【完結】人形と皇子

かずえ

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第七章 冠婚葬祭

95 坂寄のお仕事探し  成人

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「ここで、お仕事できる?」

 着させてもらっていた衣装を脱いで、坂寄さかきに聞いてみた。ぽかんと口を開けて、俺を見ている。
 なんだろ?

「はっ。あの、いえ……すみません。私は、着物しか縫うたことがなく、お役に立てるかどうか……」
「ふーん。じゃあ、帰る?」
「あ、いえ。それは、その……」
「んん?」

 もう帰っていいよって坂寄さかきに言ったら、もうしばらく置いて頂きたいってお願いされた。でも、離宮うちのお仕事は余ってないから、もう使用人はいらない。椿つばきも本当はいらないんだけれど、緋色ひいろが連れてきたから置いているんだもんね。
 きっと椿つばきが、帰りたいって言ったら緋色ひいろはすぐに、いいよって言う。その時は俺は、椿つばきに護衛の仕事は絶対に無理だよ、ってちゃんと伝えなきゃいけない。この前は、ちっとも分かってもらえなかった。ちゃんと伝えたつもりだったけど、伝わらなかった。
 そんなこともある。うん。でも諦めちゃいけない。今度は、もっとちゃんと言うんだ。橙々だいだいの命がかかってるんだから、頑張らなきゃ。
 椿つばきが熱を出していたから連れて来た椿つばきの侍女、坂寄さかきは、椿つばきのお熱が下がったらもうお仕事は終わり。だけど、もうしばらく置いてって言う。
 それで、針仕事が得意って聞いたから、今、とても忙しいって言ってる衣装室に連れて来た。衣装合わせのついで。衣装室の人は皆、忙しいって言いながらにこにこだから、人を増やさなくても大丈夫な気はするけど、他にお仕事、思いつかなかった。涼乃絵すずのえに聞いたら、ご本人にやる気があれば、歓迎致しますよって言ってくれたんだ。後は、坂寄さかきのやる気だけだよ。

「帰る?ここでお仕事する?」

 お仕事するなら、お城から離れた所にある使用人用の建物で寝泊まりできるしね。祈里いのりは、そこに住んでるって言ってた。

「ここでお仕事したら、祈里いのりのおうちに住めるんだよね」
「私の……?あ、はい。使用人寮に入ることができますね」

 良かった良かった。
 俺は、うんうんって頷く。

「え?あの。住む場所も変わるのでございますか?」
「うん?」
「その。今、寄せてもろうてる部屋から通ういう訳には……」

 ん?なんで?

「うちの部屋は、うちの人だけ使う。坂寄さかきは違う」
「は。あの。すみません」

 坂寄さかきの、すみませんが始まった。

「何がすみません?」
「あ、いえ、あの。差し出口を致しました……」

 差し出口?

「余計な口出しってことだ」
「あ、うん」
「分かっているなら、とっとと選べ。ここで仕事を貰うのか、さとへ帰るか」

 着替え終わった緋色ひいろが、坂寄さかきを見下ろす。
 機嫌いいね!さっきの衣装、気に入った?俺も、あれ好き。
 でも、なんで俺と緋色ひいろも、結婚式の衣装着るの?
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