1,207 / 1,321
第九章 礼儀を知る人知らない人
164 小さな料理人 成人
しおりを挟む
今日はここで遊べって言われた部屋は、昨日と違って広かった。広い部屋に机が並んでいて、書類仕事ができるようになっている。竹光と鶴丸と三郎が並んで、書類を読んだり、何か書いたりしていた。他にも着物の人が二人いて、同じように書類を読んだり何か書いたりしている。緋色の席もあって、緋色は、はあってため息を吐きながらそこに座った。座りやすそうな座椅子がそれぞれ置いてあって、仕事はしやすそう。緋色の横に斎も座った。すぐに書類を渡されていた。
壁際に置かれた棚に、書類を少しずつ運んでいる着物の人もいた。あの狭い部屋から持ってきているんだな。大変だ。でも、この広い部屋に書類を移動しておけば、たくさんの人で手分けして仕事ができるからいいと思う。昨日の部屋は狭すぎて、手伝いがぱっと入れなかったもんね。
俺たちは、部屋の端っこで玩具を広げた。俺のお仕事は、今日も亀吉のお世話。もちろん、末良も。末良はまだ来たばかりなので、今は、斑鹿乃が付いてくれている。小さい子は、知らないお家で知らない人がたくさん居たら怖がっちゃうかもしれないから。末良が、斑鹿乃がいなくても大丈夫そうなら、斑鹿乃はお掃除の手伝いに行くって言っていた。
その時は任せて。俺の仕事なので。
「おお。おおお……」
「ちょち。ちょち」
「おおおお……」
「はい。どじょ」
「おおお」
末良、さっきから、おおしか言ってないな? 亀吉は、今日も真剣な顔で野菜と果物を切っている。良かったねえ、亀吉。見せたかったんだもんね、これ、末良に。
亀吉が、切った野菜を一つ持ち上げて末良に渡すと、末良はまた、おおって言った。亀吉、お皿には入れないんだ?
そう、お皿! 今日は、昨日よりもっとすごくなっていた。昨日は、包丁と野菜と果物だけだったのに、今日はまな板とお皿とお鍋と、お鍋を混ぜるやつとスプーンもある。なんか、いつも台所にある火のつくやつ、コンロ? だっけ? もある。水道みたいなのもある。木でね、そっくりに作ってあるの。もうびっくり。そりゃ、おおって言うよ。俺と力丸も言ったもん、おおって。斑鹿乃も、まああって言ってたし。
お料理できちゃうね。ね? 末良。
包丁や野菜や果物も、昨日より数が増えているから、二人で一緒に切れる。
「ほら、末良。やってみて」
木でできた包丁を渡したら、末良はまた、おおって言った。包丁を手に持ってじぃっと見て、はああって大きく息を吐いた。
「おとしゃ、いしょ」
ん?
「おとしゃの。だいじ」
「そうね。お父さんの大事なお仕事道具と一緒ね」
斑鹿乃がにこにこ笑って言うと、末良がうんうんって頷く。
おとしゃは、お父さんか。お父さんは父上の事だったな。末良は広末の事、お父さんって呼ぶ。父上や母上の呼び名は、色々あって難しい。
末良は、よちって言うと、やっと一つ、ざくって切った。
「おお」
ざく。
「おおおお」
ざくっ、ざくっ。
そこからは末良は、夢中でたくさん切り始めた。
昨日、亀吉にしてあげたみたいに、切れた野菜や果物をまたくっつけてあげようかと思ったら、切ったのをお皿に並べはじめたので手を引っ込めた。
「なりゅしゃま。どーじょ」
「わ、ありがとう、末良」
末良は流石、広末の子どもだなあ。切った野菜や果物を、お皿にのせて渡してくれた。
それを見た亀吉も、真似をしてお皿に並べている。
やっぱり、一緒に遊ぶと楽しいね。良かったね。
「どじょ」
「どーじょ」
二人は、お皿の上に切った野菜や果物を並べて、仕事中の人の所まで配って歩いた。みんな、ありがとうって受け取ってくれた。上手だねってたくさん褒めてもらって、にこにこだった。
食べる真似をして、おいしいって言ったら、うふふーって口に手を当てて笑った。可愛い。
末良は本当に上手。切った野菜や果物をお鍋に入れてかき混ぜたり、蓋をしたりしてちゃんと料理をしていたので、びっくりしてしまった。調味料まで、ぱっぱっと振っていた。ていうか、調味料まであるのすごい。振ると音がする。
玩具も色々あって、本当にすごいな。
壁際に置かれた棚に、書類を少しずつ運んでいる着物の人もいた。あの狭い部屋から持ってきているんだな。大変だ。でも、この広い部屋に書類を移動しておけば、たくさんの人で手分けして仕事ができるからいいと思う。昨日の部屋は狭すぎて、手伝いがぱっと入れなかったもんね。
俺たちは、部屋の端っこで玩具を広げた。俺のお仕事は、今日も亀吉のお世話。もちろん、末良も。末良はまだ来たばかりなので、今は、斑鹿乃が付いてくれている。小さい子は、知らないお家で知らない人がたくさん居たら怖がっちゃうかもしれないから。末良が、斑鹿乃がいなくても大丈夫そうなら、斑鹿乃はお掃除の手伝いに行くって言っていた。
その時は任せて。俺の仕事なので。
「おお。おおお……」
「ちょち。ちょち」
「おおおお……」
「はい。どじょ」
「おおお」
末良、さっきから、おおしか言ってないな? 亀吉は、今日も真剣な顔で野菜と果物を切っている。良かったねえ、亀吉。見せたかったんだもんね、これ、末良に。
亀吉が、切った野菜を一つ持ち上げて末良に渡すと、末良はまた、おおって言った。亀吉、お皿には入れないんだ?
