【完結】人形と皇子

かずえ

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第七章 冠婚葬祭

105 やっぱり最恐  弐角

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弐角にかく。別にこんな仰々ぎょうぎょうしいことをしろと言った覚えは無いんだが?」

 ソファに深く腰掛けた緋色ひいろ殿下が、うんざりした顔で六車むぐるま夫妻を見てから、隣の成人なるひとさまを抱き上げようと手を伸ばして、だめー、とその手を押さえられている。
 うん、成人なるひとさま?今日は、殿下のお膝に座る気分やないんかー、そうかあ。でもな。世界平和のために、殿下の膝の上に乗っとってくれんかな?そうしたら殿下のご機嫌は大抵、上向くから。

「分かっとります。せやけど、六車むぐるまが、どうしても直接、緋色ひいろ殿下と成人なるひと殿下に謝罪を申し述べたいんです、言うもんやさかい」
「まあ、成人なるひとに、というなら仕方ないから聞くが」

 そやね。おるだけで、圧倒的な存在感と圧力を感じる緋色ひいろ殿下に不敬を働く強者つわものなんて、まあおらんやろ。不敬や無礼や言うたら成人なるひとさま絡みやろなあ。
 なんで皆、分からんのかな。成人なるひとさまは、めっちゃ優しくて可愛らしいけど、そこかしこから緋色ひいろ殿下の気配が立ち上っとるのに。本人かて、身のこなしに無駄がない。俺では、成人なるひとさまの初手は防げんかもしれん。

「お時間を取らせてしまう事になるのは分かっとりましたが、それでも、どうしても、こうして直接の謝罪を受け入れて頂きたく。此度の仕儀、誠に、誠に申し訳なく」

 六車むぐるまがまた、頭を下げた。そんなに暑くもない部屋で、だらだらと汗をかいとる。緋色ひいろ殿下の、どんな噂を聞いてきたのやら。まあ、最恐、いうのは有名な話やけど。
 そんなことは、全然無いんやけどな。
 優しい、お人やと思う。おみがあんなに懐いとるんやもん。成人なるひとさまも。……半助はんすけもや。今回の手紙かて、半助はんすけが手を出す前に侍女を連れ帰れ、やったもんな。
 そんな手紙やから、事情がよう分からんくて、関係者が震え上がるんやろ。大体、緋色ひいろ殿下からの手紙なんて、ほぼメモやからね。
 遊びに行く、とか何日から何日まで滞在、とか一言書いてあるだけやし。封筒に入って届くのはまだましで。一ノ瀬のじい様が、するりと城の防衛線突破して、遊びに、ってメモを持ってくるのが一番恐ろしい。色んな意味で!
 やっぱ最恐やったわ。
 はあ。
 なんか、疲れたなあ。
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