人形と皇子

かずえ

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第七章 冠婚葬祭

93 何か、分かる  成人

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壱臣いちおみさま、少しお痩せになりましたか?」

 壱臣いちおみの服を合わせていた男の人が、うーん、と首を傾げながら、肩や腰の辺りの布を確認している。

「ええ?そうかな……」

 壱臣いちおみ。それじゃ、うん、そうですって言ってるみたいだよ。

おみ?どういうことや。ここんとこ、そんな忙しなかったやろ?」
「食べとるよ」
「食べとったら、体重は減らんやろ」
「食べとった。その、新作の味見でお腹いっぱいになった日もあったけど……。しゃあないやろ、入らんのやもん」

 半助はんすけ壱臣いちおみが言い合いしてる!壱臣いちおみ、そんなの言うんだ。壱臣いちおみが誰かに言い返すの、初めて聞いたかも。いつも、そうやねえ、ってにこにこ笑ってたから。
 半助はんすけには言うんだね。何か、分かる。俺も、緋色ひいろにだけ言えること、たくさんあるよ。
 半助はんすけも、怒っちゃうくらい心配なんだなあ。大丈夫。また、たくさん食べたらいいじゃない?壱臣いちおみは、前よりずっと体にお肉がついたから大丈夫だよ。

「ねー?」
「えーと、はい……?」

 ほらね。

「はは。抱き心地で気付かなかった半助はんすけが悪い」
「く……。面目次第もございません……」

 半助はんすけが、がっくりしちゃった。んーと、どういう意味?気付かなかったから悔しいってこと?
 仕方ないよ。前の壱臣いちおみより、すっごくお肉ついたから、もうそれだけで嬉しいよね。
 緋色ひいろが楽しそう。緋色ひいろは俺を、いっつも抱っこしてくれるから、ちょっとお肉が減ったらすぐに気付くもんね。
 壱臣いちおみのお洋服は、体にぴったりして、あんまりふわふわとしていないから、余計に痩せたのが分かりやすいのかも。柔らかそうなてろりとした生地は、動くと刺繍がきらきら光って綺麗だ。真っ白で、きらきら。
 半助はんすけも、上着の長さが違うだけで同じみたいに見える服だった。中身のない右袖が、てろりと揺れている。
 俺のは大体、左袖は半分の長さにしてあって、邪魔にならないように作ってあるのに、半助はんすけのはいつも、袖が付いている。動く時、邪魔になったりしないのかな?軍服は生地が硬いから、邪魔にはならない?
 半助はんすけの服に袖があって揺れてるの、格好良いからそれでいっか。
 結婚式なんだから!
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