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第十章 されど幸せな日々
23 人それぞれの可愛い 成人
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「すみません。発言をよろしいか」
朔が、包拳礼をしながら言った。
「うん」
もちろん。
「ご挨拶申し上げます。各務寿々丸さまの護衛を務めます戸次朔です」
「あ、はい。成人です。それと緋色と常陸丸です。ええっと、常陸丸は泉門院常陸丸です。それとじいじ。じいじは九条……」
あれ? なんだったっけ?
名前。じいじの名前が出てこない。
うーん。
人を何人か連れてトラックから戻ってきたじいじをじっと見ていると、どうした? と聞かれた。
ま、いっか。
「じいじです」
「お、自己紹介か。九条利胤じゃ。よろしく頼む」
そうそう、それそれ。利胤だ、利胤。緋色がいつも呼んでいるのに、全然出てこなかった。びっくり。覚えることが増えると、いつも気にしていない事ってすぐに出てこなくなるんだな。気をつけないと。常陸丸と力丸もじいじの事、じい様って呼ぶし、九条家の人は、義父上かお祖父様って言うから、じいじの名前を呼ぶのって緋色くらいなんだよなあ。
「利胤。うん。利胤」
「なんじゃ、成人。成人に名を呼ばれるのは何だかおかしな心地じゃな。成人はわしの孫なんじゃから、じいじでよろしい」
「んー?」
孫? 俺も孫? 三郎と一緒? そうだったのか。
「誰が孫だ。あっちにもこっちにも孫をこしらえやがって」
緋色が俺を後ろから抱えながら言った。ふふ。あったかい。
「可愛い子はみんなわしの孫じゃ。千寿さまと寿々丸さまも可愛いからわしの孫にしたい所じゃが、立派な祖父母がいらっしゃるでな。心の孫という事にしておこう」
「心の孫? なんです、それ? あと、あっちにもこっちにも孫をこしらえてるって言い方、何だか語弊がある気がするんですけど」
ごへい?
「いや、子どもじゃないんだから自分で作る訳じゃないし、いいのか……」
常陸丸がぶつぶつ呟いている。
「常陸丸、お主も心の孫の一人じゃ」
「へ? あ、は、それは光栄……」
「もちろん、緋色殿下も」
「いらん」
「俺は孫」
「ふむ。孫の伴侶は孫じゃな。殿下は可愛くないが孫じゃ」
可愛くなくても孫? まあね、緋色は可愛いんじゃなくて格好良いからね。
「俺も、可愛くなくても孫?」
「成人は可愛いぞ? 三郎の次に」
あ、うん。そうか。三郎の次。へえ、そうか。
「何を言っている。成人の方が可愛いだろう」
「いや、残念ながら殿下。流石の成人も三郎に比べれば」
「あの、すみません。可愛さで乙羽にかなう者はないと思うんですが」
あれ? 今、何の話……。
「あ、朔、ごめん。ええっと」
「あの。さしでがましいようですが、うちの姫さまと若さまの可愛さに勝るものはそうそうおらんものかと」
「え?」
「「え?」」
朔が、包拳礼をしながら言った。
「うん」
もちろん。
「ご挨拶申し上げます。各務寿々丸さまの護衛を務めます戸次朔です」
「あ、はい。成人です。それと緋色と常陸丸です。ええっと、常陸丸は泉門院常陸丸です。それとじいじ。じいじは九条……」
あれ? なんだったっけ?
名前。じいじの名前が出てこない。
うーん。
人を何人か連れてトラックから戻ってきたじいじをじっと見ていると、どうした? と聞かれた。
ま、いっか。
「じいじです」
「お、自己紹介か。九条利胤じゃ。よろしく頼む」
そうそう、それそれ。利胤だ、利胤。緋色がいつも呼んでいるのに、全然出てこなかった。びっくり。覚えることが増えると、いつも気にしていない事ってすぐに出てこなくなるんだな。気をつけないと。常陸丸と力丸もじいじの事、じい様って呼ぶし、九条家の人は、義父上かお祖父様って言うから、じいじの名前を呼ぶのって緋色くらいなんだよなあ。
「利胤。うん。利胤」
「なんじゃ、成人。成人に名を呼ばれるのは何だかおかしな心地じゃな。成人はわしの孫なんじゃから、じいじでよろしい」
「んー?」
孫? 俺も孫? 三郎と一緒? そうだったのか。
「誰が孫だ。あっちにもこっちにも孫をこしらえやがって」
緋色が俺を後ろから抱えながら言った。ふふ。あったかい。
「可愛い子はみんなわしの孫じゃ。千寿さまと寿々丸さまも可愛いからわしの孫にしたい所じゃが、立派な祖父母がいらっしゃるでな。心の孫という事にしておこう」
「心の孫? なんです、それ? あと、あっちにもこっちにも孫をこしらえてるって言い方、何だか語弊がある気がするんですけど」
ごへい?
「いや、子どもじゃないんだから自分で作る訳じゃないし、いいのか……」
常陸丸がぶつぶつ呟いている。
「常陸丸、お主も心の孫の一人じゃ」
「へ? あ、は、それは光栄……」
「もちろん、緋色殿下も」
「いらん」
「俺は孫」
「ふむ。孫の伴侶は孫じゃな。殿下は可愛くないが孫じゃ」
可愛くなくても孫? まあね、緋色は可愛いんじゃなくて格好良いからね。
「俺も、可愛くなくても孫?」
「成人は可愛いぞ? 三郎の次に」
あ、うん。そうか。三郎の次。へえ、そうか。
「何を言っている。成人の方が可愛いだろう」
「いや、残念ながら殿下。流石の成人も三郎に比べれば」
「あの、すみません。可愛さで乙羽にかなう者はないと思うんですが」
あれ? 今、何の話……。
「あ、朔、ごめん。ええっと」
「あの。さしでがましいようですが、うちの姫さまと若さまの可愛さに勝るものはそうそうおらんものかと」
「え?」
「「え?」」
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