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第七章 冠婚葬祭
165 おめでとうを貰った日 成人
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「は。ははははははは」
急に静かになったと思ったら、今度は大きな声で笑い出した。朱実殿下は本当によく分からない。初めて会った時から、よく分からなかった。にこにこ笑って、おいでと抱っこの形で手を広げておきながら、そのすぐ後に俺に銃を向けた。
出会った頃の常陸丸みたいに、警戒して銃を向けてくれていたら、俺だって分かりやすかったのに。常陸丸に銃を向けられていた頃は、お布団の上にいられるのが幸せで、そのままお布団の上で死ぬのも幸せだなあと思ってたから、それで良かった。これだけ強い相手なら、攻撃をうっかり避けてしまって無駄に苦しむこともないと思うと嬉しかった。
今はね。今は違う。死ねないから大変。緋色と誓いを立ててから、本当に大変だ。長生きの誓いをさっきまた重ねた。気を付けないといけないから、戦場にいた時より大変なくらいだ。でも、大変だけど頑張れる。俺は今、すっごく幸せだけど死にたくない。幸せな気持ちで生きたい。たくさん生きたい。
緋色はいつも、二人で長生きするんだぞって言う。一人になると寂しいから。寂しくて、生きる気持ちがしぼんじゃうかもしれないから。そんなの駄目だ。二人だから、幸せなんだ。
「お前たちは、もう、本当に、ところ構わず仲の良いことだ」
「は?」
ちょっと何言ってるか分からない。笑いながら言う朱実殿下に、緋色が低い声を出す。
俺たち、何かしたっけ?葡萄を一緒に食べてるだけなんだけど。
「すまなかったよ、緋色」
「何が」
「色々。色々だ」
「心当たりが多すぎて分からん」
「そんなにか?」
「は。分かっている方が少ないんじゃないのか。本当に謝る気あんのか?」
「あるよ。あるから、すまなかったと改めて言っている」
「けっ」
「そういう物言いは、上に立つ者としてどうかと思う」
「うるさい。お前の言うことは金輪際聞かん」
「それは困る。私たちは仲良く国を治めていかなくてはならない」
「ごめんだね。俺は退役軍人として生きたいんだ」
ふふふ、と朱実殿下は笑う。
「きっと退屈だよ。緋色にはそれは、退屈過ぎるに違いない」
「全然?毎日、成人と遊び暮らすんだからな。退屈する訳がない」
毎日、遊ぶの?
でも俺、勉強もしたい。知らないことを知ることができるのは楽しい。知りたいことはたくさんある。
「俺、お勉強もするけど……」
でも、緋色と遊べるのは嬉しい。その時は、どうやって順番をつけたらいいんだろう。どっちも大事だと、順番をつけられなくて困る。
「ははははは。ほら。成人は遊んでばかりもいられないようだ」
朱実殿下があまりに普通に笑うから、別の人みたいに見えた。今、朱実殿下は緋色と似てる。よく似てるよ。
「俺は、俺のやりたい事をやる。退屈なんてしない」
「うん」
朱実殿下は、目を細めて緋色を見た。緋色が俺を見る時にたまにする顔。その顔を向けられると、俺は嬉しくなる。好きが溢れてくるようで……。
好きが……?
「それでいい。それでいいから、側にいてくれ」
緋色は、ふいと横を向いた。
「俺と成人の邪魔をすることは許さない」
「ああ。本当にすまなかった」
朱実殿下はそこで一度口を閉じて、ほんの少しだけ頭を下げた。ほんの少し。
「緋色、結婚おめでとう」
急に静かになったと思ったら、今度は大きな声で笑い出した。朱実殿下は本当によく分からない。初めて会った時から、よく分からなかった。にこにこ笑って、おいでと抱っこの形で手を広げておきながら、そのすぐ後に俺に銃を向けた。
出会った頃の常陸丸みたいに、警戒して銃を向けてくれていたら、俺だって分かりやすかったのに。常陸丸に銃を向けられていた頃は、お布団の上にいられるのが幸せで、そのままお布団の上で死ぬのも幸せだなあと思ってたから、それで良かった。これだけ強い相手なら、攻撃をうっかり避けてしまって無駄に苦しむこともないと思うと嬉しかった。
今はね。今は違う。死ねないから大変。緋色と誓いを立ててから、本当に大変だ。長生きの誓いをさっきまた重ねた。気を付けないといけないから、戦場にいた時より大変なくらいだ。でも、大変だけど頑張れる。俺は今、すっごく幸せだけど死にたくない。幸せな気持ちで生きたい。たくさん生きたい。
緋色はいつも、二人で長生きするんだぞって言う。一人になると寂しいから。寂しくて、生きる気持ちがしぼんじゃうかもしれないから。そんなの駄目だ。二人だから、幸せなんだ。
「お前たちは、もう、本当に、ところ構わず仲の良いことだ」
「は?」
ちょっと何言ってるか分からない。笑いながら言う朱実殿下に、緋色が低い声を出す。
俺たち、何かしたっけ?葡萄を一緒に食べてるだけなんだけど。
「すまなかったよ、緋色」
「何が」
「色々。色々だ」
「心当たりが多すぎて分からん」
「そんなにか?」
「は。分かっている方が少ないんじゃないのか。本当に謝る気あんのか?」
「あるよ。あるから、すまなかったと改めて言っている」
「けっ」
「そういう物言いは、上に立つ者としてどうかと思う」
「うるさい。お前の言うことは金輪際聞かん」
「それは困る。私たちは仲良く国を治めていかなくてはならない」
「ごめんだね。俺は退役軍人として生きたいんだ」
ふふふ、と朱実殿下は笑う。
「きっと退屈だよ。緋色にはそれは、退屈過ぎるに違いない」
「全然?毎日、成人と遊び暮らすんだからな。退屈する訳がない」
毎日、遊ぶの?
でも俺、勉強もしたい。知らないことを知ることができるのは楽しい。知りたいことはたくさんある。
「俺、お勉強もするけど……」
でも、緋色と遊べるのは嬉しい。その時は、どうやって順番をつけたらいいんだろう。どっちも大事だと、順番をつけられなくて困る。
「ははははは。ほら。成人は遊んでばかりもいられないようだ」
朱実殿下があまりに普通に笑うから、別の人みたいに見えた。今、朱実殿下は緋色と似てる。よく似てるよ。
「俺は、俺のやりたい事をやる。退屈なんてしない」
「うん」
朱実殿下は、目を細めて緋色を見た。緋色が俺を見る時にたまにする顔。その顔を向けられると、俺は嬉しくなる。好きが溢れてくるようで……。
好きが……?
「それでいい。それでいいから、側にいてくれ」
緋色は、ふいと横を向いた。
「俺と成人の邪魔をすることは許さない」
「ああ。本当にすまなかった」
朱実殿下はそこで一度口を閉じて、ほんの少しだけ頭を下げた。ほんの少し。
「緋色、結婚おめでとう」
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