【完結】人形と皇子

かずえ

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第七章 冠婚葬祭

109 知らないといけないこと  成人

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椿つばき!」

 大角だいかくが、悲鳴のような声を上げた。隣で、梅香うめかがふらりと揺れる。倒れそうになってる?大丈夫?目の下が黒いようには見えないけど、朱実あけみ殿下が前にやってたみたいに、肌色の粉を顔に塗って隠されてたら分からない。もしかして、本当は黒いのかな。

「お前は何を言うとんのや。こうして……!こうして坂寄さかきと二人で不敬を重ねたんか。それを。それを許して置いてくださっとる殿下方のお優しさが、まだ分からんのか!坂寄さかきも、こんな得難い申し出の返事を渋るやなんて。できんならできんと、はっきり言わなあかん。いつまでもうだうだと言を重ねとるんは、失礼が過ぎる。御前ごぜんで、こうしてお話を聞いてくださっとることが、温情なんや!」
「ち、父上。そんな、不敬やなんて……。私は、そんな……」
「甘やかし過ぎた。私はこの子を甘やかし過ぎました、緋色ひいろ殿下」
「だな」
「処分は、如何様いかようにもなさってください」
弐角にかく。御せるか」
「はっ」

 俺には難しい話になってきた。メモするのが忙しい……。
 弐角にかくが湯呑みを置いて包拳礼をした。

「お家騒動の後、我が家へ協力してくれた家門との絆はより深まりましたけど、それでまた、増長する者がある言うなら、俺の力不足です。勘違いする者の出んよう、も少し威厳を持って事に当たろう思います。此度はご迷惑をお掛けして、誠に申し訳ございませんでした」

 ええ、と。
 椿つばき坂寄さかきは不敬を働いた。不敬は、皇族に失礼な言動をすること。どれがそれに当たるのかよく分からないけど、駄目なことをしてしまった。だから、何か怒られてて、でも、二人は、何が駄目か俺と一緒で分かっていない。だから、怒られても謝ったりできなくて困ってる。それで、大角だいかく弐角にかくが謝ってる。保護者だから。上に立つ者だから。ここまでは分かった。
 緋椀ひまりもよく、見可みかと一緒に頭を下げている。見可みかは、たまに失敗するから。見可みかは、ごめんなさい、と反省して頭を下げる。緋椀ひまりは、見可みかをきちんと指導できなくて申し訳ない、とのお詫びで頭を下げているんだと教えてくれた。
 じゃあやっぱり、椿つばき坂寄さかきも、何が駄目だったか分からないといけない。指導できなかったお詫びだけをもらうのは、ちょっと違う気がする。

緋色ひいろ椿つばき坂寄さかきの、どれが不敬?」
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