【完結】人形と皇子

かずえ

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第七章 冠婚葬祭

47 ええなあとは思たけども  壱臣

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「聞きに行くか?」

 いとも簡単に、緋色ひいろ殿下は言わはった。

「は?」
「この週末に、弐角にかくの所に聞きに行こう」

 うん?うちが聞き返した間に、決定になってへんかな?

弐角にかくのとこ、遊びに行くの?俺、猿に会いたい。猿のとこ行く」

 成人なるひとくん?そこは止めよ?

弐角にかくさまは、婚礼準備で忙しいのではないですか?」

 常陸丸ひたちまるさん、ありがとう。うちもそう思うで。

「週末くらい休むだろ。婚礼準備なんて、そんなに何かすることあったか?」
「ありますよ、色々。何だか細々こまごまとありましたよ?」
「そうか……?」
「殿下は!無かったでしょうけど!」

 うーん。緋色ひいろ殿下、準備とか丸投げしてそうやな。と、いうか。

「殿下と成人なるひとくんは、結婚式をしはったんですか?」
「したよー」
「へええ。そうやったんですね」
「白い着物が重たかったー」
「白い着物……」

 成人なるひとくんに白無垢着せたんか……。いや、似合いそうやけども。
 結婚式か……。ええなあ。殿下と成人なるひとくんは、お互いを好きな気持ちを隠しもせず、照れもせず、堂々としてはって素敵や。見てる方が照れるくらい、想いあってるもんなあ。結婚式も、当たり前のようにしはったんやろなあ。

「お前らもするか?」
「は?」
「お前と半助はんすけの結婚式」
「はああ?」

 思わず大きな声を出してしもたのは勘弁してほしい。
 結婚式?うちと半助が?
 うん、まあ、伴侶やけども。誓いは二人で交わしたけども。
 そりゃちょっと、結婚式ええなあ、とは思たけど、でも、白無垢なんて……。

「いいですね」

 そう言うたのは、睦峯むつみね先生で。

「俺たちも籍を入れただけですから、そういう儀式的なもの、したいな……」

 けど、どんどん声が小さくなっていったのは、隣で伴侶がくすくす笑っているからやろか。さいさんはどうなんやろ。

「白無垢は着ませんよ?」
「ああ、もちろん。俺たちに軍服はおかしいし、羽織袴なんて似合わないし、何かこう、かちっとした格好で、こう、二人で三三九度でもしたらどうだろう?」
「それなら、喜んで」

 睦峯むつみね先生とさいさんの結婚式をやることが、決まってしもたのかな?白無垢やなくてもええのか。そうか。
 ……ええなあ。

緋椀ひまりたちも結婚式してないから、緋椀ひまりたちもしたらいいんじゃない?」

 成人なるひとくんの言葉に、緋色ひいろ殿下は、にやあと笑った。
 恥ずかしがり屋の緋椀ひまりさまは、いらんて言うんちゃうかな。でも、作治さくじさまはやりたいって言いそう。それで、作治さくじさまにやりたいって言われたら、真っ赤になった緋椀ひまりさまは、うんて言うてしまうんやろ。目に見えるようや。そこまで折り込み済みで、殿下は悪い顔でわろたんやろな。
 緋椀ひまりさま、ご愁傷さまやで。

「いいな、楽しそうだ!三組同時にやるか。成人なるひと。後で城の衣装部に、結婚式の衣装の相談に行ってこい」

 三組?
 三組ー?
 うちらも入っとる!
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