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第八章 郷に入っては郷に従え
4 偉そうな見習い料理人 成人
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「ただいまー」
おうちに帰って、厨房を覗く。衣装部への差し入れを、とても喜んでもらったから、ありがとうって言いにきた。もうすぐおやつの時間だから、広末たちは厨房にいる。今日は、村次がお休みだったっけ?
「おう、おかえり」
広末が振り返って、にかって笑ってくれる。その横に立っている二人の人が、慌てて俺の方を向いて包拳礼をした。お城から、広末に料理を習いにきているお城の料理人だ。お城の厨房の制服をぴしっと着て、眉間に皺を寄せている。一人は、村次のお父さんの村正くらいの年齢かなあ。俺は、人の年齢が幾つくらいか見分けるのが下手くそだからよく分からないんだけど。もう一人は広末と壱臣くらい?ん?二人も、同じではなかったな?広末がちょっと上?
ま、いっか。
「ここでは包拳礼はいらないよ。でも、ありがと。もういいよ」
「はい」
二人が言って、包拳礼を下ろした。この二人にこれ言うの、何回目だっけなあ。やらないと気が済まないみたいだから、包拳礼はいらないよって言うの、もう止めようかな。どうせするし。
「あ、成人くん、おかえりい」
奥から出てきた壱臣が、手を拭きながらのんびり言った。
「ただいま」
俺、このやり取りは好きだ。何回やってもいい。おかえり、とか、ただいまって家でしかできない。ただいまって言って、おかえりって言ってもらうの、俺の家に帰ってきたんだなあって嬉しい気持ち。ただいまって言う人におかえりって言うのも、俺の家族が帰ってきたなあって嬉しくなる。
「プリンありがとって、涼乃絵と祈里と皆が言ってた」
「おお、そりゃ良かった」
「五つで足りましたか?」
広末と壱臣が言って、俺はうんうん頷いた。
「ほな良かった」
壱臣が、のんびり笑う。
あ、そうか。
今日のおやつはもう冷やしてあるから、のんびりなのか。ふふ。プリン楽しみ。
「お茶飲むか、成人くん」
「飲む」
壱臣は、いつものんびりなんだった。にこにこしながら、俺に椅子を出してくれる。お茶の準備を始めた壱臣を、俺もにこにこして見た。
「先ほどの話だが」
見習いの料理人が、俺をちらちら見ながら言った。眉間に皺を寄せたまんまだ。俺が来たから、何かやってた作業の手を止めてしまったのかな。ごめんよ、たぶん広末たちより年上の人。
「ああ。そうだ、作り方の指南書だったな。すまないが、俺ゃ作り方を詳しく書き留めたものは持ってねえんだ。目安の分量くらいは書いてあるんだが」
広末が、その人を見上げながら言う。その人は、ため息を一つ吐いた。
「では、今から言うメニューの作り方をすぐに書け。指南書さえあれば一日二日ですむ研修に、何日付き合わされねばならんのだ?」
「目安の分量を書いたものは渡した。作り方は、文字で見て分かるもんじゃねえだろう?」
「はっ。新人でもあるまいし、文字を見ればだいたいは分かる」
「だいたいじゃ駄目だろう?そのための研修じゃねえのか?」
この人、見習いなのに偉そう……。
おうちに帰って、厨房を覗く。衣装部への差し入れを、とても喜んでもらったから、ありがとうって言いにきた。もうすぐおやつの時間だから、広末たちは厨房にいる。今日は、村次がお休みだったっけ?
「おう、おかえり」
広末が振り返って、にかって笑ってくれる。その横に立っている二人の人が、慌てて俺の方を向いて包拳礼をした。お城から、広末に料理を習いにきているお城の料理人だ。お城の厨房の制服をぴしっと着て、眉間に皺を寄せている。一人は、村次のお父さんの村正くらいの年齢かなあ。俺は、人の年齢が幾つくらいか見分けるのが下手くそだからよく分からないんだけど。もう一人は広末と壱臣くらい?ん?二人も、同じではなかったな?広末がちょっと上?
ま、いっか。
「ここでは包拳礼はいらないよ。でも、ありがと。もういいよ」
「はい」
二人が言って、包拳礼を下ろした。この二人にこれ言うの、何回目だっけなあ。やらないと気が済まないみたいだから、包拳礼はいらないよって言うの、もう止めようかな。どうせするし。
「あ、成人くん、おかえりい」
奥から出てきた壱臣が、手を拭きながらのんびり言った。
「ただいま」
俺、このやり取りは好きだ。何回やってもいい。おかえり、とか、ただいまって家でしかできない。ただいまって言って、おかえりって言ってもらうの、俺の家に帰ってきたんだなあって嬉しい気持ち。ただいまって言う人におかえりって言うのも、俺の家族が帰ってきたなあって嬉しくなる。
「プリンありがとって、涼乃絵と祈里と皆が言ってた」
「おお、そりゃ良かった」
「五つで足りましたか?」
広末と壱臣が言って、俺はうんうん頷いた。
「ほな良かった」
壱臣が、のんびり笑う。
あ、そうか。
今日のおやつはもう冷やしてあるから、のんびりなのか。ふふ。プリン楽しみ。
「お茶飲むか、成人くん」
「飲む」
壱臣は、いつものんびりなんだった。にこにこしながら、俺に椅子を出してくれる。お茶の準備を始めた壱臣を、俺もにこにこして見た。
「先ほどの話だが」
見習いの料理人が、俺をちらちら見ながら言った。眉間に皺を寄せたまんまだ。俺が来たから、何かやってた作業の手を止めてしまったのかな。ごめんよ、たぶん広末たちより年上の人。
「ああ。そうだ、作り方の指南書だったな。すまないが、俺ゃ作り方を詳しく書き留めたものは持ってねえんだ。目安の分量くらいは書いてあるんだが」
広末が、その人を見上げながら言う。その人は、ため息を一つ吐いた。
「では、今から言うメニューの作り方をすぐに書け。指南書さえあれば一日二日ですむ研修に、何日付き合わされねばならんのだ?」
「目安の分量を書いたものは渡した。作り方は、文字で見て分かるもんじゃねえだろう?」
「はっ。新人でもあるまいし、文字を見ればだいたいは分かる」
「だいたいじゃ駄目だろう?そのための研修じゃねえのか?」
この人、見習いなのに偉そう……。
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