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第九章 礼儀を知る人知らない人
151 簡単なこと 成人
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「なーひとでんか」
厨房に着いたら、亀吉がいた。
俺をみつけて、喜んで飛びついて来ようとして止まる。亀吉の後ろで村次が笑った。今日も亀吉に付いているらしい香月も後ろにいて、ぺこぺこと頭を下げていた。
「亀吉、おはよう」
「おはようごじゃます」
亀吉は、じいっと半助を見ながら答えた。昨日までいなかった人だから、気になるよね。壱臣のことはちょっと見ただけで、後は半助を観察している。誕生日会に遊びに来た時に会ってるけど、ちょっとだけだったから忘れちゃったかな? 忘れるよね。亀吉は小さいから。でも、ちゃんと挨拶できたの偉い。
「あ、亀吉さま、おはようございます。今着きました。壱臣です」
目を開けた壱臣が、にこにこ笑って言った。半助が耳元で何か言ってから目を開けたから、ちょっと顔が赤い。さっきデートの話をしている時も真っ赤だった。
「いいおみ?」
「はい。おみ、でもええですよ。呼びやすいように呼んだって下さい」
「おみ?」
亀吉は首を傾げる。
「にかうさまちゃう?」
にかうさま?
「あれ? 弐角おったんですか?」
壱臣がふわっと笑った。
ああ。にかうさまは弐角さま、か。
「あ、ちゃう」
「はい、ちゃいます。よう似とるけど、ちゃうんですよ。うちは弐角のお兄ちゃんの臣です」
「うん。ちゃった」
そうだった。弐角と壱臣は双子だからよく似てるって、皆言ってるんだった。俺は全然違うと思ってたんだけど、絵に描いた時、目や鼻や口の形がそっくりだったから驚いた。
今は髪の毛は、壱臣の方がちょっと長いかな。昨日、壱鷹と弐角の髪の毛は切って短くなっていた。楽でええんですよ、って笑ってた。
そっか。亀吉は壱臣のことを弐角だと思っていたから、半助だけあんまり知らない人だったんだ。
周りで洗い物をしたり片付けをしていた料理人たちが、何人か振り返った。厨房は色んな音がするから、聞こえた人と聞こえてない人がいるみたい。厨房、だいぶ人が減ったね。昨日、お茶を飲みに来た時より少ない。でも、今いる人は皆、しっかりと仕事をしてるように見える。昨日は、村次を睨んでいるだけで動いていない人が何人かいた。力丸に睨み返されて、震えていたけれど。
「半助です。おはようございます」
「おはようごじゃます」
挨拶しても、やっぱりじぃって半助を見てる。あ、腕?
くくくって村次が笑った。
「亀吉さま。警戒し過ぎっす」
ああ。もしかして、強い人がもう分かる? 何となく? すごいな、亀吉。
「村次くん。おはよ」
「壱臣さん。来てくれて嬉しいです」
村次が優しい顔で言った。周りの料理人たちが、また振り返って見ていた。
「うん。来たよー」
「嬉しいですけど、大丈夫そうですか?」
「大丈夫。こうやって目ぇつむってな、ここまで来たから」
「はは。大変だ」
「大変やないよ。それだけで大丈夫なんやから、簡単なもんや」
「そうですか」
「そうやで。な?」
壱臣が半助を見上げて笑う。そうそう。半助がいたら大丈夫だよね。目をつぶっていたら、羽織袴の人がいない所に連れて行ってくれるから。
半助は、眩しそうに目を細めて頷いた。
「あー、はいはい」
力丸が、何故かため息をつきながら口を挟む。
「半助さんもこちらへ来ていいって、朱実殿下からの許可が出て良かったっす、本当に」
「いや。ええか分からんかったから、休暇届けを出してきた」
半助がいつもの顔に戻って答えた。
「え?」
「朱実殿下が離宮に来られて、行ける者は皆行ってええって言わはったんやから、半助もええに決まってるやん」
「まあ、念の為」
「そっかあ」
力丸が嬉しそうに笑う。
「半助さんが休暇届け出してるんなら、俺は出さなくて良さそうだな。俺はこのまま、成人の護衛。へへ、やったね」
朱実殿下の護衛が一人減ってるけど、いいのかな? まあ朱実殿下だから、きっと大丈夫だよね。
俺も、力丸がいてくれるの嬉しい。
厨房に着いたら、亀吉がいた。
俺をみつけて、喜んで飛びついて来ようとして止まる。亀吉の後ろで村次が笑った。今日も亀吉に付いているらしい香月も後ろにいて、ぺこぺこと頭を下げていた。
「亀吉、おはよう」
「おはようごじゃます」
亀吉は、じいっと半助を見ながら答えた。昨日までいなかった人だから、気になるよね。壱臣のことはちょっと見ただけで、後は半助を観察している。誕生日会に遊びに来た時に会ってるけど、ちょっとだけだったから忘れちゃったかな? 忘れるよね。亀吉は小さいから。でも、ちゃんと挨拶できたの偉い。
「あ、亀吉さま、おはようございます。今着きました。壱臣です」
目を開けた壱臣が、にこにこ笑って言った。半助が耳元で何か言ってから目を開けたから、ちょっと顔が赤い。さっきデートの話をしている時も真っ赤だった。
「いいおみ?」
「はい。おみ、でもええですよ。呼びやすいように呼んだって下さい」
「おみ?」
亀吉は首を傾げる。
「にかうさまちゃう?」
にかうさま?
