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第七章 冠婚葬祭
10 一つではなく 成人
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緋色が帰ってきた。お風呂に入ったのかな。出ていった時と違う服で、髪の毛が濡れてて、へろへろだ。
「おかえり?」
「くそ。えらい目にあった」
ただいま、も言わずに俺の部屋のソファに、どかっと座って眉をしかめている。
吉野のことをたくさん喋って、疲れて、大きなクッションにぐったりもたれていた乙羽は、びっくりして目をぱちぱちさせた。まだ残っていた涙が、ぽろりと落ちた。
「殿下。ここか?」
「うるせえ」
「入るぞ」
「入るな、馬鹿」
常陸丸が生松を連れて入ってきた。その後ろから、飲み物や食べ物を持った村次が続く。
あ、俺たち、飲み物を飲むのを忘れていた。乙羽はたくさん泣いたから、水分を取った方がいいと思う。
緋色は村次から受け取った冷たい水を一気に飲んだ。置いたコップに、氷が、からんって残っている。俺、それ欲しい。
手を伸ばしたら、
「成人はこっち」
って、村次に違うコップを渡された。残念。
あ、ミックスジュースだ。やっぱり、これ飲む。
そうだ。ミックスジュースの中に、残った氷を入れたらいいんじゃない?
「一個だけな」
村次が氷を一個入れてくれた。嬉しい。
あれ?さっきまで、悲しいでいっぱいだったのに、嬉しいがやってきた。悲しいのも残ってるけど、嬉しいもここにある。
…………?
「殿下。上着を脱いでください」
「別にいい」
「駄目です。放っておくと熱を持ちますよ」
緋色、怪我をしたのか。
常陸丸が緋色の服を脱がして、こことこことここ、と赤く手形の付いた場所を示した。
うん、大分やられたね……。
「緋色、すまん……」
「常陸丸、お前汗臭い。風呂に入ってこい」
「いや、でも、髪の毛もまだ……」
「成人が拭くからいいんだよ。早く汗を流してこい」
緋色は、しっしっと手を振った。眉をしかめているから、あちこち痛いんだな。
緋色の髪の毛は、俺が拭くよ。いつもしてるから、任せて。
常陸丸は、追い出されて出ていった。乙羽はミックスジュースを飲んで、ぼんやりとクッションにもたれている。
「手酷くやられましたね」
「弱ってたら手加減できないだけって何だありゃ。出鱈目な強さだぞ」
ふふ、と生松は笑う。
「殿下のために、お強くなられたんでしょう?」
「まあ、そうだが」
生松は、軟膏を赤い痣に塗っていく。ちっ、と言って我慢している緋色の後ろに回って、首にかけていた手ぬぐいを取った。
「今日は一本取れるかと思ったのにな」
緋色が俺を見上げて言った。
「残念」
「ああ、残念だ」
残念って言いながら、笑ってた。
「おかえり?」
「くそ。えらい目にあった」
ただいま、も言わずに俺の部屋のソファに、どかっと座って眉をしかめている。
吉野のことをたくさん喋って、疲れて、大きなクッションにぐったりもたれていた乙羽は、びっくりして目をぱちぱちさせた。まだ残っていた涙が、ぽろりと落ちた。
「殿下。ここか?」
「うるせえ」
「入るぞ」
「入るな、馬鹿」
常陸丸が生松を連れて入ってきた。その後ろから、飲み物や食べ物を持った村次が続く。
あ、俺たち、飲み物を飲むのを忘れていた。乙羽はたくさん泣いたから、水分を取った方がいいと思う。
緋色は村次から受け取った冷たい水を一気に飲んだ。置いたコップに、氷が、からんって残っている。俺、それ欲しい。
手を伸ばしたら、
「成人はこっち」
って、村次に違うコップを渡された。残念。
あ、ミックスジュースだ。やっぱり、これ飲む。
そうだ。ミックスジュースの中に、残った氷を入れたらいいんじゃない?
「一個だけな」
村次が氷を一個入れてくれた。嬉しい。
あれ?さっきまで、悲しいでいっぱいだったのに、嬉しいがやってきた。悲しいのも残ってるけど、嬉しいもここにある。
…………?
「殿下。上着を脱いでください」
「別にいい」
「駄目です。放っておくと熱を持ちますよ」
緋色、怪我をしたのか。
常陸丸が緋色の服を脱がして、こことこことここ、と赤く手形の付いた場所を示した。
うん、大分やられたね……。
「緋色、すまん……」
「常陸丸、お前汗臭い。風呂に入ってこい」
「いや、でも、髪の毛もまだ……」
「成人が拭くからいいんだよ。早く汗を流してこい」
緋色は、しっしっと手を振った。眉をしかめているから、あちこち痛いんだな。
緋色の髪の毛は、俺が拭くよ。いつもしてるから、任せて。
常陸丸は、追い出されて出ていった。乙羽はミックスジュースを飲んで、ぼんやりとクッションにもたれている。
「手酷くやられましたね」
「弱ってたら手加減できないだけって何だありゃ。出鱈目な強さだぞ」
ふふ、と生松は笑う。
「殿下のために、お強くなられたんでしょう?」
「まあ、そうだが」
生松は、軟膏を赤い痣に塗っていく。ちっ、と言って我慢している緋色の後ろに回って、首にかけていた手ぬぐいを取った。
「今日は一本取れるかと思ったのにな」
緋色が俺を見上げて言った。
「残念」
「ああ、残念だ」
残念って言いながら、笑ってた。
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