【完結】人形と皇子

かずえ

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第九章 礼儀を知る人知らない人

153 お城探検中  成人

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 ひと休み終わって、捕らえている人達の様子を見たいって言ったら、お前はまた、そんな面倒くさいことばっかり……と力丸りきまるに言われた。面倒くさいって何だよー。ちゃんとご飯を食べて水分を取っているか気になるじゃん。こちらから食べ物や水分を渡していないってことは絶対無いから、もらってからちゃんと食べているかどうかだよね。
 あとさ。ただ捕らえているだけとかもったいないから、できるお仕事があるならしてもらわないと。竹光たけみつの元でお仕えする気があるなら、一度剥奪した地位と権利もそれなりに戻すつもりがあるって伝えたんだから、一日経ってどうなったか知りたい。
 一階の端にある厨房から階段を登って二階に行った。一階だけで暮らせるし仕事もできるから、昨日は二階までは行っていなかった。三階と更に上もあるんだよね、ここ。後で登ってみようか。

「登らんぞ?」
「え?」

 力丸りきまるってさ、なんでまだ何も言ってないのに俺の考えてること分かるんだ?

「三階から上に登るのは、階段じゃなく梯子はしごだから危ない」
「はしご?」
「そう、梯子はしご

 ああ。うん、あれか。手を掛けて登るやつ。
 …………。
 
「体が後ろに倒れる前に次のはしごを掴めば」
「させる訳ねえだろ」
「なんで?!」

 一段登って、手を離して、ぱって次の棒を掴めば登れるじゃん。

「駄目だ。危ない」
「できる」
「上がったら降りなきゃなんねえんだよ。ずっと上にいる気か?」
「……むぅ」

 確かに? 上がるのは、手を離しては、ぱっと次を掴む作戦でできても、降りるのはなかなか厳しそうだ。……この、ちょっとだけ残っている左腕と体でこう、棒を挟んで、うん、何とかならないものか。

「上がったって何もねえよ」
「はい、眺めがええだけでした」

 力丸りきまる香月かづきが言った。

「ん?」

 何もない? 眺めがいい? 見取り図だけじゃそんなこと分からないよね? 
 二人とも、しっかり登ってるじゃん。ずるい。

「あー、成人なるひと、あれだ。そのうち、階段をつけてもらおうぜ。ここはもう、各務かがみ様の持ち物になったんだから、色々、使いやすいようにしてもらったらいいじゃねえか」
「あ、それがええですね。梯子はしごやと亀吉かめきちさまにも危険ですし、改装して頂けるよう私からも進言しときます」
「あー。亀吉かめきちさま、登りそうっすね」
「そうなんです。簡単に登ってしまわれそうで目が離せんくて……。階段でも危ないのに、梯子はしごとか、ほんまかなん……」

 階段を、力丸りきまると手を繋いでよいしょ、よいしょ、と登る亀吉かめきちは、とっても身軽。梯子はしごも簡単に登っちゃいそうだ。うん、危ないな。
 分かったよ。亀吉かめきちが真似しても困るし、今日のところはやめとく。今日はね。
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