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第八章 郷に入っては郷に従え
107 俺はもう満足 成人
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常陸丸と力丸が組手をする音が聞こえる。すごい速さで打ち合っているのが分かる。見たい。見たいのに、俺はまた緋色に目を塞がれてしまった。もー。でも、塞がれたら自分がすごーく疲れてることが分かるんだよね。俺も気付いてない俺のことに、いっつも緋色は気付いてくれる。緋色、ありがと。俺、長生きするからね。
仕方ない。見れないから耳を澄ます。力丸の呼吸が、少しづつ乱れていく。この、慣れたいつもの組手なら速さで常陸丸と互角にやり合えるから、力丸の呼吸が乱れる訳ないんだけど。打ち合う音がいつもより大きい。あ。
もしかして常陸丸、いつもより力を込めて打っている?ぱん、ぱん、と軽くやり合うはずの組手なのに、ばしっ、ばしって聞こえるてくるし。
「こら」
ああ、緋色。背中ぽんぽんしないでー。力が抜けるう。
「力を抜け。余計なことを考えるな」
「むー」
諦めて緋色にもたれかかったら、やっぱり背中をぽんぽんされた。それ好き。でも、寝たくない時にされると困る。
「すごい」
「この組手、ええな」
鶴丸と松吉がぼそぼそ喋っている。いいでしょ、これ。力丸の家の準備運動だよ。鍛錬の前にやる運動。泉門院家の道場で皆やってるんだって。ちゃんと覚えて、最後まで集中を切らさずやらないと、倒されちゃうんだ。じいじは、これだけで疲れてしまうからいらんと言って、あんまりやらないんだけど。
「飯の前に風呂を頼むことにするか?」
「え?」
緋色に話しかけられた鶴丸が驚いている。
あ、俺、言うの忘れてた。
「鶴丸、松吉、夜ご飯一緒に食べよ」
「へ?」
「成人、まだ言ってなかったのか」
「今言った」
夜ご飯に間に合ったから大丈夫。
「すまんな。夕食を共にしようと誘いに行く、と部屋を出たまま帰ってこないから様子を確かめさせればこのザマだ。全くお前らは」
「まだ夜ご飯の時間じゃないから大丈夫」
「何のために早めに出たんだか」
鶴丸と松吉が、剣を持って部屋を出ようとしてたから嬉しくなっちゃったんだ。夜ご飯一緒に食べよって言いにきたこと、すっかり忘れてた。二人でやる剣舞は凄かった。軽い剣で俺もできた。俺、俺さ、緋色。すっごく、すっごく。
「楽しかった」
「そうか」
ならいい、って言った緋色の声は、俺にだけ聞こえるくらいの小さい声で。
「でも俺、全然お腹空いてない」
「は?」
昼のご馳走が、多過ぎたと思うの。夜ご飯入りそうに無いんだよなあ。
「あー、もう。全くお前は!」
仕方ない。見れないから耳を澄ます。力丸の呼吸が、少しづつ乱れていく。この、慣れたいつもの組手なら速さで常陸丸と互角にやり合えるから、力丸の呼吸が乱れる訳ないんだけど。打ち合う音がいつもより大きい。あ。
もしかして常陸丸、いつもより力を込めて打っている?ぱん、ぱん、と軽くやり合うはずの組手なのに、ばしっ、ばしって聞こえるてくるし。
「こら」
ああ、緋色。背中ぽんぽんしないでー。力が抜けるう。
「力を抜け。余計なことを考えるな」
「むー」
諦めて緋色にもたれかかったら、やっぱり背中をぽんぽんされた。それ好き。でも、寝たくない時にされると困る。
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鶴丸と松吉がぼそぼそ喋っている。いいでしょ、これ。力丸の家の準備運動だよ。鍛錬の前にやる運動。泉門院家の道場で皆やってるんだって。ちゃんと覚えて、最後まで集中を切らさずやらないと、倒されちゃうんだ。じいじは、これだけで疲れてしまうからいらんと言って、あんまりやらないんだけど。
「飯の前に風呂を頼むことにするか?」
「え?」
緋色に話しかけられた鶴丸が驚いている。
あ、俺、言うの忘れてた。
「鶴丸、松吉、夜ご飯一緒に食べよ」
「へ?」
「成人、まだ言ってなかったのか」
「今言った」
夜ご飯に間に合ったから大丈夫。
「すまんな。夕食を共にしようと誘いに行く、と部屋を出たまま帰ってこないから様子を確かめさせればこのザマだ。全くお前らは」
「まだ夜ご飯の時間じゃないから大丈夫」
「何のために早めに出たんだか」
鶴丸と松吉が、剣を持って部屋を出ようとしてたから嬉しくなっちゃったんだ。夜ご飯一緒に食べよって言いにきたこと、すっかり忘れてた。二人でやる剣舞は凄かった。軽い剣で俺もできた。俺、俺さ、緋色。すっごく、すっごく。
「楽しかった」
「そうか」
ならいい、って言った緋色の声は、俺にだけ聞こえるくらいの小さい声で。
「でも俺、全然お腹空いてない」
「は?」
昼のご馳走が、多過ぎたと思うの。夜ご飯入りそうに無いんだよなあ。
「あー、もう。全くお前は!」
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