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第七章 冠婚葬祭
61 上に立つ人 成人
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弐角は俺に謝りながら、包拳礼をして頭を下げた。才蔵も、すぐに同じ形になる。いらないって言ってあるのにするのは、わざとだよね。それとも、ごめんなさいの代わり?
何かありそうだから、いいよって言わずに黙って見ていると、二人の後ろで橙々と椿が同じように包拳礼をした。
「申し訳、ありません、でした⋯⋯」
「申し訳ありません」
橙々が謝って、椿も謝る。うん、いいよー。
あ。
「じいや。あの人、助けてあげて」
座り込んだままの侍女さん、忘れてたよ。大変、大変。
じいやがすぐに現れて、侍女さんを立たせてくれた。橙々と椿が、頭を下げたままでびくっと肩を揺らして、そちらをそうっと伺っているのが分かる。じいやは、姿を見せてもあんまり気配を感じないからねえ。何が起こっているのか、分からなかったんだろう。
「あ、あ、ありがとう、ございます⋯⋯」
「弐角。もう、いいよー」
立ち上がった侍女さんも包拳礼をするのを見てから、言った。
「すんません。ありがとうございます、成人さま。はあ、ほんまにこいつは」
「あ、あの。兄さま⋯⋯?」
「礼儀を忘れたらあかん、橙々。この世には、お前より偉いお人は、ようけおるんや。相手の身分が下であっても、まずは礼儀正しく接さなあかん。礼儀を忘れとるような上のもんに、下のもんは付いてこんやろ」
「はい⋯⋯。ごめんなさい」
弐角って、格好良いんだな。ちゃんとしてると、皇族の人たちと似てる感じがする。橙々も、今はしゅんとしてるけど、赤璃さまにちょっと似てるとこもある。
「成人さま、ほんまにご無礼致しました。橙々たちを屋敷に招き入れてええでしょうか?」
いいよー。緋色、弐角に、婚約者呼べって言ってたし。
俺は、うんうん頷く。
「ありがとうございます。ほな、中に入りましょか。緋色殿下に紹介せな」
「え?緋色殿下が、いらっしゃるんですか?」
「当たり前やろ。成人さまとご一緒に、ご旅行に来られたんや」
「ほな、兄さまの急用って」
「殿下のお迎えや。ここは、緋色殿下がお買い上げくださった、殿下の別宅やから」
「ほな、そう言うてくれたらええやん」
「そんな暇無かったんや。あんお方は、いっつも急に来られるんやから」
あー、うん。そうかも。
「ごめんね?」
「いや、ええんです。そんな、謝ることやないんです。きっと俺のこと、友人やと思てくれてるから、ひょいと来られるんやろなあ、てちょっと嬉しかったりもしますし。けど、大慌てにはなります」
「ふふ」
そうそう。緋色は弐角のこと、友だちだと思ってるよ。それは、間違いない。今日は来なかったけど、力丸は才蔵のこと、友だちだと思ってるし。
「うちは、兄さまがわざわざ着物やない服に着替えて出掛けられたと聞いたから、気が気や無うて⋯⋯」
「それは、あれや。臣が、着物やら苦手やから、着替えたんや」
ああ、と橙々は俺たちを見回した。弐角と才蔵は、軍服っぽい服着てる。もちろん俺たちも、着物じゃない。
「壱臣さまも、いらっしゃる⋯⋯」
橙々が緊張してきたのが分かる。侍女さんも、ずっと緊張してる。椿は建物の中に入ったからか、他にも護衛がいるからか気を抜いている。
言っておいた方がいいな。
「ねえ、弐角」
「はい」
「橙々が大事な人なら、護衛はちゃんと、強い人付けないと駄目だよ」
何かありそうだから、いいよって言わずに黙って見ていると、二人の後ろで橙々と椿が同じように包拳礼をした。
「申し訳、ありません、でした⋯⋯」
「申し訳ありません」
橙々が謝って、椿も謝る。うん、いいよー。
あ。
「じいや。あの人、助けてあげて」
座り込んだままの侍女さん、忘れてたよ。大変、大変。
じいやがすぐに現れて、侍女さんを立たせてくれた。橙々と椿が、頭を下げたままでびくっと肩を揺らして、そちらをそうっと伺っているのが分かる。じいやは、姿を見せてもあんまり気配を感じないからねえ。何が起こっているのか、分からなかったんだろう。
「あ、あ、ありがとう、ございます⋯⋯」
「弐角。もう、いいよー」
立ち上がった侍女さんも包拳礼をするのを見てから、言った。
「すんません。ありがとうございます、成人さま。はあ、ほんまにこいつは」
「あ、あの。兄さま⋯⋯?」
「礼儀を忘れたらあかん、橙々。この世には、お前より偉いお人は、ようけおるんや。相手の身分が下であっても、まずは礼儀正しく接さなあかん。礼儀を忘れとるような上のもんに、下のもんは付いてこんやろ」
「はい⋯⋯。ごめんなさい」
弐角って、格好良いんだな。ちゃんとしてると、皇族の人たちと似てる感じがする。橙々も、今はしゅんとしてるけど、赤璃さまにちょっと似てるとこもある。
「成人さま、ほんまにご無礼致しました。橙々たちを屋敷に招き入れてええでしょうか?」
いいよー。緋色、弐角に、婚約者呼べって言ってたし。
俺は、うんうん頷く。
「ありがとうございます。ほな、中に入りましょか。緋色殿下に紹介せな」
「え?緋色殿下が、いらっしゃるんですか?」
「当たり前やろ。成人さまとご一緒に、ご旅行に来られたんや」
「ほな、兄さまの急用って」
「殿下のお迎えや。ここは、緋色殿下がお買い上げくださった、殿下の別宅やから」
「ほな、そう言うてくれたらええやん」
「そんな暇無かったんや。あんお方は、いっつも急に来られるんやから」
あー、うん。そうかも。
「ごめんね?」
「いや、ええんです。そんな、謝ることやないんです。きっと俺のこと、友人やと思てくれてるから、ひょいと来られるんやろなあ、てちょっと嬉しかったりもしますし。けど、大慌てにはなります」
「ふふ」
そうそう。緋色は弐角のこと、友だちだと思ってるよ。それは、間違いない。今日は来なかったけど、力丸は才蔵のこと、友だちだと思ってるし。
「うちは、兄さまがわざわざ着物やない服に着替えて出掛けられたと聞いたから、気が気や無うて⋯⋯」
「それは、あれや。臣が、着物やら苦手やから、着替えたんや」
ああ、と橙々は俺たちを見回した。弐角と才蔵は、軍服っぽい服着てる。もちろん俺たちも、着物じゃない。
「壱臣さまも、いらっしゃる⋯⋯」
橙々が緊張してきたのが分かる。侍女さんも、ずっと緊張してる。椿は建物の中に入ったからか、他にも護衛がいるからか気を抜いている。
言っておいた方がいいな。
「ねえ、弐角」
「はい」
「橙々が大事な人なら、護衛はちゃんと、強い人付けないと駄目だよ」
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