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第九章 礼儀を知る人知らない人
69 きっと買いたくなる印付き 成人
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この前うちに来てから、一ヶ月もしないうちに鶴丸が来た。荷物を運べる大きな車に、色々と品物を積んで運んできた。那月と二人だった。
松吉と亀吉、香月に会えなくて残念。もう一人来ていた使用人は何て名前だったっけ? あの人も来ていない。うちでうろうろと手伝いをしたり、鶴丸たちの荷物を出したり片付けたりしていたけれど、あまり印象に残っていないんだよな。気配の薄い人。うん、さすが鶴丸のお付きの人だ。強い。
「早いな。荷物は?」
「緋色殿下。お久しぶりです、っていうほどでもありませんけど。荷物はまだ、下ろしとりません。まずは殿下にご挨拶をと」
「そうか。果物は先に下ろしに行くか? 八百屋に渡すだけだからな。後は任せてしまえばいい。玩具は昼飯の後にして、一度うちに帰ってきて飯を食おう。店に並べなくちゃならん。ああ、くそ。楽なような面倒なような」
「面倒をおかけしとりますか? 色々とすみませ……」
「ああ、違う違う。お前は関係ない。店がな、俺のになってしまったから」
「え?」
「気にすんな。こっちの話だ」
「そうですか」
鶴丸も那月も、緋色と俺に軽く頭を下げただけですぐに話を始めた。うん。うちの人だ。
外に迎えに出た緋色は、荷物を積んだ鶴丸の車をまじまじと見ている。側面に大きく模様が描いてあるトラック。模様は、緋色の使う車とか道具についている、緋色の印みたいだ。鶴丸の印かな? そうかも。
緋色はいつも、印は小さく入れろって言ってるから、こんなに大きく描いてあることはほとんどない。この前、弐角の結婚式に行く時に乗ってた車には、珍しく大きく印が描いてあった。あれは、緋色が弐角の結婚式に招待されて行ったんだってことが分かるようにそうしていた。
あ、そうか。
これは、鶴丸の車だとはっきり分かるようにしてあるんだ。そうするのが大事なことなんだな、きっと。
「家紋をつけるとは考えたな」
「何か、うちの領地の品やと分かる印を付ければ、それが証の一つになると考えまして。うちの特産なんやから、うちの家紋でええか、と」
「訳の分からん模様を考えて付けるくらいなら、それがいい」
「殿下なら、そう仰ってくださると思っとりました」
果物が入っている箱や、木の玩具が入っている箱にも全部、印がついていた。判子を作って押したんだって。木の加工が得意な西賀国だから、偽物が出回っても見分けられるような細工も判子に施したらしい。見ても分かんないけど。
「細工は内緒です」
鶴丸はそう言って、人差し指を口に当てて片目をつぶった。
西賀国で作った品だとはっきり分かるの、いいね。
松吉と亀吉、香月に会えなくて残念。もう一人来ていた使用人は何て名前だったっけ? あの人も来ていない。うちでうろうろと手伝いをしたり、鶴丸たちの荷物を出したり片付けたりしていたけれど、あまり印象に残っていないんだよな。気配の薄い人。うん、さすが鶴丸のお付きの人だ。強い。
「早いな。荷物は?」
「緋色殿下。お久しぶりです、っていうほどでもありませんけど。荷物はまだ、下ろしとりません。まずは殿下にご挨拶をと」
「そうか。果物は先に下ろしに行くか? 八百屋に渡すだけだからな。後は任せてしまえばいい。玩具は昼飯の後にして、一度うちに帰ってきて飯を食おう。店に並べなくちゃならん。ああ、くそ。楽なような面倒なような」
「面倒をおかけしとりますか? 色々とすみませ……」
「ああ、違う違う。お前は関係ない。店がな、俺のになってしまったから」
「え?」
「気にすんな。こっちの話だ」
「そうですか」
鶴丸も那月も、緋色と俺に軽く頭を下げただけですぐに話を始めた。うん。うちの人だ。
外に迎えに出た緋色は、荷物を積んだ鶴丸の車をまじまじと見ている。側面に大きく模様が描いてあるトラック。模様は、緋色の使う車とか道具についている、緋色の印みたいだ。鶴丸の印かな? そうかも。
緋色はいつも、印は小さく入れろって言ってるから、こんなに大きく描いてあることはほとんどない。この前、弐角の結婚式に行く時に乗ってた車には、珍しく大きく印が描いてあった。あれは、緋色が弐角の結婚式に招待されて行ったんだってことが分かるようにそうしていた。
あ、そうか。
これは、鶴丸の車だとはっきり分かるようにしてあるんだ。そうするのが大事なことなんだな、きっと。
「家紋をつけるとは考えたな」
「何か、うちの領地の品やと分かる印を付ければ、それが証の一つになると考えまして。うちの特産なんやから、うちの家紋でええか、と」
「訳の分からん模様を考えて付けるくらいなら、それがいい」
「殿下なら、そう仰ってくださると思っとりました」
果物が入っている箱や、木の玩具が入っている箱にも全部、印がついていた。判子を作って押したんだって。木の加工が得意な西賀国だから、偽物が出回っても見分けられるような細工も判子に施したらしい。見ても分かんないけど。
「細工は内緒です」
鶴丸はそう言って、人差し指を口に当てて片目をつぶった。
西賀国で作った品だとはっきり分かるの、いいね。
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