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第八章 郷に入っては郷に従え
127 謁見 緋色
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ちっ。
流石に舌打ちは口の中に飲み込む。御前だからな。こう見えて、礼儀を忘れたことはない。というか、家族とあまり親しくなかったからこそ、きちんと礼儀を弁えることができていた。親だ、兄だと思えば下げることができない頭も、皇帝陛下だ、皇太子殿下だと思えば下げられるだろう?そういうことだ。
ところが、下手に家族らしいことをし始めた最近は、どうもこうして、泉門院家や離宮でしかしていないような仕草が出そうになるから困る。
眉をしかめた俺に向けるその眼差しやめてくださいませんかね、陛下。まるで、仕方のない子どもを見る親のようで、ものすごく苛々するんだが?朱実は……。まあ、いつもあんな感じか。
それにしても、成人に返事を求めるとは卑怯な。成人が、しっかりと考えて返事をした後で俺が断れないことを知っていて、父上はあんな聞き方をしたのだ。
あーあ。
うちの飯食いたかったなあ。
広末と村次を連れていたし、壱臣の味付けにも慣れているから、今回の旅行先の飯が口に合わなかったなんてことは無い。なんなら美味かった。成人もよく食べていたし、それだけでもう及第点だ。
だが、そういう事じゃない。
うちで、いつもの場所で、いつもの面子で食う飯が食いたい。いつもの面子といったって、いつでも全員揃っている訳じゃないんだが、まあ、何となくでいい。仕事でいたりいなかったりするのが何人かいて、人数はいつもまちまち。そういうのでいい。そういうのがいい。
誰も何も気を使わず、同じ飯をそれぞれで持ってきて、美味い美味いって適当に喋りながら食うんだ。
たくさんの人間に見られながら、背筋伸ばして綺麗に食う口に合わない料理が待っていると思うと、そりゃ眉のひとつもしかめたくなるだろう。
「皆、此度は御苦労であった。恙無く済んだとのこと、皆の尽力によるものと思われる。それぞれの上司への報告等はあろうが、しっかりと休息を取れるよう申し伝える故、体を労るように」
「はっ」
陛下の言葉に、後ろで一斉に頭を下げる気配がする。成人、今はお前は頭を下げなくてもいいと思うぞ?ま、可愛いからいいけど。
「それでは緋色、成人。晩餐を楽しみにしておるぞ」
「はいっ!」
おーおー。帰りの車でぐっすり昼寝したから元気一杯だな。明日は休みだし、そうだ、今夜は……。
ん、気分が上がってきた。
いっそ帰りに温泉に寄れば良かったな!
流石に舌打ちは口の中に飲み込む。御前だからな。こう見えて、礼儀を忘れたことはない。というか、家族とあまり親しくなかったからこそ、きちんと礼儀を弁えることができていた。親だ、兄だと思えば下げることができない頭も、皇帝陛下だ、皇太子殿下だと思えば下げられるだろう?そういうことだ。
ところが、下手に家族らしいことをし始めた最近は、どうもこうして、泉門院家や離宮でしかしていないような仕草が出そうになるから困る。
眉をしかめた俺に向けるその眼差しやめてくださいませんかね、陛下。まるで、仕方のない子どもを見る親のようで、ものすごく苛々するんだが?朱実は……。まあ、いつもあんな感じか。
それにしても、成人に返事を求めるとは卑怯な。成人が、しっかりと考えて返事をした後で俺が断れないことを知っていて、父上はあんな聞き方をしたのだ。
あーあ。
うちの飯食いたかったなあ。
広末と村次を連れていたし、壱臣の味付けにも慣れているから、今回の旅行先の飯が口に合わなかったなんてことは無い。なんなら美味かった。成人もよく食べていたし、それだけでもう及第点だ。
だが、そういう事じゃない。
うちで、いつもの場所で、いつもの面子で食う飯が食いたい。いつもの面子といったって、いつでも全員揃っている訳じゃないんだが、まあ、何となくでいい。仕事でいたりいなかったりするのが何人かいて、人数はいつもまちまち。そういうのでいい。そういうのがいい。
誰も何も気を使わず、同じ飯をそれぞれで持ってきて、美味い美味いって適当に喋りながら食うんだ。
たくさんの人間に見られながら、背筋伸ばして綺麗に食う口に合わない料理が待っていると思うと、そりゃ眉のひとつもしかめたくなるだろう。
「皆、此度は御苦労であった。恙無く済んだとのこと、皆の尽力によるものと思われる。それぞれの上司への報告等はあろうが、しっかりと休息を取れるよう申し伝える故、体を労るように」
「はっ」
陛下の言葉に、後ろで一斉に頭を下げる気配がする。成人、今はお前は頭を下げなくてもいいと思うぞ?ま、可愛いからいいけど。
「それでは緋色、成人。晩餐を楽しみにしておるぞ」
「はいっ!」
おーおー。帰りの車でぐっすり昼寝したから元気一杯だな。明日は休みだし、そうだ、今夜は……。
ん、気分が上がってきた。
いっそ帰りに温泉に寄れば良かったな!
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