【完結】人形と皇子

かずえ

文字の大きさ
上 下
1,204 / 1,321
第九章 礼儀を知る人知らない人

161 あれ?  成人

しおりを挟む
 それから、二階をぐるっと回って、登れないけど三階に上がる梯子はしごを確認したりした。亀吉は、目をきらきらさせて梯子を見ていた。登ったら駄目だよって言ったら、はいっ、っていい返事が返ってきた。返事はいいんだよねえ、返事は。
 さっき、鶴丸つるまるも言ってたな。返事はええんやけどなあって。
 まあ、いっか。

梯子はしご、絶対、見張っておいてね」
「はっ」

 その辺りを巡回していた兵に言うと、気持ちのいい返事が返ってきた。こういう時の包拳礼は、すると気持ちがいいね。うん。色々な動作にもそれなりに意味がある。

「誰も、勝手に上に登らないようにね」
「はっ」

 うん。これで大丈夫だろ。

「あ。若様の亀吉かめきちが登るって言っても駄目だよ?」

 身分がーって言って、言うことを聞かせようとする人が、よくいるんだけどさ。でも、言うこと聞いちゃいけない時ってあるから。
 亀吉はそんなことしないけどね。
 
「はっ」

 うん、いい返事。あ、でも。

竹光たけみつ鶴丸つるまるはいいよ。松吉まつきち玉鶴たまつるも」

 大人だし。ここのあるじだし? 

「ははっ」

 何だか気分よく一階に戻った。階段を降りきったら、亀吉はまたくるりと階段側を向いて登ろうとし始めた。
 なんで?
 俺が首を傾げているうちに、香月かづきがひょいと抱っこして止めた。亀吉のお付きって、本当に素早くないとできないな? 動きが早くてびっくりしちゃうよ。

「亀吉さま、そろそろ末良すえよしさんが来られるとお聞きしとります。お迎えしましょう、お迎え」

 え? そうなの?

「すえーし!」

 亀吉は、香月かづきに抱え上げられたまま足をぱたぱたさせた。あ、ご機嫌な時の足のぱたぱた。亀吉もやるんだ。末良すえよしもね、小さい時よくやってたよ。うつ伏せで玩具を手に持って、足がぱたぱたしてたり、お座りしてぱたぱたしてるの、可愛かったんだよねえ。亀吉ほど、激しくはなかったけど。
 香月かづきが亀吉を下に下ろしたら、たって走った。出入り口と反対だけど、皆笑いながらついて行った。
 末良すえよしたちが着いたよって聞いてから行っても、きっと間に合うしね。
 しばらく、ご機嫌でうろうろしていたら連絡が来た。

「すえーしー!」

 亀吉は大喜びで、車から降りてきた末良すえよしに向かって走った。ぱっとこちらを見た末良すえよしも、にこにこ笑顔でこちらに向かって走り出した。
 二人は、すっかり仲良しになったんだなあ。可愛いなあ。

「なりゅしゃまー!」

 あれ?
しおりを挟む
感想 2,394

あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています

ぽんちゃん
BL
 病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。  謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。  五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。  剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。  加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。  そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。  次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。  一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。  妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。  我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。  こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。  同性婚が当たり前の世界。  女性も登場しますが、恋愛には発展しません。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく

藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。 目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり…… 巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。 【感想のお返事について】 感想をくださりありがとうございます。 執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。 大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

弟が生まれて両親に売られたけど、売られた先で溺愛されました

にがり
BL
貴族の家に生まれたが、弟が生まれたことによって両親に売られた少年が、自分を溺愛している人と出会う話です

処理中です...