【完結】人形と皇子

かずえ

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第七章 冠婚葬祭

163 食べることは生きること  成人

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 色々なものを一口づつ食べて、大満足。母さまも、少しづつ食べ物を口に運んでいる。いい感じ。人は、食べた物でできているって生松いくまつが言っていた。食べた物、飲んだ物が身体を作るのですから、栄養になる物をしっかり食べましょうねって。口から摂った食べ物たちが、俺を動かす力になる。
 点滴を繋げて栄養を摂らせていても、人の身体は、緩やかに終わりに向かうものらしい。自分で食べる物を口に運んで噛むこと、飲み込むことは、生きようとする大きな力なんだなあ。
 だから、食べていない人のことは心配になるし、母さまが食べているのが嬉しい。
 満足してお腹が膨れてきた。何かおかわりしようと思ってたんだけど、何だったかな。あ、団子!はじめに食べようと思っていた団子をまだ食べていない。大変だ。俺のお腹の隙間はもうあんまり無い。
 
「どうした?」

 立ち上がったら、すぐに緋色ひいろが聞いてくる。俺とは絶対に、聞こえないふりごっこはしないんだね。いいけど。

「団子」
「ああ」

 ぷっと笑う。何?

「デザートだな、行ってこい」
「笑ったの、何?」
「いや。本当は最初に食べようと思ってたろ?」

 ええ?何で分かるの?
 見可みかが最初に食べようとして、最初に食べるものではないって灯可とうかに言われてたから止めたのに。

「団子と葡萄だろ?」

 そうだ。そうだった。葡萄もあった。絶対食べたい。

「取ってくる」
「盆に乗せれば、二つ運べるだろ」

 緋色ひいろは、何でも手伝ったりしないから好き。俺が、片手でもできることを探してくれるから好き。
 食べ物が並んでいる大きな机に向かって歩きながら、緋色ひいろの好きなところを頭の中で並べてみる。
 格好良いし、強いし、賢いし、一緒に遊んでくれるし、ちゅーしてくれるし、抱っこしてくれるし、気持ちいいことしてくれるから好き。
 でもね、そういうことをしてくれるから緋色ひいろのことが好きなんだけど、他の人がしてくれたら好きになるのかというと違う。他の人にちゅーされたり、抱っこされたり、気持ちいいことされたりは別にしたくない。
 好きだからするんだ。好きだからすることをしてくれるから好きって、もうこれ、いつまでも好きってことじゃないかな?
 ずっとずっと好きなままじゃない?
 
「ふふふ」

 団子と葡萄は、だいぶ減っていたけれどまだあった。良かった。机の隙間にお盆を置いて器を乗せて団子に手を伸ばす。

「手伝おうか」

 お盆が持ち上げられて、ちょっとむっとしてしまった。

「できる」

 できるから一人で来たんだよ。できなかったら緋色ひいろとか仲良しの使用人にお願いするから大丈夫。だから、そのお盆は机に置いておいて、朱実あけみ殿下。
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