千寿せんじゅさまと寿々丸すずまるさまも可愛いからわしの孫にしたい所じゃが、立派な祖父母がいらっしゃるでな。心の孫という事にしておこう」
「心の孫? なんです、それ? あと、あっちにもこっちにも孫をこしらえてるって言い方、何だか語弊がある気がするんですけど」

 ごへい?

「いや、子どもじゃないんだから自分で作る訳じゃないし、いいのか……」

 常陸丸ひたちまるがぶつぶつ呟いている。

常陸丸ひたちまる、お主も心の孫の一人じゃ」
「へ? あ、は、それは光栄……」
「もちろん、緋色ひいろ殿下も」
「いらん」
「俺は孫」
「ふむ。孫の伴侶は孫じゃな。殿下は可愛くないが孫じゃ」

 可愛くなくても孫? まあね、緋色ひいろは可愛いんじゃなくて格好良いからね。

「俺も、可愛くなくても孫?」
成人なるひとは可愛いぞ? 三郎の次に」

 あ、うん。そうか。三郎の次。へえ、そうか。

「何を言っている。成人なるひとの方が可愛いだろう」
「いや、残念ながら殿下。流石の成人なるひとも三郎に比べれば」
「あの、すみません。可愛さで乙羽おとわにかなう者はないと思うんですが」

 あれ? 今、何の話……。

「あ、さく、ごめん。ええっと」
「あの。さしでがましいようですが、うちの姫さまと若さまの可愛さに勝るものはそうそうおらんものかと」
「え?」
「「え?」」

 
しおりを挟む
感想 2,404

あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

BLR15【完結】ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました

厘/りん
BL
 ナルン王国の下町に暮らす ルカ。 この国は一部の人だけに使える魔法が神様から贈られる。ルカはその一人で武器や防具、アクセサリーに『加護』を付けて売って生活をしていた。 ある日、配達の為に下町を歩いていたら指輪が落ちていた。見覚えのある指輪だったので届けに行くと…。 国を救った英雄(強面の可愛い物好き)と出生に秘密ありの痩せた青年のお話。 ☆英雄騎士 現在28歳    ルカ 現在18歳 ☆第11回BL小説大賞 21位   皆様のおかげで、奨励賞をいただきました。ありがとう御座いました。    

【完】僕の弟と僕の護衛騎士は、赤い糸で繋がっている

たまとら
BL
赤い糸が見えるキリルは、自分には糸が無いのでやさぐれ気味です

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

処理中です...