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第九章 礼儀を知る人知らない人
154 良かった 成人
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二階にも部屋はたくさんあった。うん。広いね、ほんと。住んでいる人とそのお世話をする人、仕事をしにくる人がいるとそうなるのかな。皇城も、広いもんな。あ、でも、皇城は、仕事の人はお城の外の家に帰るから、ここまで広くない。いや、昨日、お城から帰ろうとしている人がたくさんいたよね。出入り口が大騒ぎになっていた。じゃ、この城の人も夜には帰るのか? それにしては広いな……。
その中の、二つの広い部屋の間の戸を外して更に広くした部屋に、昨日捕らえた人たちは押し込められているみたいだ。
階段を上がった所とその部屋の周りには、動きやすい服に着替えた見覚えのある武官たちがいて、俺を見ると、素早く包拳礼をしてくれた。
「あれ? ええっと、罪人、さん?」
あの、西賀国の村で村の人を追い出そうと暴れようとしていた所を、たまたま視察中だった俺たちが捕まえた人たちだよね。この城に預けた後、ご飯と飲み物をあんまりもらえていなかったらしい人たち。元気になったんだ? 一日で?
「あー、成人。こいつらは、もう罪人の扱いじゃなくなった」
「ふーん?」
「もともと西中国所属の兵たちだ。上から命じられて、野盗の振りをして西賀の村を襲っていたらしい。昨日、早々に、新しい領主である竹光さまや次期領主の鶴丸さまに忠誠を誓ってくれたんだ。事情を聞けば、身分が低い実力者揃いで、家族などを盾に汚れ仕事を回されていた部隊だったらしい。こんな事はしたくなかった、と悔いる姿に偽りなしという竹光さまのご判断だ。そのまま、兵として雇うことになった。全員じゃないけどな」
「おお」
いいじゃん。確かに、皆、まあまあ強そう。もう少し、ちゃんとお休みした方がいいと思うけどね。ご飯、あんまり食べられていなかったし。
「ま、無罪放免ってんじゃ示しがつかないからな。しばらくは、この城に寝泊まりして仕事してもらうことになっている。おかしな事しないように見張ってるっていう振りだよ、振り。な?」
力丸が、包拳礼をしている人たちに向かってにかっと笑う。兵たちは、包拳礼のまま更に深く頭を下げた。
「あ、礼はもういいよ」
お仕事中にごめんね。
じいじとじいやが出入り口にいるから、誰も変な人はお城に入れないと思うんだけど、まだ中に、変な人がいるかもしれない。礼をしてて、動きが遅くなるのは良くない。
元々の主を助けようとする人とか? 俺たちに何かしようとする人とか? いるかもしれないじゃん? 俺たちは皆、護衛付きで動いてるから無理だと思うけど、まあ、無理ってことが分からない人もたまにいるし。
「あのさ、家族を盾にって何?」
「ん? あー、そこ引っかかったのか」
家族は分かるよ? 俺にもいるもん、家族。それを盾にって、どういうこと?
「あのな。うーん、そうだな。言うこと聞かないと、家族がどうなっても知らないぞって脅すことだな」
「んん?」
「だから、お前が、ええっと、そうだな。朱実殿下に大怪我させて来ないと、緋色殿下がどうなっても知らねえぞって言われたりすること、だな」
「うーん?」
まあ、言われたらやるけど。誰が言うの? 父さま? でも、緋色がどうなる事はなくない? 常陸丸いるし。
「あー。例えが悪かった。ええっと、そうだな。兄上が義姉上を拐われて、無事に返して欲しかったら緋色殿下の命を奪えって朱実殿下に命じられたら、どうすると思う?」
「……」
最悪だ。
「そういう感じ」
「大変だったね」
俺が兵たちに言うと、兵たちは上げていた頭をまた下げた。
「家族と連絡できた?」
「はい……。はい……」
兵たちが何度も頷いた。
良かった。
その中の、二つの広い部屋の間の戸を外して更に広くした部屋に、昨日捕らえた人たちは押し込められているみたいだ。
階段を上がった所とその部屋の周りには、動きやすい服に着替えた見覚えのある武官たちがいて、俺を見ると、素早く包拳礼をしてくれた。
「あれ? ええっと、罪人、さん?」
あの、西賀国の村で村の人を追い出そうと暴れようとしていた所を、たまたま視察中だった俺たちが捕まえた人たちだよね。この城に預けた後、ご飯と飲み物をあんまりもらえていなかったらしい人たち。元気になったんだ? 一日で?
「あー、成人。こいつらは、もう罪人の扱いじゃなくなった」
「ふーん?」
「もともと西中国所属の兵たちだ。上から命じられて、野盗の振りをして西賀の村を襲っていたらしい。昨日、早々に、新しい領主である竹光さまや次期領主の鶴丸さまに忠誠を誓ってくれたんだ。事情を聞けば、身分が低い実力者揃いで、家族などを盾に汚れ仕事を回されていた部隊だったらしい。こんな事はしたくなかった、と悔いる姿に偽りなしという竹光さまのご判断だ。そのまま、兵として雇うことになった。全員じゃないけどな」
「おお」
いいじゃん。確かに、皆、まあまあ強そう。もう少し、ちゃんとお休みした方がいいと思うけどね。ご飯、あんまり食べられていなかったし。
「ま、無罪放免ってんじゃ示しがつかないからな。しばらくは、この城に寝泊まりして仕事してもらうことになっている。おかしな事しないように見張ってるっていう振りだよ、振り。な?」
力丸が、包拳礼をしている人たちに向かってにかっと笑う。兵たちは、包拳礼のまま更に深く頭を下げた。
「あ、礼はもういいよ」
お仕事中にごめんね。
じいじとじいやが出入り口にいるから、誰も変な人はお城に入れないと思うんだけど、まだ中に、変な人がいるかもしれない。礼をしてて、動きが遅くなるのは良くない。
元々の主を助けようとする人とか? 俺たちに何かしようとする人とか? いるかもしれないじゃん? 俺たちは皆、護衛付きで動いてるから無理だと思うけど、まあ、無理ってことが分からない人もたまにいるし。
「あのさ、家族を盾にって何?」
「ん? あー、そこ引っかかったのか」
家族は分かるよ? 俺にもいるもん、家族。それを盾にって、どういうこと?
「あのな。うーん、そうだな。言うこと聞かないと、家族がどうなっても知らないぞって脅すことだな」
「んん?」
「だから、お前が、ええっと、そうだな。朱実殿下に大怪我させて来ないと、緋色殿下がどうなっても知らねえぞって言われたりすること、だな」
「うーん?」
まあ、言われたらやるけど。誰が言うの? 父さま? でも、緋色がどうなる事はなくない? 常陸丸いるし。
「あー。例えが悪かった。ええっと、そうだな。兄上が義姉上を拐われて、無事に返して欲しかったら緋色殿下の命を奪えって朱実殿下に命じられたら、どうすると思う?」
「……」
最悪だ。
「そういう感じ」
「大変だったね」
俺が兵たちに言うと、兵たちは上げていた頭をまた下げた。
「家族と連絡できた?」
「はい……。はい……」
兵たちが何度も頷いた。
良かった。
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