【完結】人形と皇子

かずえ

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第七章 冠婚葬祭

33 もっと、もっと  成人

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 朱実あけみ殿下が、ぐっと俺たちの方へ身を乗り出した。俺を、見ている。ものすごくじっと、見ている。
 …………うん?
 手が、伸びて……。
 ばしっ。
 だいぶ距離があったのに、緋色ひいろに叩き落とされた。

「何してる」
「あ、いや……」

 んん?握手?別に握手くらいするけど?
 俺が一個しかない手を伸ばすと、それも緋色ひいろに戻される。

緋色ひいろ?」
「俺の大事なものに勝手に触んな」
「あ、いや。そうだな、すまない」
「握手くらい、いいのに」

 俺はそう言ってみたんだけど、緋色ひいろのご機嫌は直らなかった。

「お祖母さま、お話は終わりましたか?」

 見可みかが、小さな声で聞いてくる。あ、ごめんね。こっちだけでお話してた。俺はまだ、だんごも全部食べられてないよ。

緋色ひいろ。だんご食べる」
「おう」

 緋色ひいろは俺を抱えたまま、机の方に向きを変えた。……下ろしてくれてもいいんだけど。

「ほほ。見可みか、待たせたの。楽しめたか」
「うん。でも、末良すえよし寝てしまった」
「そうか。赤子は、たくさん遊んで腹がふくれたら眠とうなるものじゃ。お主は大丈夫かの?」
「俺は昼寝なんかしないよ」
「すっかりお兄さんになったのう」
「うん」
「こら、見可みか。はい、と言いなさい」
「よいよい。灯可とうかも楽しんだかの?」
「はい。大変興味深いお話でございました」
「お主にはまだちいと早い。忘れてよい。然るべき時に活用することじゃ」

 灯可とうかは、少しだけ考えて、はいと頷いた。

「そのように致します」
「そうせい。ふむ。ではそろそろいとましようかの?」
「えええ。まだ成人なるひとさまと遊んでない」
「何を言うておる。朝からずっと共におって、この部屋の飾りを作っておったではないか」

 そうだね。今日はたくさん一緒にいたよね。飾り作りは遊びじゃなかった?お仕事?いや違うな。やっぱり遊んだよ、俺たち。いつもよりたくさん一緒にいた。

「もっと一緒でもいいのに」

 そう言ってもらえるのは嬉しい。好きな人とは、たくさん一緒にいたいものだから。見可みかは俺のこと好き?俺も見可みかのこと好きだよ。

「たくさん一緒にいたから嬉しかったはずなのに、もっとたくさん一緒にいたくなるのは何故なんでしょうね」

 灯可とうかも俺のこと好きみたいだ。嬉しい。俺も灯可とうかがとても好きだよ。一緒だね。
 
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