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第七章 冠婚葬祭
41 俺はいいんだけど 成人
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「本当に、本当にお待たせしてしまって申し訳ございません」
灯可が帰ってきた、と連絡を受けて、さっき一度、茉璃と話していた部屋に移動する。そちらが、お客様用の部屋らしい。玄関から近い場所。奥の方は家の人が暮らしている家族の空間で、あまりよその人に入られたくないから、玄関の近くにお客様用の部屋がある。
離宮も一緒だ。一階に、お客様用の部屋と緋色の仕事の部屋、一ノ瀬の仕事の部屋がある。厨房や食堂、洗濯室とお風呂も一階で、二階に皆の部屋。誰か来ても、部屋で休んでいたら気にならなくていい。音や気配に敏感な人も、住みやすい。
俺を呼びに来てくれたのは、このお屋敷に来た時に玄関でも出会ったおじいさんの使用人。何回も謝ってくれるけど、気にしなくていいよ?お茶も出してもらったし、灯可の部屋の本棚にある本を色々めくっていたから、楽しかった。分厚くて小さい字の本が並んでいたから、ちょっとめくっただけで閉じたけど。少し中を見ても、題名を読んでも、内容の予想がつかないものばかりだったので、灯可にお勧めを教えてもらう方が早いと思う。もう少したくさん勉強してから、読んでみよう。たぶん今読んでも、あんまり面白くない気がした。
玄関には、緋椀に右手、灯可に左手を掴まれた見可が、半分泣いてる顔で立っていた。
「成人、こんにちは」
緋椀が、にっこり笑って言う。いつも通りの美人さんだ。軍人らしく短く刈っていた髪の毛が少し伸びて、軍服じゃなく白い襟付きのシャツを着て、涼しそうなゆったりした長ズボンを履いている。何だろう。とても、いい。似合う。短い髪の毛も軍服も格好良かったけど、緋椀はこういうのの方がいいな。
「こんにちは、緋椀。見可も、こんにちは」
「う。ぐす。成人さま、こんにちは」
「見可。他には」
おおう。灯可が、聞いたことないような声を出している。怒ってるね……。
「お待たせして、ごめんなさい」
「ん?いいよー」
別にいいのに。俺は何にも急いでないし、困ってない。見可が他に約束があるのなら、今日は灯可にだけ大事なお話をお伝えして帰っても、良かったのかもしれない。
「ああー、成人さま、ありがとうー。ほら、兄上。成人さま、全然怒ってないじゃん。あんなに怒ることないだろ!」
「私が怒っているんだ。母上との約束をあっさり忘れるなんて」
「謝っただろ?もう。兄上、しつこい!」
「お前の所為で、成人さまと遊ぶ時間が減るだろう!」
「何だよ。兄上が成人さまと遊びたいだけじゃん。俺に怒るなよ!」
「お前が約束を忘れなければ」
「はい、そこまで。客間に入るよ」
緋椀が本気で止めた。
「ごめんなさいいぃ」
見可が謝るのが早い。泣き声だけど。うん。鍛えたら強くなれるだろうな。楽しみ。
灯可は、ぷいっと見可の手を離して、俺と手を繋いでお客様用の部屋に入った。
「成人さま。大事なお話が済んだら、私と遊んでいってくださいね」
もちろん!
灯可が帰ってきた、と連絡を受けて、さっき一度、茉璃と話していた部屋に移動する。そちらが、お客様用の部屋らしい。玄関から近い場所。奥の方は家の人が暮らしている家族の空間で、あまりよその人に入られたくないから、玄関の近くにお客様用の部屋がある。
離宮も一緒だ。一階に、お客様用の部屋と緋色の仕事の部屋、一ノ瀬の仕事の部屋がある。厨房や食堂、洗濯室とお風呂も一階で、二階に皆の部屋。誰か来ても、部屋で休んでいたら気にならなくていい。音や気配に敏感な人も、住みやすい。
俺を呼びに来てくれたのは、このお屋敷に来た時に玄関でも出会ったおじいさんの使用人。何回も謝ってくれるけど、気にしなくていいよ?お茶も出してもらったし、灯可の部屋の本棚にある本を色々めくっていたから、楽しかった。分厚くて小さい字の本が並んでいたから、ちょっとめくっただけで閉じたけど。少し中を見ても、題名を読んでも、内容の予想がつかないものばかりだったので、灯可にお勧めを教えてもらう方が早いと思う。もう少したくさん勉強してから、読んでみよう。たぶん今読んでも、あんまり面白くない気がした。
玄関には、緋椀に右手、灯可に左手を掴まれた見可が、半分泣いてる顔で立っていた。
「成人、こんにちは」
緋椀が、にっこり笑って言う。いつも通りの美人さんだ。軍人らしく短く刈っていた髪の毛が少し伸びて、軍服じゃなく白い襟付きのシャツを着て、涼しそうなゆったりした長ズボンを履いている。何だろう。とても、いい。似合う。短い髪の毛も軍服も格好良かったけど、緋椀はこういうのの方がいいな。
「こんにちは、緋椀。見可も、こんにちは」
「う。ぐす。成人さま、こんにちは」
「見可。他には」
おおう。灯可が、聞いたことないような声を出している。怒ってるね……。
「お待たせして、ごめんなさい」
「ん?いいよー」
別にいいのに。俺は何にも急いでないし、困ってない。見可が他に約束があるのなら、今日は灯可にだけ大事なお話をお伝えして帰っても、良かったのかもしれない。
「ああー、成人さま、ありがとうー。ほら、兄上。成人さま、全然怒ってないじゃん。あんなに怒ることないだろ!」
「私が怒っているんだ。母上との約束をあっさり忘れるなんて」
「謝っただろ?もう。兄上、しつこい!」
「お前の所為で、成人さまと遊ぶ時間が減るだろう!」
「何だよ。兄上が成人さまと遊びたいだけじゃん。俺に怒るなよ!」
「お前が約束を忘れなければ」
「はい、そこまで。客間に入るよ」
緋椀が本気で止めた。
「ごめんなさいいぃ」
見可が謝るのが早い。泣き声だけど。うん。鍛えたら強くなれるだろうな。楽しみ。
灯可は、ぷいっと見可の手を離して、俺と手を繋いでお客様用の部屋に入った。
「成人さま。大事なお話が済んだら、私と遊んでいってくださいね」
もちろん!
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