【完結】人形と皇子

かずえ

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第七章 冠婚葬祭

40 お友だちの部屋  成人

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 案内された灯可とうかの部屋は、広い畳の部屋だった。畳の部屋は、どこでも座れるからいいな。灯可とうかが大急ぎで座布団を出してくれたけど、座布団が無くても、お尻が痛くならない。畳は板の間より好き。ふかふかの絨毯敷いたら、板の間もどこでも座れるから一緒だけど、畳の部屋の方が暖かい気がする。
 一条のお屋敷の造りは、俺が離宮に移る前に住んでたお屋敷に似ている。廊下のとこの、日当たりが良いところとか、ぽかぽか暖かくて、座ってるだけで庭が見やすかったりするのが好きだったなあ。
 二階が無いから、今みたいにたくさんの人は住めなかったけど。あのお屋敷が好きだった。俺の、初めてのおうち。壊されて、残念だ。
 でも、今みたいに、たくさんの人と一緒に住むのも楽しくて好きだから、いいか。
 緋色ひいろと住む、俺のおうち。俺の部屋もある、俺のおうち。そこからお出かけして、友だちのおうちに遊びに来た。何だか、すごく嬉しくてにまにましてしまう。ふふ。遊んだら帰るんだ。俺のおうちに。

成人なるひとさま、お待たせしました」

 汗だくのシャツやズボンをお着替えした灯可とうかが、隣に座ってふう、と息を吐く。着替えても、おんなじような白い襟付きの半袖シャツと黒い半ズボンだった。

「急がなくても、いいのに」
「少しでも早く、成人なるひとさまとお話したくて」

 そう言われると嬉しい。

「ありがと」
「いえ、そんな……」

 二人で、何となく、ふふふと笑う。

「それで、今日はどんなご用事だったのですか?」
「あ、うん。あのね」

 あ、いや。まだ見可みかがいない。二人に同時に伝えたいな。

「あー。ええ、と。見可みかも来てから、お話するね」
「私が、先に知ってはいけない話でしょうか」
「んー?んん?」

 先に知ってはいけないことかと言われると、全然そんなことはないけど、何となく二人一緒の方がいいかな、と俺が思っただけ。灯可とうかが先に知りたいなら、先に教えてあげてもいいのかな。うーん。合ってるかが分からない。
 こういう時、誰かに聞いて、こっちだよって言って欲しくなる。いつものお勉強の時みたいに、答え合わせがしたい。青葉あおばに、丸つけして欲しい。
 真剣な灯可とうかの目を見ながら一生懸命考えるけど、どうしたらいいか分からない。

「ええと。その、いいんだけど……。二人に一緒に言おうと思ってて。んー。でも、見可みか来ないかもしれないから、いいのかな……」

 うーん、うーんと唸っていたら、灯可とうかが俺の右手をきゅって握った。

「困らせてしまって、すみません」

 ううん。ちょっと待っててね。今、考えてるから。

「と、いうか」
「ん?」
見可みかが来ないかもしれないって言うのは……?」
「あ、見可みかね。一緒に帰ってきた友だちと、後でねって約束してたから、茉璃まつりとの約束、忘れてるかも」
「……あの、馬鹿っ」

 灯可とうかが怖い顔になって部屋を飛び出して行った。
 あれ?
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