【完結】人形と皇子

かずえ

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第九章 礼儀を知る人知らない人

32 ただいま勉強中  成人

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「ね、あんたいってどういう意味?」

 ご挨拶が終わって、しっかりご飯を食べて、灯可とうか見可みか亀吉かめきちと俺の四人になった時、早速灯可とうかに聞いてみた。あ、四人って言っても、香月かづきや一条、七条の使用人は周りにいるんだけど。一条と七条の使用人は、少し離れて控えてくれている。香月かづきだけちょっと近くにいる。亀吉かめきちは小さいから心配だよね。分かる。
 亀吉かめきちは、ご飯の後で松吉まつきちが、母上のとこおいで、ねんねしようって言ったら、いや! と首を横に振って俺にしがみついてしまった。

亀吉かめきち。後で楽しいことたくさんあるから、ねんねしといたら?」
「ねんねない」

 俺が言っても駄目だった。楽しい時に寝るの勿体ないよね。気持ちはとてもよく分かる。俺も、俺だけ眠くなる時があってちょっと悔しい。

「そっか。じゃ、ねんねしなくていいよ」
「うん」

 俺がすぐに、ねんねしなくていいよって言ったから、亀吉かめきちはますます俺にしがみついた。

「すんません、成人なるひと殿下。その辺で行き倒れて寝てしもたら、そのまんま置いといてもろたらええんで」
「あはは。行き倒れ?」
「ようあるんですよ。眠ない言うてて、急に静かになったな思たら、こてんとその辺で遊び途中で寝てしもとることが」
「あはは。そうなの? 可愛い」
「なんも可愛いことあらへんですよ。せっかく布団敷いて気持ち良う寝れる準備しとんのに、嫌や嫌やばっかりで。ご飯口に入れたまま寝たりもようあるなあ」
「あるある。喉詰まりそうで怖いわー」
見可みかがそうなってるのを、何度も見たことがあります」

 松吉まつきち鶴丸つるまるが言ったことに、灯可とうかも大きく頷きながら続いた。小さいうちは皆やるんやなあと、三人で笑っている。
 ご飯食べながら……。俺も眠くなったことある。最近でもたまにある。小さい子がやることなのか。気を付けよう。疲れたらなるべくお昼寝しよ……。
 亀吉かめきちは小さいので、ねんねしないと言ったらしない。だから、四人で飾り付けする事にした。

「安泰? ああ、さっきの」
「うん」
「あ。俺が聞いたやつ」

 見可みかも知りたいよね。これはもう、聞いておこう。

「多分、文脈的に大丈夫って事だと思いますよ」
「大丈夫」
「はい。一条も七条も、この先も大丈夫、みたいな?」
「何だよ、兄上もあんまり分かってないんじゃん」
「分かってない訳じゃない。あんまり聞き慣れない言葉だったから、上手く説明できないだけだ。でも、だいたいの意味を察することはできるだろ。私がしっかりしてて一条が安泰なんだから、この先も一条は安心とかそういうことだ」

 なるほど、文脈……。文脈? 灯可とうかって、朱実あけみ殿下みたいに難しい言葉使うこと多いよね。俺もまだまだ勉強しなくちゃなあ。

「あの」

 香月かづきがそっと口を挟む。

「安定していて不安がない事、です」
「おお。ありがと」

 つまり、大丈夫ってことか。

灯可とうか、すごい。合ってる」
「ええっと。いえ!今度からは、しっかり調べてからお答えするようにします。すみません」
「え? 大丈夫で合ってるよ。文脈? で合ってたんだよね? 灯可とうかはすごい。本当にすごい。俺も勉強頑張って、灯可とうかみたいに分かるようになるね」
成人なるひとさま……!」

 俺たち、勉強頑張ろね、と灯可とうかと頷き合ってたら、見可みかが言った。

「そうか! 七条も、俺が隊長やるから大丈夫ってことか」

 うん。七条も安泰って言ってもらってたね。見可みかも勉強頑張ろうね。
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