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第八章 郷に入っては郷に従え
58 あきらめ 弐角
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「殿下。お連れさんが一人も部屋におらん言うて、うちの女中が慌てとります。何処に行ったんか分かりますか?」
「ん?料理人は厨房だろ?衣装係は衣装部屋、護衛たちは城の武力の確認だ」
当たり前のように、言われてしもうた。
城の武力の確認って何?どこで何してんの?
「そ、そうですか。あのー、随分行動が早かったみたいで、女中がもてなしの茶を運んだ時には部屋がもぬけの殻やったとか」
「そうか」
それがどうした、ってことですね?ま、そうですよねー。
「城ん中歩く時は、一応俺の許可を取ってもらえると助かるんですが……」
「ああ」
今、気付いたって顔しましたね?ここ、俺んちなんで、殿下。そこんとこよろしくお願いしますよ。
「いや。普通に、興味のある場所へ出かけただけだ。見学したいと言うから、あまり時間も無いことだしすぐに許可した。悪かったな」
「あ、いえ。ひと言言うてもろたら案内の者を付けましたのに」
「はは。いらんいらん。荘重がこの城のことは全て把握している」
「……いや。は?」
いや、なんて?
全て把握している?いや、何で?
「この城がな、かなりお気に入りなんだ。利胤も言っていたが、こう、どうやって落とそうかと考えると胸が弾むらしい」
「わー。わー。わー」
「なんだ、うるさい」
「落とされてたまるもんですか。何言ってるんすか」
くくっ、と緋色殿下が笑う。あれ。これ、からかわれてるんかな。
「もう。冗談にしてはタチが悪いです。勘弁してください」
「いや?冗談ではない」
もっと悪いわ、という言葉は、すんでで飲み込んだ。ああ、もう。
「こちらに、茶をもう一つ届けますか?」
医師に顔を向けながら尋ねると、いえ、と穏やかな応えが返ってくる。
「成人が寝たので一安心です。私は、お部屋に戻りますよ。荷物番でもしていましょうか」
ああ。緋色殿下んとこにも、こんな穏やかな連れがおったんやな。
「生松先生。医務室を確認しなくてよいか?案内するぞ」
「ひえ?」
一ノ瀬荘重、いつからそこにおった?
丹波の腕が、じい様に押さえられている。ちゃんと反応したんやな。うん。頑張ったな、丹波。特別手当、考えとく。
「あ。それは是非、見てみたいです」
「おう、行ってこい」
やっぱりこの医師も、殿下んとこの人やった……。
もう俺、緋色殿下と成人さまがおるとこさえ分かればええことにするわ……。
「ん?料理人は厨房だろ?衣装係は衣装部屋、護衛たちは城の武力の確認だ」
当たり前のように、言われてしもうた。
城の武力の確認って何?どこで何してんの?
「そ、そうですか。あのー、随分行動が早かったみたいで、女中がもてなしの茶を運んだ時には部屋がもぬけの殻やったとか」
「そうか」
それがどうした、ってことですね?ま、そうですよねー。
「城ん中歩く時は、一応俺の許可を取ってもらえると助かるんですが……」
「ああ」
今、気付いたって顔しましたね?ここ、俺んちなんで、殿下。そこんとこよろしくお願いしますよ。
「いや。普通に、興味のある場所へ出かけただけだ。見学したいと言うから、あまり時間も無いことだしすぐに許可した。悪かったな」
「あ、いえ。ひと言言うてもろたら案内の者を付けましたのに」
「はは。いらんいらん。荘重がこの城のことは全て把握している」
「……いや。は?」
いや、なんて?
全て把握している?いや、何で?
「この城がな、かなりお気に入りなんだ。利胤も言っていたが、こう、どうやって落とそうかと考えると胸が弾むらしい」
「わー。わー。わー」
「なんだ、うるさい」
「落とされてたまるもんですか。何言ってるんすか」
くくっ、と緋色殿下が笑う。あれ。これ、からかわれてるんかな。
「もう。冗談にしてはタチが悪いです。勘弁してください」
「いや?冗談ではない」
もっと悪いわ、という言葉は、すんでで飲み込んだ。ああ、もう。
「こちらに、茶をもう一つ届けますか?」
医師に顔を向けながら尋ねると、いえ、と穏やかな応えが返ってくる。
「成人が寝たので一安心です。私は、お部屋に戻りますよ。荷物番でもしていましょうか」
ああ。緋色殿下んとこにも、こんな穏やかな連れがおったんやな。
「生松先生。医務室を確認しなくてよいか?案内するぞ」
「ひえ?」
一ノ瀬荘重、いつからそこにおった?
丹波の腕が、じい様に押さえられている。ちゃんと反応したんやな。うん。頑張ったな、丹波。特別手当、考えとく。
「あ。それは是非、見てみたいです」
「おう、行ってこい」
やっぱりこの医師も、殿下んとこの人やった……。
もう俺、緋色殿下と成人さまがおるとこさえ分かればええことにするわ……。
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