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第七章 冠婚葬祭
160 一興と真理 成人
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「成程。義姉上は、子らが成長して手が離れるのが寂しいのじゃな」
緋見呼さまが、ぽんとその綺麗な手を一つ打って言った。
母さまが、へ?と間抜けな声を上げた。
「仕方なきことよ。子を育てる親は皆、通る道じゃ。手を繋ぐ相手はどんどん変わってゆくからの。はじめは親の手を握って歩くものが、段々と友の手となり伴侶の手となるのじゃ。なるなど、はじめから緋色の手を握って離さんのじゃから、やり手じゃぞ」
手?
俺は今、手を繋いでいないけれども?と、手を見ていると、ふ、と緋色が綺麗に笑った。
「誰にも預けるものか」
「それもまた一興」
よく分からない。
俺は諦めて、肉団子の残り半分を食べることにした。緋色はもう汁物に全部口を付けて、炊き込みご飯を食べている。
「あ。俺の炊き込みご飯」
「残しておく。ほら、蕎麦もうどんも一口置いておいたから」
見ると、どれも椀の中にほんの一口づつ残っていた。もう少し、たくさん食べれると思うんだけどなあ。そうだ。おかわりしよう。後でおかわり。
「子らが伴侶を得たなら、この先はもう、我らも心置きなく伴侶の手だけを握り暮らせるというものじゃ。のう、義姉上」
「遠慮なんてしたこと無いくせに」
「なんぞ言うたか、緋色」
「いいえ、何にも」
あ。また聞こえないふりごっこ。やっぱり俺もやってみたいなあ。
「私は……。私にはよく分からないわ。ただ皆、私の所へ来なくなるだけ」
「?」
「どうした?」
俺が首を傾げていると、緋色が言った。俺とはやっぱり、聞こえないふりごっこはしないんだ。っていうか、俺、今喋ってない。
ま、いっか。
「会いたいなら、自分で会いに行けばいいのに」
俺が言ったら、皆びっくりしてこっちを見た。
あれ?違う?
母さまは寂しいんだよね?皆が母さまの所へ来ないから?
俺は、金魚に会うついでに母さまに会ってた。でも、金魚に会う順番は下がったから、母さまにも会えない。緋色は、金魚に会う順番なんて元から無かった。母さまの部屋には俺のお迎えに来てただけ。だから、母さまとはちっとも会わない。
でも、母さまは会いたいんだよね?
それなら、母さまが来たらいいんじゃないかな。皆、が誰か分からないけど。俺と緋色に会いたいなら離宮に来たらいいし、赤ちゃんの朱音殿下に会いたいなら、赤璃さまの部屋へ行けばいい。俺は会いたくなったらたまに行ってるよ?行っていいですかってお手紙出して、いいですよって言ってもらったら会いに行く。
赤璃さまがお手紙くれることもある。会いに来てって。そうしたら、いいよってお返事出して会いに行く。
どんどん大きくなって、できることが増える赤ちゃん、可愛いよ。朱音殿下も末良が赤ちゃんの時とおんなじように、できることが増えていくのが面白い。人間って皆、同じように成長するんだねえ。身分とか何にも関係ないんだ。
母さまが会いたい皆の中に朱音殿下がいるなら、母さまはたくさん会い行くといい。赤ちゃんは、長く会っていない人や知らない人に会うと泣いちゃうことあるから。
そうして会いたいって言ってもらったら、順番が前になることはよくある。でも、母さまは何にも言わないから後回しなんだ。
「真理じゃなあ」
「成人は分かりやすくて良いな」
緋見呼さまと父さまが言って、緋色はまた、聞こえないふりしてご飯を食べていた。
緋見呼さまが、ぽんとその綺麗な手を一つ打って言った。
母さまが、へ?と間抜けな声を上げた。
「仕方なきことよ。子を育てる親は皆、通る道じゃ。手を繋ぐ相手はどんどん変わってゆくからの。はじめは親の手を握って歩くものが、段々と友の手となり伴侶の手となるのじゃ。なるなど、はじめから緋色の手を握って離さんのじゃから、やり手じゃぞ」
手?
俺は今、手を繋いでいないけれども?と、手を見ていると、ふ、と緋色が綺麗に笑った。
「誰にも預けるものか」
「それもまた一興」
よく分からない。
俺は諦めて、肉団子の残り半分を食べることにした。緋色はもう汁物に全部口を付けて、炊き込みご飯を食べている。
「あ。俺の炊き込みご飯」
「残しておく。ほら、蕎麦もうどんも一口置いておいたから」
見ると、どれも椀の中にほんの一口づつ残っていた。もう少し、たくさん食べれると思うんだけどなあ。そうだ。おかわりしよう。後でおかわり。
「子らが伴侶を得たなら、この先はもう、我らも心置きなく伴侶の手だけを握り暮らせるというものじゃ。のう、義姉上」
「遠慮なんてしたこと無いくせに」
「なんぞ言うたか、緋色」
「いいえ、何にも」
あ。また聞こえないふりごっこ。やっぱり俺もやってみたいなあ。
「私は……。私にはよく分からないわ。ただ皆、私の所へ来なくなるだけ」
「?」
「どうした?」
俺が首を傾げていると、緋色が言った。俺とはやっぱり、聞こえないふりごっこはしないんだ。っていうか、俺、今喋ってない。
ま、いっか。
「会いたいなら、自分で会いに行けばいいのに」
俺が言ったら、皆びっくりしてこっちを見た。
あれ?違う?
母さまは寂しいんだよね?皆が母さまの所へ来ないから?
俺は、金魚に会うついでに母さまに会ってた。でも、金魚に会う順番は下がったから、母さまにも会えない。緋色は、金魚に会う順番なんて元から無かった。母さまの部屋には俺のお迎えに来てただけ。だから、母さまとはちっとも会わない。
でも、母さまは会いたいんだよね?
それなら、母さまが来たらいいんじゃないかな。皆、が誰か分からないけど。俺と緋色に会いたいなら離宮に来たらいいし、赤ちゃんの朱音殿下に会いたいなら、赤璃さまの部屋へ行けばいい。俺は会いたくなったらたまに行ってるよ?行っていいですかってお手紙出して、いいですよって言ってもらったら会いに行く。
赤璃さまがお手紙くれることもある。会いに来てって。そうしたら、いいよってお返事出して会いに行く。
どんどん大きくなって、できることが増える赤ちゃん、可愛いよ。朱音殿下も末良が赤ちゃんの時とおんなじように、できることが増えていくのが面白い。人間って皆、同じように成長するんだねえ。身分とか何にも関係ないんだ。
母さまが会いたい皆の中に朱音殿下がいるなら、母さまはたくさん会い行くといい。赤ちゃんは、長く会っていない人や知らない人に会うと泣いちゃうことあるから。
そうして会いたいって言ってもらったら、順番が前になることはよくある。でも、母さまは何にも言わないから後回しなんだ。
「真理じゃなあ」
「成人は分かりやすくて良いな」
緋見呼さまと父さまが言って、緋色はまた、聞こえないふりしてご飯を食べていた。
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