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第七章 冠婚葬祭
15 その手は 成人
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お昼ごはんを食べた後、生松にお仕事を頼まれた。緋色に内緒のお仕事だ。
「成人にしかできない、特別な仕事です」
ふふ。任せて!
なんだか張り切っちゃう。
俺しかできないって、いい言葉だよね。
「殿下をお昼寝させてください」
「ん?」
それが、特別任務?
「とても大切な任務です。殿下は成人にしか甘えませんから。熱を薬で抑えても、結局しんどいのが後にずれただけです。殿下の急ぎの仕事は終わったようなので、少し寝てもらいましょう」
そういえば、緋色の部屋のソファで仕事をしていた三郎と斎は、お昼ご飯に呼ばれて出ていく時に、綺麗に片付けていった。
俺と緋色がお部屋でご飯を食べる時に邪魔になるから片付けたのかと思っていたけど、もうおしまいってことだったんだね。
緋色は、いつもとそんなに違わないように見えた。お昼ご飯も普通に食べた。けどそういえば、トイレに行く以外、ソファからちっとも動こうとしない。あれ寄越せ、これ寄越せ、そこに置いておけ、ここに何々って書いておけ、といつもより指示が多かったのは、動くのが辛かったからか。
「顔色も変わらない?」
「お見事ですよね」
生松は、ちょっと笑う。困ったように笑う。
「人には、しんどいときにはちゃんと言えって仰るのにねえ?」
「ふふ」
つまり、緋色は今日は大分しんどい。
俺は、今日は全然元気だから、緋色によしよしして寝かせてあげよう。
そう思ってた筈なのに、気が付いたら一緒にお布団にいて、俺も寝てた。
あれ?
背中に緋色がいて、俺のお腹に手が回っている。
見えないけれど、寝てるのは分かった。いつもより熱い規則的な息が、首の辺りにかかるから。打撲傷は痛くないかな?一人で寝た方が痛くないだろうに。
お腹に回った手を、きゅと握る。俺の手は一個しかないから一個だけ。
俺より大きな温かい手。
朝の、青葉とのお話を思い出す。
この手は、悲しいをたくさん生み出した手だ。上に重ねた俺の手も。戦場で活躍した人ほど、悲しいをたくさん生んだ。
英雄、と呼ばれるほどのこの手は。
………………。
何だか、鼻の奥がつん、とする。
この手は。
そう、知ってる。
俺に、幸せをたくさんくれた手だ。
今もずっと、幸せをくれる、手だ。
「成人にしかできない、特別な仕事です」
ふふ。任せて!
なんだか張り切っちゃう。
俺しかできないって、いい言葉だよね。
「殿下をお昼寝させてください」
「ん?」
それが、特別任務?
「とても大切な任務です。殿下は成人にしか甘えませんから。熱を薬で抑えても、結局しんどいのが後にずれただけです。殿下の急ぎの仕事は終わったようなので、少し寝てもらいましょう」
そういえば、緋色の部屋のソファで仕事をしていた三郎と斎は、お昼ご飯に呼ばれて出ていく時に、綺麗に片付けていった。
俺と緋色がお部屋でご飯を食べる時に邪魔になるから片付けたのかと思っていたけど、もうおしまいってことだったんだね。
緋色は、いつもとそんなに違わないように見えた。お昼ご飯も普通に食べた。けどそういえば、トイレに行く以外、ソファからちっとも動こうとしない。あれ寄越せ、これ寄越せ、そこに置いておけ、ここに何々って書いておけ、といつもより指示が多かったのは、動くのが辛かったからか。
「顔色も変わらない?」
「お見事ですよね」
生松は、ちょっと笑う。困ったように笑う。
「人には、しんどいときにはちゃんと言えって仰るのにねえ?」
「ふふ」
つまり、緋色は今日は大分しんどい。
俺は、今日は全然元気だから、緋色によしよしして寝かせてあげよう。
そう思ってた筈なのに、気が付いたら一緒にお布団にいて、俺も寝てた。
あれ?
背中に緋色がいて、俺のお腹に手が回っている。
見えないけれど、寝てるのは分かった。いつもより熱い規則的な息が、首の辺りにかかるから。打撲傷は痛くないかな?一人で寝た方が痛くないだろうに。
お腹に回った手を、きゅと握る。俺の手は一個しかないから一個だけ。
俺より大きな温かい手。
朝の、青葉とのお話を思い出す。
この手は、悲しいをたくさん生み出した手だ。上に重ねた俺の手も。戦場で活躍した人ほど、悲しいをたくさん生んだ。
英雄、と呼ばれるほどのこの手は。
………………。
何だか、鼻の奥がつん、とする。
この手は。
そう、知ってる。
俺に、幸せをたくさんくれた手だ。
今もずっと、幸せをくれる、手だ。
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