【完結】人形と皇子

かずえ

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第七章 冠婚葬祭

7 相談?  成人

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 食堂は空いていた。もう時間が遅い。いつもの朝ご飯の時間が過ぎてしまっている。
 乙羽おとわが、一人でぼんやりと座っていた。目が腫れていて真っ赤になっている。俺の座椅子に座っていた。

「座椅子、借りてるぞ」
「いいよー」

 常陸丸ひたちまるが言った。
 食堂の座椅子は、俺とさいがいつも使っているけど、誰が使ってもいいと思う。俺はもう元気だし、食べながら寝ちゃうこともほとんど無くなったので、使っていないことも多い。さいは、俺より頭が痛くなることが多くて、急にふらふらすることがあるから、まだいっつも使ってる。

「よし、乙羽おとわ成人なるひとと一緒に飯を食おう」

 乙羽おとわは返事をしない。

「あー。なんだ、その。悪かったな」

 緋色ひいろ常陸丸ひたちまるに謝った。俺を、乙羽おとわの横に座らせてくれる。皆と同じ座布団に座ると、大人になった気分。あ、抱っこで移動してきたのは、あれだ。その、ちょっとそういう気分だっただけ。体もちょっと怠かったし。うん。
 大人は抱っこで移動しないな。うーん。でも抱っこは、大きくなってもしてほしい。緋色ひいろの抱っこは大好き。抱っこしてもらえなくなるなら、大人にならなくてもいいかな。
 いや、でも、免許取ったりお酒を飲んだり、大人にならないとできないことはたくさんあるから、やっぱり大人にはなりたいかも。

「別に。殿下を起こしに行くくらい、いつものことなんで。それに、離宮ここなら一人で置いてても安心ですから」
「そうか」
「はい」

 常陸丸ひたちまるは、俺と反対側の乙羽おとわの隣に座る。

乙羽おとわ成人なるひとと飯を食おう」

 もう一度、言った。村次むらつぐが雑炊を持ってきてくれる。蓋を開けると、湯気がもうもうと出た。
 いや、無理。熱い。

「熱い」
「出来立てなんだから、仕方ないだろ」

 ん?

「何で俺も雑炊?」
「はは。好きだろ?」
「好きだけど……」

 大きいし、乙羽おとわと半分こかな。

乙羽おとわ、半分こしよ。俺がふーふーしてあげる」

 小さい器に取り分けて乙羽おとわの前に置く。うーん。こっち見ないし、お返事しない。
 乙羽おとわの手を持って器に触れさせたら、やっとこっちを向いた。

「熱い……」
「うん。ふーふーして食べよ」
「何で?」
「うーん。食べないと生きられないから」
「生きないと駄目?」
「たぶん?」
「いや、生きないと駄目だろ。たぶんって何だ、たぶんって」

 常陸丸ひたちまるが言った。

「俺は緋色ひいろと長生きする約束したけど、乙羽おとわの約束は知らないから」
「してるしてる。俺と約束してる」
「じゃあ、生きなきゃ駄目じゃない?」
「そう言ってるだろ」
「じゃあ、食べなきゃ駄目だなあ」

 乙羽おとわは、ぼんやりと雑炊の器を見た。

「私は吉野よしのに生かしてもらったから、吉野よしのがいないならもういいんじゃない?」
「そうなの?」
「んな訳ないだろ。成人なるひと、お前、頼りになるんだかならないんだか……」

 常陸丸ひたちまるが頭を抱えた。


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