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第十章 されど幸せな日々
6 そっくり 成人
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水瀬を休ませて、その日は、俺や乙羽は城へは行かずにおうちの掃除をする事にした。
「俺も家で仕事をする」
「駄目ですよ、殿下。重要書類は運び出し禁止です」
「じゃ、休む」
「却下です。休むなら乙羽も休みの日にしてください。今日、俺たちが休んだってデートに行けないでしょうが。今日は水瀬が休みになったんだから、乙羽と成人は休めないでしょう?」
「ちっ。掃除や洗濯など、一日二日しなくとも問題ないだろ」
はあ、と常陸丸は大きく息を吐いた。
「掃除や洗濯なんてした事もないくせに、何でそんな事だけ知ってるんでしょうね」
「なんだ?」
「いえいえ。掃除や洗濯はいつの間にかしてあるもの、と考えるお偉いさんが多い中、とても理解のあるご主人様だな、と感心した次第。でも、駄目です。よーく思い出してみてください。殿下は先ほど、大変に理解のある上司の顔をして政巳も休みにしたんですよ」
「む」
緋色が言葉に詰まって、さ、行きますよって常陸丸が言った。今日は一緒にお城に行けないけど、お仕事頑張ってね、緋色。
玄関でお見送りしていたら、緋色は、俺と一緒ににこにことお見送りをしていた力丸のおでこをばちんと弾いた。
「ええー?」
「痛ってえ。ひでえ。俺、何もしてないのに」
ねえ? 何もしてないよねえ?
「ふん。じゃあな、成人。いってきます」
「ん、いってらっしゃい」
緋色は俺には、ちゅーをして出かけていった。何で力丸のおでこを弾いたのか聞こうと思ったけど聞けなかったな。まあ、いっか。
常陸丸も乙羽にちゅーしようとして止められて、ぎゅーって抱っこだけして出かけていった。
玄関はまだおうちだから、ちゅーしてもいいのに。
あ、そうか。他の人がいるとこ……。
おうちって、つい油断するよね。
斑鹿乃は、末良と一緒にうちに来てくれた。今日は、うちの掃除が仕事。うちが終わったら、斑鹿乃の家の掃除も一緒にしよう。鶴丸の家の様子も見に行こうか。
そういえば、鶴丸の家の掃除や洗濯は誰がしてるのかな? まさか、水瀬……。
うん。後で見に行こう。掃除や洗濯の係が誰もいなかったら、考えなくちゃいけない。
「末良がいるので、なかなか仕事が進まないかもしれませんけれど」
「大丈夫」
末良もお手伝いしてくれるんだから、人手は多くなってるよ。雑巾を一緒に持って拭き掃除したことあるじゃん。
あれ?
「これを手放さないので、お手々が一つしか空いてないのよねえ」
末良の手は、いつもの玩具の包丁で一つ埋まっている。
「また持ってきたの?」
「ん。だいじ」
「そっか」
大事か。お城で遊ぶ時も、いつも手に持ってるもんなあ。お散歩の時も持っている。そうかあ。おうちでも持ってるのか。
そういえば、亀吉も、すえーしといっしょって言って包丁を手に持って散歩してるんだけど、亀吉が持ってると何故か短刀に見えるんだよな。あれ、なんでだろう。同じ包丁の玩具のはずなのに。
「初めて遊んだ日からずっと、寝る時も一緒なんですよ」
「寝る時も?」
ぬいぐるみと違って、あまり抱き心地は良くなさそうだけど。
「お城に置いて帰りなさいって言うのに、大事だから駄目ってきかなくて。玉鶴さまが、それは末良の大事か。それでは手放せんのうって仰って、あの玩具一式プレゼントしてくださったんです。家でも夢中で、飽きもせずに野菜を切ったり鍋をかき混ぜたりしてるんですよ」
「ふふ」
広末にそっくりだ。
「俺も家で仕事をする」
「駄目ですよ、殿下。重要書類は運び出し禁止です」
「じゃ、休む」
「却下です。休むなら乙羽も休みの日にしてください。今日、俺たちが休んだってデートに行けないでしょうが。今日は水瀬が休みになったんだから、乙羽と成人は休めないでしょう?」
「ちっ。掃除や洗濯など、一日二日しなくとも問題ないだろ」
はあ、と常陸丸は大きく息を吐いた。
「掃除や洗濯なんてした事もないくせに、何でそんな事だけ知ってるんでしょうね」
「なんだ?」
「いえいえ。掃除や洗濯はいつの間にかしてあるもの、と考えるお偉いさんが多い中、とても理解のあるご主人様だな、と感心した次第。でも、駄目です。よーく思い出してみてください。殿下は先ほど、大変に理解のある上司の顔をして政巳も休みにしたんですよ」
「む」
緋色が言葉に詰まって、さ、行きますよって常陸丸が言った。今日は一緒にお城に行けないけど、お仕事頑張ってね、緋色。
玄関でお見送りしていたら、緋色は、俺と一緒ににこにことお見送りをしていた力丸のおでこをばちんと弾いた。
「ええー?」
「痛ってえ。ひでえ。俺、何もしてないのに」
ねえ? 何もしてないよねえ?
「ふん。じゃあな、成人。いってきます」
「ん、いってらっしゃい」
緋色は俺には、ちゅーをして出かけていった。何で力丸のおでこを弾いたのか聞こうと思ったけど聞けなかったな。まあ、いっか。
常陸丸も乙羽にちゅーしようとして止められて、ぎゅーって抱っこだけして出かけていった。
玄関はまだおうちだから、ちゅーしてもいいのに。
あ、そうか。他の人がいるとこ……。
おうちって、つい油断するよね。
斑鹿乃は、末良と一緒にうちに来てくれた。今日は、うちの掃除が仕事。うちが終わったら、斑鹿乃の家の掃除も一緒にしよう。鶴丸の家の様子も見に行こうか。
そういえば、鶴丸の家の掃除や洗濯は誰がしてるのかな? まさか、水瀬……。
うん。後で見に行こう。掃除や洗濯の係が誰もいなかったら、考えなくちゃいけない。
「末良がいるので、なかなか仕事が進まないかもしれませんけれど」
「大丈夫」
末良もお手伝いしてくれるんだから、人手は多くなってるよ。雑巾を一緒に持って拭き掃除したことあるじゃん。
あれ?
「これを手放さないので、お手々が一つしか空いてないのよねえ」
末良の手は、いつもの玩具の包丁で一つ埋まっている。
「また持ってきたの?」
「ん。だいじ」
「そっか」
大事か。お城で遊ぶ時も、いつも手に持ってるもんなあ。お散歩の時も持っている。そうかあ。おうちでも持ってるのか。
そういえば、亀吉も、すえーしといっしょって言って包丁を手に持って散歩してるんだけど、亀吉が持ってると何故か短刀に見えるんだよな。あれ、なんでだろう。同じ包丁の玩具のはずなのに。
「初めて遊んだ日からずっと、寝る時も一緒なんですよ」
「寝る時も?」
ぬいぐるみと違って、あまり抱き心地は良くなさそうだけど。
「お城に置いて帰りなさいって言うのに、大事だから駄目ってきかなくて。玉鶴さまが、それは末良の大事か。それでは手放せんのうって仰って、あの玩具一式プレゼントしてくださったんです。家でも夢中で、飽きもせずに野菜を切ったり鍋をかき混ぜたりしてるんですよ」
「ふふ」
広末にそっくりだ。
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