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第七章 冠婚葬祭
129 最後の衣装合わせ 成人
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雨の多い月が終わると、ひと息に気温が高くなる。からりとして、少し暑いくらい。そんな気候が俺は好きなので、調子が良い。斎も、おんなじ。俺たち、同じ国の人だもんね。頭に、おんなじ手術痕もあるし。
そんな調子の良い俺たちの横で、緋色が、暑いと言い始める。これは大変。結婚式を急がないと、緋色が正装で汗だくになってしまう。
そう思っていたら、最後の衣装合わせに来てください、とお手紙が届いた。
流石、涼乃絵。緋色のこと、よく分かってるね。作治も暑がりらしい。皆が調子良い季節は今だ!と大急ぎで頑張ってくれたんだって。
お手紙が届いた次の日には、衣装部へ皆で出かけた。緋椀と作治も、七条の屋敷から来てくれたよ。作治は、結婚式のお話になると行動が素早い。いつも、どんな仕事も素早いらしいけれど、もっと素早い。緋色が楽しそうに笑ってた。
「楽しみにしすぎだろ」
「ええ。楽しみにしすぎて、この日々が終わって欲しくないような心持ちまでしてきております」
「はは。なんだそりゃ」
「その日が来てしまうと、このわくわくした毎日が終わってしまうのか、と思うと寂しくてですね」
「はは。ははは」
「けれど、衣装をまとった緋椀を早く目にしたいという気持ちも抑えきれず……」
「ははははは。そんなに楽しんで貰えるとは思わなかった」
すごく、すごーく楽しそうに笑う緋色を、作治は眩しそうに見る。にこにこして頭を下げる。
「殿下。本当に、ありがとうございます」
「畏まるな。楽しい遊びだろ」
「ええ。最高の戯れです」
「な」
やっぱり仲良しの二人は、二人で、はははと笑うんだ。
衣装部では、この前合わせた時よりもっと体にぴったりと丁度よくなった衣装を着た皆が、ずらりと並んだ。この前は、まだちゃんと縫っていなかったんだって。形とかの確認だった、とか?俺にはよく分からないんだけど、あの時もちゃんと布はほどけないようになってたから、もうほとんど完成かと思ってた。あの時の留めてた糸は、一度全部ほどいたらしいよ。うーん、大変。
刺繍とか模様とかも、前に見た時よりもっとすごいことになっている。緋椀の衣装は、作治の注文通りに腰の所がきゅ、と絞られた後でふわりと少し広がる形になっていて、ちょっと可愛かった。緋椀にすごく、すごーく似合っている。
壱臣は前の時に、痩せたって言われてちょっと怒られてたけど、大丈夫だったかな。うん。大丈夫そうだな。
俺が今、怒られそうになってるけどね。
「予想よりも減ってますね。成人さまも斎さまも」
あ、斎も?
頑張ったんだけどなあ。ゼリーとか、食べてたんだけど。
俺のズボンが緩くて、祈里が、むうってなっている。斎のとこでも衣装部の男の人が、むむって唸っている。
「天気に左右されるからなあ。勘弁してやってくれ。体調は回復している」
「はい、殿下」
祈里が、隣の緋色に頭を下げた。
「すみません。お天気での体調不良と分かってはいるんですが、それでも、どうしても心配してしまって……」
「ごめんね、祈里」
小さく聞こえた言葉に、謝った。
差し入れも、しばらく持ってこられなかったから、心配してたんだよね。灯可みたいにうちに来てくれたら、大丈夫って言えたんだけど。
「今度、雨の時、俺が来れない時は祈里がおうちに来てね。おやつの時間に来たらいいよ」
「そうしろ。誰かいる方が食べるからな」
一度頭を上げた祈里が大きく目を見開いてから、もう一度頭を深く下げた。
「ありがとうございます。是非……!」
やった。外に出られない時に来てくれる友だちが、また増えた!
そんな調子の良い俺たちの横で、緋色が、暑いと言い始める。これは大変。結婚式を急がないと、緋色が正装で汗だくになってしまう。
そう思っていたら、最後の衣装合わせに来てください、とお手紙が届いた。
流石、涼乃絵。緋色のこと、よく分かってるね。作治も暑がりらしい。皆が調子良い季節は今だ!と大急ぎで頑張ってくれたんだって。
お手紙が届いた次の日には、衣装部へ皆で出かけた。緋椀と作治も、七条の屋敷から来てくれたよ。作治は、結婚式のお話になると行動が素早い。いつも、どんな仕事も素早いらしいけれど、もっと素早い。緋色が楽しそうに笑ってた。
「楽しみにしすぎだろ」
「ええ。楽しみにしすぎて、この日々が終わって欲しくないような心持ちまでしてきております」
「はは。なんだそりゃ」
「その日が来てしまうと、このわくわくした毎日が終わってしまうのか、と思うと寂しくてですね」
「はは。ははは」
「けれど、衣装をまとった緋椀を早く目にしたいという気持ちも抑えきれず……」
「ははははは。そんなに楽しんで貰えるとは思わなかった」
すごく、すごーく楽しそうに笑う緋色を、作治は眩しそうに見る。にこにこして頭を下げる。
「殿下。本当に、ありがとうございます」
「畏まるな。楽しい遊びだろ」
「ええ。最高の戯れです」
「な」
やっぱり仲良しの二人は、二人で、はははと笑うんだ。
衣装部では、この前合わせた時よりもっと体にぴったりと丁度よくなった衣装を着た皆が、ずらりと並んだ。この前は、まだちゃんと縫っていなかったんだって。形とかの確認だった、とか?俺にはよく分からないんだけど、あの時もちゃんと布はほどけないようになってたから、もうほとんど完成かと思ってた。あの時の留めてた糸は、一度全部ほどいたらしいよ。うーん、大変。
刺繍とか模様とかも、前に見た時よりもっとすごいことになっている。緋椀の衣装は、作治の注文通りに腰の所がきゅ、と絞られた後でふわりと少し広がる形になっていて、ちょっと可愛かった。緋椀にすごく、すごーく似合っている。
壱臣は前の時に、痩せたって言われてちょっと怒られてたけど、大丈夫だったかな。うん。大丈夫そうだな。
俺が今、怒られそうになってるけどね。
「予想よりも減ってますね。成人さまも斎さまも」
あ、斎も?
頑張ったんだけどなあ。ゼリーとか、食べてたんだけど。
俺のズボンが緩くて、祈里が、むうってなっている。斎のとこでも衣装部の男の人が、むむって唸っている。
「天気に左右されるからなあ。勘弁してやってくれ。体調は回復している」
「はい、殿下」
祈里が、隣の緋色に頭を下げた。
「すみません。お天気での体調不良と分かってはいるんですが、それでも、どうしても心配してしまって……」
「ごめんね、祈里」
小さく聞こえた言葉に、謝った。
差し入れも、しばらく持ってこられなかったから、心配してたんだよね。灯可みたいにうちに来てくれたら、大丈夫って言えたんだけど。
「今度、雨の時、俺が来れない時は祈里がおうちに来てね。おやつの時間に来たらいいよ」
「そうしろ。誰かいる方が食べるからな」
一度頭を上げた祈里が大きく目を見開いてから、もう一度頭を深く下げた。
「ありがとうございます。是非……!」
やった。外に出られない時に来てくれる友だちが、また増えた!
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