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第八章 郷に入っては郷に従え
82 遊びに来てね 成人
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「新郎新婦がお戻りになられます」
その声に、わ、と喜ぶ声が上がった。演奏はずっと続いている。それに合わせて飛び入りで舞を披露してくれる人もいて楽しかったのだけれど、でもやっぱり、主役がいなくちゃ詰まらないって事らしい。
「成人」
緋色が呼んでいる。
「はあい」
俺は大急ぎで緋色の隣へ戻った。
俺は、鶴丸の所へ行ってお話してた。楽しかったよ。鶴丸の隣の席の、すらりと背の高い女の人は鶴丸の伴侶だった。格好良い女の人だった。二人はもう、子どももいるらしい。一歳半なら、末良より少し小さいくらいだ。子どもは、国でお留守番してるんだって。結婚式や披露宴に出席するのは、あんまり小さいと大変だもんね。
「うちも、こんな姿や無かったら舞を披露致しましたのに」
と、伴侶の松吉はとても悔しがっていた。この人も強そう。見たかったなあ。鶴丸と二人で剣を打ち合う舞が得意らしい。この二人であの舞を舞うなんて、どんなに綺麗だろうって楽しみだ。女の人の着物は、足が開けないから見られなくて、とても残念。
でも、その着物、とても綺麗だし似合ってるよって言ったら、松吉は嬉しそうに笑ってくれた。
その後は二人に、剣を、くるんくるんと回す手の形を見せてもらったり、どんな食べ物が好きか聞いたりしてた。
「成人殿下はご存知ないんちゃうかなー。西の食べもんやし、下々のもんやから。うちもな、また、そんなん食べてるて怒られるような食べもんなんや。うちの好きな食べもんは、たこ焼き言うて」
「知ってる。好き!」
「へ?ご存知なんですか?」
「うん。好き」
「へええ。え?皇国にもあったんです?てっきり西のもんやと思てたんやけど、違たんかな」
「んーん。西の。屋台で食べて美味しかったから、おうちで作ってもらった」
「へええ。へ?美味しかったから作ってって言うて、作れるもんなんですか?」
「うん。いっつも作ってくれる」
「へ、へえ。鉄板とかどうしはったんです?」
「緋色が買ってくれた」
「かなり優秀な料理人と、伴侶に甘い皇子様が揃うと、何でも作れるっちゅう事やろか」
「そういうことやろ」
「ん?」
二人で何をこそこそ言ってるの?
「はは。何でもないです。成人殿下んとこの料理人、すごいなあて」
「うん。広末は凄い」
鶴丸に頷いていると、松吉がにこにこして言った。
「その凄い料理人は、あれも作れるんですか?」
「あれ?」
「ほら。皇国のお城の晩餐でだけ出される言う、幻のデザート」
お城でしか食べられないのよ、って母さまが言ったのは確か。
「アイスクリーム?」
「名前知らんけど、多分それです、殿下。うち、一回食べてみたいわあ」
「はは。皇城に招かれねば食せぬ品じゃ。主らには一生無理だな」
松吉の隣の席の男の人が口を挟んできて、何で?って思った。
「え?食べれるよ。今度うちに遊びに来て」
「へ?」
「内緒だけど、広末、アイスクリーム作れるから、うちに来たら食べれるから来てね」
一応、小さい声で。二人にだけ聞こえたらいいし。
二人は、そっくりに大きく目を見開いてから、くすくす、くすくすと笑った。
「内緒なんやね」
「了解です」
「子どもも一緒に来ていいよ。末良呼んどく」
二人の子どもと、仲良く遊べるかも?
「末良?」
「広末の子ども。もうすぐ二歳」
「それはええ。是非」
こそこその内緒話も面白かった。
あ、弐角と橙々が戻ってきた。内緒話は、緋色にまた後で教えてあげるね。
その声に、わ、と喜ぶ声が上がった。演奏はずっと続いている。それに合わせて飛び入りで舞を披露してくれる人もいて楽しかったのだけれど、でもやっぱり、主役がいなくちゃ詰まらないって事らしい。
「成人」
緋色が呼んでいる。
「はあい」
俺は大急ぎで緋色の隣へ戻った。
俺は、鶴丸の所へ行ってお話してた。楽しかったよ。鶴丸の隣の席の、すらりと背の高い女の人は鶴丸の伴侶だった。格好良い女の人だった。二人はもう、子どももいるらしい。一歳半なら、末良より少し小さいくらいだ。子どもは、国でお留守番してるんだって。結婚式や披露宴に出席するのは、あんまり小さいと大変だもんね。
「うちも、こんな姿や無かったら舞を披露致しましたのに」
と、伴侶の松吉はとても悔しがっていた。この人も強そう。見たかったなあ。鶴丸と二人で剣を打ち合う舞が得意らしい。この二人であの舞を舞うなんて、どんなに綺麗だろうって楽しみだ。女の人の着物は、足が開けないから見られなくて、とても残念。
でも、その着物、とても綺麗だし似合ってるよって言ったら、松吉は嬉しそうに笑ってくれた。
その後は二人に、剣を、くるんくるんと回す手の形を見せてもらったり、どんな食べ物が好きか聞いたりしてた。
「成人殿下はご存知ないんちゃうかなー。西の食べもんやし、下々のもんやから。うちもな、また、そんなん食べてるて怒られるような食べもんなんや。うちの好きな食べもんは、たこ焼き言うて」
「知ってる。好き!」
「へ?ご存知なんですか?」
「うん。好き」
「へええ。え?皇国にもあったんです?てっきり西のもんやと思てたんやけど、違たんかな」
「んーん。西の。屋台で食べて美味しかったから、おうちで作ってもらった」
「へええ。へ?美味しかったから作ってって言うて、作れるもんなんですか?」
「うん。いっつも作ってくれる」
「へ、へえ。鉄板とかどうしはったんです?」
「緋色が買ってくれた」
「かなり優秀な料理人と、伴侶に甘い皇子様が揃うと、何でも作れるっちゅう事やろか」
「そういうことやろ」
「ん?」
二人で何をこそこそ言ってるの?
「はは。何でもないです。成人殿下んとこの料理人、すごいなあて」
「うん。広末は凄い」
鶴丸に頷いていると、松吉がにこにこして言った。
「その凄い料理人は、あれも作れるんですか?」
「あれ?」
「ほら。皇国のお城の晩餐でだけ出される言う、幻のデザート」
お城でしか食べられないのよ、って母さまが言ったのは確か。
「アイスクリーム?」
「名前知らんけど、多分それです、殿下。うち、一回食べてみたいわあ」
「はは。皇城に招かれねば食せぬ品じゃ。主らには一生無理だな」
松吉の隣の席の男の人が口を挟んできて、何で?って思った。
「え?食べれるよ。今度うちに遊びに来て」
「へ?」
「内緒だけど、広末、アイスクリーム作れるから、うちに来たら食べれるから来てね」
一応、小さい声で。二人にだけ聞こえたらいいし。
二人は、そっくりに大きく目を見開いてから、くすくす、くすくすと笑った。
「内緒なんやね」
「了解です」
「子どもも一緒に来ていいよ。末良呼んどく」
二人の子どもと、仲良く遊べるかも?
「末良?」
「広末の子ども。もうすぐ二歳」
「それはええ。是非」
こそこその内緒話も面白かった。
あ、弐角と橙々が戻ってきた。内緒話は、緋色にまた後で教えてあげるね。
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