【完結】人形と皇子

かずえ

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第七章 冠婚葬祭

50 衣装の話は分からないけれど  成人

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「では、半助さまもこちらにお掛けください。お茶を淹れて来ますね」
「いや、俺はこのままで」
「半助、どんなのがいい?」

 やっと落ち着いた祈里いのりが、お茶を淹れに行った。

「座っていては、仕事になりません」
「大丈夫だよ」

 俺がお城に入ってから、一ノ瀬がずっと周りにいる。半助だって気付いてるでしょ。だから、全然平気。お城の一ノ瀬に警戒してたら、疲れちゃうよ。
 少し、むっとしてる。半助のいらいらは、時々分からない。

壱臣いちおみに、どんな服が似合うかなあ。白無垢着るかなあ」
「あー、はい。いや、着物は嫌やないかな......」
「あ、そうなんです?」

 半助が、やっと俺の横に座ってくれたら、ちょうど祈里いのりがお茶を持ってやってきた。

「ああ。壱臣いちおみは羽織袴が嫌いやし、着物もあの女を思い出すから、得意やないと思う」

 あの女?ああ。九鬼くきのとこの、三郎さぶろうと一緒にいた人?付けてる匂いが強かったことしか、覚えてないなあ。臭かった......。

「そうですか。壱臣いちおみさまは着物が苦手......」
「ああ。それだけは、覚えておいてもらえると助かる」
「はい......」

 祈里いのりはもう、返事も適当だ。面白い。すごくたくさんの説明を一生懸命喋る時と、すっかり考え込んで黙る時がある。

「おや。これは成人なるひとさま。お珍しいこと」
涼乃絵すずのえ!」
涼乃絵すずのえさま」

 祈里いのりがやっと、だんまりから抜け出した。

「わたくしも、ご一緒してもよろしいですか?」
「あ。お願いします。あの、凄いのですよ、涼乃絵すずのえさま。離宮で結婚式をされるそうです。三組も!」

 あ、たくさん喋る祈里いのりが戻ってきた。ふふ。本当に、面白い。

「まあ。三組?」
「はい。半助さまと壱臣いちおみさま。睦峯むつみね先生とさいさま。緋椀ひまりさまと作治さくじさまだそうです」
「まああ!」

 涼乃絵すずのえは、おっとりした喋り方のまま、祈里いのりと同じみたいなことを言った。

「まああ!まああ!素敵、素敵だわ!うちでお衣装を?よろしいのですか?」
緋色ひいろが相談してこいって言った」
「うふふ。うふふふ。緋色ひいろ殿下のお声がかり......!畏まりましてございます」

 おお。何か、ものすごく喜んでる。こんな涼乃絵すずのえも珍しい。
 それから、祈里いのりにお茶をもらって少し落ち着いた涼乃絵すずのえと、半助と祈里いのりが三人でお話しているのを聞いていた。  
 そのうち、衣装係の他の人も作業部屋からどんどん出てきて、大盛り上がりした。中にいるだけで、とても楽しかった!

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