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第六章 家族と暮らす
139 憧れの人 成人
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緋色が、灯可にもらったたこ焼きを一つ、半分に割って冷ましてくれている。
あ、そうだ。
「どうした?」
いいことを思いついて立ち上がると、緋色が見上げてきた。緋色を見下ろすって何だか珍しい。ちょっと不思議な気分。
「いいこと考えた」
「そうか」
うんうん、と頷いて何も乗っていないお皿を一枚もらう。緋色のお皿から、割ってあるたこ焼きをもらって、見可の所へ。
「見可、一つちょうだい」
「え?もう無いです」
「違う」
お皿ごと欲しいのじゃなくて。
「一個だけ」
「ああ。一個?一個だけですか?」
「うん」
皆のを味見したいから、一個ずつ。
見可のたこ焼きはちゃんと丸い。すごいなあ、上手だ。
「上手!」
「ありがとうございます!」
声が大きくておしゃべりで、移動するときはいっつも走ってて、思いつきで動いたりして怒られるのに、細かい仕事が得意なんだな。面白い。こういう人のこと、器用って言うんだったっけ。うん、見可は器用。で、反対に細かい仕事が苦手な人は不器用って言うから、灯可は不器用。でも、何回も練習してできるようになっちゃいそうだなあ。灯可は頑張り屋さんだから。
「半助の作ったの、一つちょうだい」
「まだあるから、一皿持ってってもええよ」
半助が焼いたたこ焼きは、誕生月の壱臣に渡した後の残りのお皿が、置きっぱなしになっている。半助は壱臣に渡したらそれでいいから、配ってないんだな。
二人は、二人で一皿を食べていた。半助がお皿を持って、口を開けている。壱臣が持てば、手が一つ空いて自分で食べられるのにねえ。
壱臣が一皿くれようとする。あ、そんなにいらないの。
「一個だけでいい」
「そうなん?」
「皆のを味見する」
「そうか。そりゃええなあ。一皿ずつやと食べきらんもんな。はい、どうぞ」
乗せてくれたたこ焼きは、料理人たちが作るのとおんなじくらい丸くて、全体の茶色の焦げ目もいい感じだった。
すげー。半助、すげー。
俺なんて、ついもう少し焼こうと思って焦げ目が付きすぎちゃうのに。
「すっごく上手」
「せやろ?うちもびっくりしたわ」
壱臣が言って、半助がちょっと笑った。珍しい。
「半助、できないことある?」
「ようけあるよ」
「ないんちゃう?」
あれ?半助の答えと壱臣の答えが違った。
俺はね、半助にできないことないと思う。
だから、半助が何でもするから、俺も手が一個でも、何でもできるんじゃないかと思えるんだ。
やっぱり、半助はすげー。
あ、そうだ。
「どうした?」
いいことを思いついて立ち上がると、緋色が見上げてきた。緋色を見下ろすって何だか珍しい。ちょっと不思議な気分。
「いいこと考えた」
「そうか」
うんうん、と頷いて何も乗っていないお皿を一枚もらう。緋色のお皿から、割ってあるたこ焼きをもらって、見可の所へ。
「見可、一つちょうだい」
「え?もう無いです」
「違う」
お皿ごと欲しいのじゃなくて。
「一個だけ」
「ああ。一個?一個だけですか?」
「うん」
皆のを味見したいから、一個ずつ。
見可のたこ焼きはちゃんと丸い。すごいなあ、上手だ。
「上手!」
「ありがとうございます!」
声が大きくておしゃべりで、移動するときはいっつも走ってて、思いつきで動いたりして怒られるのに、細かい仕事が得意なんだな。面白い。こういう人のこと、器用って言うんだったっけ。うん、見可は器用。で、反対に細かい仕事が苦手な人は不器用って言うから、灯可は不器用。でも、何回も練習してできるようになっちゃいそうだなあ。灯可は頑張り屋さんだから。
「半助の作ったの、一つちょうだい」
「まだあるから、一皿持ってってもええよ」
半助が焼いたたこ焼きは、誕生月の壱臣に渡した後の残りのお皿が、置きっぱなしになっている。半助は壱臣に渡したらそれでいいから、配ってないんだな。
二人は、二人で一皿を食べていた。半助がお皿を持って、口を開けている。壱臣が持てば、手が一つ空いて自分で食べられるのにねえ。
壱臣が一皿くれようとする。あ、そんなにいらないの。
「一個だけでいい」
「そうなん?」
「皆のを味見する」
「そうか。そりゃええなあ。一皿ずつやと食べきらんもんな。はい、どうぞ」
乗せてくれたたこ焼きは、料理人たちが作るのとおんなじくらい丸くて、全体の茶色の焦げ目もいい感じだった。
すげー。半助、すげー。
俺なんて、ついもう少し焼こうと思って焦げ目が付きすぎちゃうのに。
「すっごく上手」
「せやろ?うちもびっくりしたわ」
壱臣が言って、半助がちょっと笑った。珍しい。
「半助、できないことある?」
「ようけあるよ」
「ないんちゃう?」
あれ?半助の答えと壱臣の答えが違った。
俺はね、半助にできないことないと思う。
だから、半助が何でもするから、俺も手が一個でも、何でもできるんじゃないかと思えるんだ。
やっぱり、半助はすげー。
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