そう、お皿! 今日は、昨日よりもっとすごくなっていた。昨日は、包丁と野菜と果物だけだったのに、今日はまな板とお皿とお鍋と、お鍋を混ぜるやつとスプーンもある。なんか、いつも台所にある火のつくやつ、コンロ? だっけ? もある。水道みたいなのもある。木でね、そっくりに作ってあるの。もうびっくり。そりゃ、おおって言うよ。俺と力丸も言ったもん、おおって。斑鹿乃も、まああって言ってたし。
お料理できちゃうね。ね? 末良。
包丁や野菜や果物も、昨日より数が増えているから、二人で一緒に切れる。
「ほら、末良。やってみて」
木でできた包丁を渡したら、末良はまた、おおって言った。包丁を手に持ってじぃっと見て、はああって大きく息を吐いた。
「おとしゃ、いしょ」
ん?
「おとしゃの。だいじ」
「そうね。お父さんの大事なお仕事道具と一緒ね」
斑鹿乃がにこにこ笑って言うと、末良がうんうんって頷く。
おとしゃは、お父さんか。お父さんは父上の事だったな。末良は広末の事、お父さんって呼ぶ。父上や母上の呼び名は、色々あって難しい。
末良は、よちって言うと、やっと一つ、ざくって切った。
「おお」
ざく。
「おおおお」
ざくっ、ざくっ。
そこからは末良は、夢中でたくさん切り始めた。
昨日、亀吉にしてあげたみたいに、切れた野菜や果物をまたくっつけてあげようかと思ったら、切ったのをお皿に並べはじめたので手を引っ込めた。
「なりゅしゃま。どーじょ」
「わ、ありがとう、末良」
末良は流石、広末の子どもだなあ。切った野菜や果物を、お皿にのせて渡してくれた。
それを見た亀吉も、真似をしてお皿に並べている。
やっぱり、一緒に遊ぶと楽しいね。良かったね。
「どじょ」
「どーじょ」
二人は、お皿の上に切った野菜や果物を並べて、仕事中の人の所まで配って歩いた。みんな、ありがとうって受け取ってくれた。上手だねってたくさん褒めてもらって、にこにこだった。
食べる真似をして、おいしいって言ったら、うふふーって口に手を当てて笑った。可愛い。
末良は本当に上手。切った野菜や果物をお鍋に入れてかき混ぜたり、蓋をしたりしてちゃんと料理をしていたので、びっくりしてしまった。調味料まで、ぱっぱっと振っていた。ていうか、調味料まであるのすごい。振ると音がする。
玩具も色々あって、本当にすごいな。
1,565
お気に入りに追加
5,083
あなたにおすすめの小説
【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
十二年付き合った彼氏を人気清純派アイドルに盗られて絶望してたら、幼馴染のポンコツ御曹司に溺愛されたので、奴らを見返してやりたいと思います
塔原 槇
BL
会社員、兎山俊太郎(とやま しゅんたろう)はある日、「やっぱり女の子が好きだわ」と言われ別れを切り出される。彼氏の売れないバンドマン、熊井雄介(くまい ゆうすけ)は人気上昇中の清純派アイドル、桃澤久留美(ももざわ くるみ)と付き合うのだと言う。ショックの中で俊太郎が出社すると、幼馴染の有栖川麗音(ありすがわ れおん)が中途採用で入社してきて……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる