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第八章 郷に入っては郷に従え
27 知らないの? 成人
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「さて。うちの素晴らしい料理長の話は、こんなもんでいいか?理解できないなら、しなくていい。決してたどり着けない高みだと、指をくわえて見ておけばいいさ。俺は、うちの飯は国で一番美味しい、と吹聴して回るから」
「ふふ」
緋色の言葉に、笑ってしまう。
ずっと、世界で一番美味しかったよ。俺の中では、ずっとずっと広末のご飯が一番だ。あ、いや。広末と壱臣と村次のご飯が一番!ん?一番は一人だけ?
あー、ええっと。
じゃあ、やっぱり俺も。
「うちのご飯は、世界で一番美味しい」
緋色が、にやって笑う。
「大きく出たな」
「俺の世界で、一番美味しい!」
「おや。あまり、大きくなくなってしまったぞ」
ん?そう?
緋色は、すっかりいつもの顔になった。朱実殿下の真似は、おしまい?
厨房の空気が、ふと緩む。違うのに。緋色が緋色になったんだから、怒られてる相手は緊張してなくちゃいけない。緋色は、緋色の大事なものしか守らない。
「そこの。茶色の皿の。お前、俺の政策に意見があるのだったか」
俺、知ってる。緋色はね、本当は名前覚えてるんだよ。でも、安次嶺のこと名前で呼ぶ気がないんだ。
「は。ははっ」
「字も碌々書けない奴に免許を渡すのは反対、だったか。お前、馬鹿か?読み書きできなければ、そもそも試験に受かるまい」
「が、学のない平民に免許を渡すのは反対、と言いました」
「知らないのか?我が国は中学まで義務教育だ。制度上、学のない平民など存在せぬ」
「そ、それなら、何故今まで……」
「お前みたいな選民意識の強い馬鹿が作った、馬鹿馬鹿しい制度なんだろうよ」
「我が国は問題なく、これまでの制度で運営されておりました。だというのに、殿下は何故、伝統を蔑ろにされるのか」
え?安次嶺、すごいな?緋色や父さま、朱実殿下たちがしているお仕事に何か意見を言えるくらい、そのことを知ってるんだ。料理の勉強と、国の運営の勉強?もしてたってこと?すごいよ!
「はははっ。一介の料理人如きに、我が国の運営を語られるとはな。これまでの制度で問題なく?ではお前、聞くが車の免許はあるか?」
「は?」
「車の免許だ」
「と、当然、所持しております」
「では明日より、市井の乗り合いの運転手になれ」
「は?」
「乗り合いバスだよ。町で走っているだろう?時間になれば停留所へ来てくれて、次の停留所に止まってくれる、あれだ。くるくると町の中を走っているだろう?庶民の大切な足だ」
「仰っている意味がよく……」
「免許持ちが少ないから、運転手が不足している。庶民のために、運転して回れ」
「な、な、な……」
安次嶺は、目を吊り上げて顔を真っ赤にした。
「わ、私が?誇り高き安次嶺家の人間が何故、庶民の足とならねばならぬのです?!」
「言ったろう?運転手が不足している、と。明日から仕事がなくては食っていけぬだろうと、仕事を斡旋してやっているんだ」
「私は!料理人です!」
「ふーん。では、どこぞの厨房で雇ってもらうか?言っておくが、高位貴族の屋敷や高級食堂には通達を出すぞ。公里と安次嶺が何故、城の厨房をクビになったかを文書で流す。料理人の間で瞬く間に噂は広がるだろうな」
「え……」
安次嶺は、今度は青くなった。公里も、顔を真っ青にしている。え?想像していなかったの?
「当たり前だろう?で、先程の乗り合いの話だ。免許持ちが皆、庶民の足になどならぬ、と言うから運転手が不足しているんだよ。そんなこと言わない運転手を増やして何が悪い?今まで困っていた事案を解決しようとしている俺の政策に不満があるというなら、それに代わる良い案を出してくれ」
「ふふ」
緋色の言葉に、笑ってしまう。
ずっと、世界で一番美味しかったよ。俺の中では、ずっとずっと広末のご飯が一番だ。あ、いや。広末と壱臣と村次のご飯が一番!ん?一番は一人だけ?
あー、ええっと。
じゃあ、やっぱり俺も。
「うちのご飯は、世界で一番美味しい」
緋色が、にやって笑う。
「大きく出たな」
「俺の世界で、一番美味しい!」
「おや。あまり、大きくなくなってしまったぞ」
ん?そう?
緋色は、すっかりいつもの顔になった。朱実殿下の真似は、おしまい?
厨房の空気が、ふと緩む。違うのに。緋色が緋色になったんだから、怒られてる相手は緊張してなくちゃいけない。緋色は、緋色の大事なものしか守らない。
「そこの。茶色の皿の。お前、俺の政策に意見があるのだったか」
俺、知ってる。緋色はね、本当は名前覚えてるんだよ。でも、安次嶺のこと名前で呼ぶ気がないんだ。
「は。ははっ」
「字も碌々書けない奴に免許を渡すのは反対、だったか。お前、馬鹿か?読み書きできなければ、そもそも試験に受かるまい」
「が、学のない平民に免許を渡すのは反対、と言いました」
「知らないのか?我が国は中学まで義務教育だ。制度上、学のない平民など存在せぬ」
「そ、それなら、何故今まで……」
「お前みたいな選民意識の強い馬鹿が作った、馬鹿馬鹿しい制度なんだろうよ」
「我が国は問題なく、これまでの制度で運営されておりました。だというのに、殿下は何故、伝統を蔑ろにされるのか」
え?安次嶺、すごいな?緋色や父さま、朱実殿下たちがしているお仕事に何か意見を言えるくらい、そのことを知ってるんだ。料理の勉強と、国の運営の勉強?もしてたってこと?すごいよ!
「はははっ。一介の料理人如きに、我が国の運営を語られるとはな。これまでの制度で問題なく?ではお前、聞くが車の免許はあるか?」
「は?」
「車の免許だ」
「と、当然、所持しております」
「では明日より、市井の乗り合いの運転手になれ」
「は?」
「乗り合いバスだよ。町で走っているだろう?時間になれば停留所へ来てくれて、次の停留所に止まってくれる、あれだ。くるくると町の中を走っているだろう?庶民の大切な足だ」
「仰っている意味がよく……」
「免許持ちが少ないから、運転手が不足している。庶民のために、運転して回れ」
「な、な、な……」
安次嶺は、目を吊り上げて顔を真っ赤にした。
「わ、私が?誇り高き安次嶺家の人間が何故、庶民の足とならねばならぬのです?!」
「言ったろう?運転手が不足している、と。明日から仕事がなくては食っていけぬだろうと、仕事を斡旋してやっているんだ」
「私は!料理人です!」
「ふーん。では、どこぞの厨房で雇ってもらうか?言っておくが、高位貴族の屋敷や高級食堂には通達を出すぞ。公里と安次嶺が何故、城の厨房をクビになったかを文書で流す。料理人の間で瞬く間に噂は広がるだろうな」
「え……」
安次嶺は、今度は青くなった。公里も、顔を真っ青にしている。え?想像していなかったの?
「当たり前だろう?で、先程の乗り合いの話だ。免許持ちが皆、庶民の足になどならぬ、と言うから運転手が不足しているんだよ。そんなこと言わない運転手を増やして何が悪い?今まで困っていた事案を解決しようとしている俺の政策に不満があるというなら、それに代わる良い案を出してくれ」
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