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第七章 冠婚葬祭
78 重なる日々 三郎
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「三郎、聞いたか?殿下がまた、変なの拾ってきたって」
「あ、力丸さん、おかえりなさい。変なのって何ですか?」
「ただいま。聞いてねえのかよ。お前に関わり深いと思うぞ」
「殿下方のお帰り時間は知っとったんですが、出迎え不要とお達しがあったんで」
「まあ義姉上さえ出迎えりゃ、他はいらないだろうよ。荘重さまも付いているし」
「はい。夕食の時にご挨拶したんでええ思て、お部屋におりました。ほんで、変なのとは?」
「お前、慣れてきたなあ。後は言葉遣いだな。九条が俺みたいな下っ端に、丁寧に喋ってんのおかしいぞ」
「言うても力丸さんは近衛なんですから、充分偉いです」
「まあ、いいけどよ。あ、そうだ。九鬼から、一人連れ帰ったらしいぞ。さっき皇太子殿下から聞いてさ。六車って言ってたけど、知り合いじゃねえか?会っても平気か?」
六車。何とも懐かしい。忙しい毎日の中で、九鬼で過ごした日々は、すでに遠くなりかけとる。無意識に、辛い記憶を閉じ込めているのか、あまりしっかりと生きてはいなかったからか、はっきりと浮かんでくるものはない。
楽しい記憶は、離宮に来てからのものばかり。
「私の所属しとった家とは敵対しとった家やったんで、ほとんど面識はない思います。そこの家人なんですか?」
「直系の姫らしいぞ」
「姫……。まあ、敵対しとったら婚約者候補にもならへんし、お互い知らんと思いますけど」
「なら、いいんだ。殿下は、お前に会う可能性なんて、これっぽっちも考えちゃいねえんだから」
「気にしてくださり、ありがとうございます」
優しい優しい力丸さん。仕事終わりに、わざわざ伝えに来てくれたんやと思うと、それだけで嬉しい。
「後で一緒に飯食おうぜ。じゃな」
「はい、後で」
こうして、他愛ない約束が重なっていくことが、なんと幸せな事やろう。
もし面識があったとしても、六車の姫にはきっと、私が一二三やとは分かるまい。髪の長さとか、身に付けている着物が違うとかそういう事やなく、もう全く違う顔付きをしとることが、自分でも分かるんやから。
「あ、力丸さん、おかえりなさい。変なのって何ですか?」
「ただいま。聞いてねえのかよ。お前に関わり深いと思うぞ」
「殿下方のお帰り時間は知っとったんですが、出迎え不要とお達しがあったんで」
「まあ義姉上さえ出迎えりゃ、他はいらないだろうよ。荘重さまも付いているし」
「はい。夕食の時にご挨拶したんでええ思て、お部屋におりました。ほんで、変なのとは?」
「お前、慣れてきたなあ。後は言葉遣いだな。九条が俺みたいな下っ端に、丁寧に喋ってんのおかしいぞ」
「言うても力丸さんは近衛なんですから、充分偉いです」
「まあ、いいけどよ。あ、そうだ。九鬼から、一人連れ帰ったらしいぞ。さっき皇太子殿下から聞いてさ。六車って言ってたけど、知り合いじゃねえか?会っても平気か?」
六車。何とも懐かしい。忙しい毎日の中で、九鬼で過ごした日々は、すでに遠くなりかけとる。無意識に、辛い記憶を閉じ込めているのか、あまりしっかりと生きてはいなかったからか、はっきりと浮かんでくるものはない。
楽しい記憶は、離宮に来てからのものばかり。
「私の所属しとった家とは敵対しとった家やったんで、ほとんど面識はない思います。そこの家人なんですか?」
「直系の姫らしいぞ」
「姫……。まあ、敵対しとったら婚約者候補にもならへんし、お互い知らんと思いますけど」
「なら、いいんだ。殿下は、お前に会う可能性なんて、これっぽっちも考えちゃいねえんだから」
「気にしてくださり、ありがとうございます」
優しい優しい力丸さん。仕事終わりに、わざわざ伝えに来てくれたんやと思うと、それだけで嬉しい。
「後で一緒に飯食おうぜ。じゃな」
「はい、後で」
こうして、他愛ない約束が重なっていくことが、なんと幸せな事やろう。
もし面識があったとしても、六車の姫にはきっと、私が一二三やとは分かるまい。髪の長さとか、身に付けている着物が違うとかそういう事やなく、もう全く違う顔付きをしとることが、自分でも分かるんやから。
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