「あれ? 弐角おったんですか?」
壱臣がふわっと笑った。
ああ。にかうさまは弐角さま、か。
「あ、ちゃう」
「はい、ちゃいます。よう似とるけど、ちゃうんですよ。うちは弐角のお兄ちゃんの臣です」
「うん。ちゃった」
そうだった。弐角と壱臣は双子だからよく似てるって、皆言ってるんだった。俺は全然違うと思ってたんだけど、絵に描いた時、目や鼻や口の形がそっくりだったから驚いた。
今は髪の毛は、壱臣の方がちょっと長いかな。昨日、壱鷹と弐角の髪の毛は切って短くなっていた。楽でええんですよ、って笑ってた。
そっか。亀吉は壱臣のことを弐角だと思っていたから、半助だけあんまり知らない人だったんだ。
周りで洗い物をしたり片付けをしていた料理人たちが、何人か振り返った。厨房は色んな音がするから、聞こえた人と聞こえてない人がいるみたい。厨房、だいぶ人が減ったね。昨日、お茶を飲みに来た時より少ない。でも、今いる人は皆、しっかりと仕事をしてるように見える。昨日は、村次を睨んでいるだけで動いていない人が何人かいた。力丸に睨み返されて、震えていたけれど。
「半助です。おはようございます」
「おはようごじゃます」
挨拶しても、やっぱりじぃって半助を見てる。あ、腕?
くくくって村次が笑った。
「亀吉さま。警戒し過ぎっす」
ああ。もしかして、強い人がもう分かる? 何となく? すごいな、亀吉。
「村次くん。おはよ」
「壱臣さん。来てくれて嬉しいです」
村次が優しい顔で言った。周りの料理人たちが、また振り返って見ていた。
「うん。来たよー」
「嬉しいですけど、大丈夫そうですか?」
「大丈夫。こうやって目ぇつむってな、ここまで来たから」
「はは。大変だ」
「大変やないよ。それだけで大丈夫なんやから、簡単なもんや」
「そうですか」
「そうやで。な?」
壱臣が半助を見上げて笑う。そうそう。半助がいたら大丈夫だよね。目をつぶっていたら、羽織袴の人がいない所に連れて行ってくれるから。
半助は、眩しそうに目を細めて頷いた。
「あー、はいはい」
力丸が、何故かため息をつきながら口を挟む。
「半助さんもこちらへ来ていいって、朱実殿下からの許可が出て良かったっす、本当に」
「いや。ええか分からんかったから、休暇届けを出してきた」
半助がいつもの顔に戻って答えた。
「え?」
「朱実殿下が離宮に来られて、行ける者は皆行ってええって言わはったんやから、半助もええに決まってるやん」
「まあ、念の為」
「そっかあ」
力丸が嬉しそうに笑う。
「半助さんが休暇届け出してるんなら、俺は出さなくて良さそうだな。俺はこのまま、成人の護衛。へへ、やったね」
朱実殿下の護衛が一人減ってるけど、いいのかな? まあ朱実殿下だから、きっと大丈夫だよね。
俺も、力丸がいてくれるの嬉しい。
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