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第九章 礼儀を知る人知らない人
28 そういう生き物 成人
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「参った」
「参りました」
着替えて訓練所に移動して、準備運動も念入りにして、いざ勝負ってなった後はあっという間だった。鶴丸と松吉は、武器の訓練用の棒を持って二人がかりで向かっていったけれど、初手でいっぺんに吹っ飛ばされて、体勢を立て直している間に一人ずつ間合いを詰められた。
二人はじいじに、常陸丸相手に一人ずつ挑んで、それぞれ一撃で吹っ飛ばされたのだと真剣に丁寧に説明して、二人で武器持ち、じいじは素手でやることになったのだけど、あまりもたなかったな。
丁寧な説明は、じいじに笑われていた。
「そりゃ強い」
「ええもう。最強とはこういうもんかと」
そんな感じの話をしていた。鶴丸と松吉は、じいじが常陸丸のことを強いと言ったと思ったみたい。違うんじゃないかな。多分、じいじは二人のことを強いと言ったんだ。鶴丸と松吉は常陸丸が吹っ飛ばしちゃうくらいに強いんだって、じいじには分かったんだ。
じいじは強い。そりゃあもう強い。でも、歳をとってきたから長い時間はもたない、らしい。じいじの言う長い時間がどれくらいなのかは分からないけれど、一番強かった時より、全然もたないんだそうだ。だから、じいじは、強い相手とやる時ほど短い時間で決着をつける。
だからね。短い時間で倒されるのは強い証拠だから、そんなに落ち込むことないよ、二人とも。
「二人いっぺんに来るなら、素手の方が動きやすかったのではないか」
「なるほど……」
「互いの武器を避けつつ攻撃を加えようとすると同時には攻撃できぬ故、ひとつひとつ避けることができるようになってしまう」
言うほど簡単じゃないけどね。ひとつひとつって言うほど別々な動きじゃなかったし。鶴丸と松吉の呼吸はぴったりで、連携は取れていた。速いし。でもじいじは、ほんの少し先に攻撃した松吉の長い棒を掴みながら鶴丸の短い二本の棒を避けて、更に掴んだ松吉を力で振り回して鶴丸への攻撃に変えてしまった。速くて力がないとできない技だ。常陸丸も似たようなことをやってたな。やっぱり、じいじと常陸丸は似てる。
俺なら、どうするかな。どちらも避けて、武器が下についてもう一度持ち上がるまでの間に……。
「こら」
真剣に考えていたら緋色に目をふさがれた。
「また余計なことを考えてただろ」
そんなの当たり前。皆考えるよ。あんな凄いの見て、ただ見てなんていられない。
俺の足にしがみついてた亀吉が呟く。
「ちちうえ、まけた?」
「そうだな。父も母も負けたな」
緋色の声に、亀吉が頷く気配。
負けたけど、二人はとても強かったよ。
「つおい。かっこいい」
「そうか」
「かめもやりたい」
亀吉も?
俺も。
「参りました」
着替えて訓練所に移動して、準備運動も念入りにして、いざ勝負ってなった後はあっという間だった。鶴丸と松吉は、武器の訓練用の棒を持って二人がかりで向かっていったけれど、初手でいっぺんに吹っ飛ばされて、体勢を立て直している間に一人ずつ間合いを詰められた。
二人はじいじに、常陸丸相手に一人ずつ挑んで、それぞれ一撃で吹っ飛ばされたのだと真剣に丁寧に説明して、二人で武器持ち、じいじは素手でやることになったのだけど、あまりもたなかったな。
丁寧な説明は、じいじに笑われていた。
「そりゃ強い」
「ええもう。最強とはこういうもんかと」
そんな感じの話をしていた。鶴丸と松吉は、じいじが常陸丸のことを強いと言ったと思ったみたい。違うんじゃないかな。多分、じいじは二人のことを強いと言ったんだ。鶴丸と松吉は常陸丸が吹っ飛ばしちゃうくらいに強いんだって、じいじには分かったんだ。
じいじは強い。そりゃあもう強い。でも、歳をとってきたから長い時間はもたない、らしい。じいじの言う長い時間がどれくらいなのかは分からないけれど、一番強かった時より、全然もたないんだそうだ。だから、じいじは、強い相手とやる時ほど短い時間で決着をつける。
だからね。短い時間で倒されるのは強い証拠だから、そんなに落ち込むことないよ、二人とも。
「二人いっぺんに来るなら、素手の方が動きやすかったのではないか」
「なるほど……」
「互いの武器を避けつつ攻撃を加えようとすると同時には攻撃できぬ故、ひとつひとつ避けることができるようになってしまう」
言うほど簡単じゃないけどね。ひとつひとつって言うほど別々な動きじゃなかったし。鶴丸と松吉の呼吸はぴったりで、連携は取れていた。速いし。でもじいじは、ほんの少し先に攻撃した松吉の長い棒を掴みながら鶴丸の短い二本の棒を避けて、更に掴んだ松吉を力で振り回して鶴丸への攻撃に変えてしまった。速くて力がないとできない技だ。常陸丸も似たようなことをやってたな。やっぱり、じいじと常陸丸は似てる。
俺なら、どうするかな。どちらも避けて、武器が下についてもう一度持ち上がるまでの間に……。
「こら」
真剣に考えていたら緋色に目をふさがれた。
「また余計なことを考えてただろ」
そんなの当たり前。皆考えるよ。あんな凄いの見て、ただ見てなんていられない。
俺の足にしがみついてた亀吉が呟く。
「ちちうえ、まけた?」
「そうだな。父も母も負けたな」
緋色の声に、亀吉が頷く気配。
負けたけど、二人はとても強かったよ。
「つおい。かっこいい」
「そうか」
「かめもやりたい」
亀吉も?
俺も。
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