【完結】人形と皇子

かずえ

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第七章 冠婚葬祭

56 結婚式って大変なのかも  成人

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成人なるひと。一緒に暮らしていなくても、血縁は家族だ」
「けつえん」
「血の繋がった人、だな。親子とか兄弟とか」

 常陸丸ひたちまるが教えてくれた。親子や兄弟は、もう知ってる。顔の似ている人たち。
 壱臣いちおみ弐角にかくは、常陸丸ひたちまる力丸りきまるよりもっとそっくり。そういう人たちは、一緒に暮らしていなくても家族なのか。そうかあ。
 仲の良い血縁。うん。壱臣いちおみ弐角にかくは仲良しでそっくりだから、家族だ。

「うわあ、そうかあ。じゃあ、弐角にかくも結婚式来る?あ、じゃあ半助の家族もどっかにいる?あれ?睦峯むつみねさいは?離れた場所に家族いるかな?緋椀ひまり作治さくじのとこは、一条と七条が家族でいいんだよね?それは知ってた」

 たくさん口に出して喋ると、頭の中の考えと口に出てる言葉が追いつかなくなってくる。ん?あれ?ええ、と。結婚式は、うちの人たちでやる。うちの人ってのは家族。家族で、おめでとうってするつもりだったけど、でも、家族は遠くにもいることがあって⋯⋯。

「一回、茶を飲め」

 あ、うん。
 うわ、まだちょっと熱い。

「ええと。おみが結婚式をするんですか」

 そうそう。
 俺が頷くと、弐角にかくがむう、と口を尖らせた。

「え?聞いてへん」
「や、その、ほんまにするん?」
「え?するよ」

 壱臣いちおみったら、何言ってるの。衣装も色々、考えて貰ってるんだから!ああ、そういえばまだ、半助と作治さくじしか衣装部に連れて行っていなかったなあ。

「今度、壱臣いちおみも衣装さんのとこ行こう」
「うち?もう、誰か行きはったん?」
「うん。半助が一番に行って、作治さくじも行った」
「えええ?」

 壱臣いちおみが半助を、ばっと見る。

成人なるひとさまの護衛で、ついて行っただけや」
「でも、聞いてへん」
「希望はあるかと聞かれたけど、俺には服のことなんて分からへんし、羽織袴や着物はおみが苦手やから無しにしてくれ、と伝えてきただけやから」
「でも」

 壱臣いちおみのその口を尖らせた顔、さっきの弐角にかくにそっくりね。

「ふふ」
「どうした」
壱臣いちおみ弐角にかくがそっくり」
「そりゃそうだろ。双子なんだから」

 双子。お腹の中から一緒なんて、すごいなあ。いいなあ。

「⋯⋯悪かった。壱臣いちおみが楽しみにしてることやから、今度からはちゃんと一緒に考えよな」
「⋯⋯半助は、その、結婚式、しても、ええの?⋯⋯その、嫌やない?」
「そんな訳ないやろ」
「そうか、良かった」

 壱臣いちおみが嬉しそうに笑って、半助がぽんぽんと壱臣いちおみの頭を撫でた。その手の薬指に指輪があるのが見えて、俺は嬉しくなった。
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