【完結】人形と皇子

かずえ

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第六章 家族と暮らす

136 歩みより  緋色

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「何やってんすか?入りますよ」

 食堂の前で常陸丸ひたちまる乙羽おとわに捕まる。
 入りたくない。
 何で、自分のうちで、こんな目に合わなきゃならんのだ。誰だ、あいつ呼んだの。……俺だな。
 早くから来ていることは聞いていたから、なるべくぎりぎりまで食堂に入らずにいたが、まあいつまでもそうしている訳にはいかない。成人なるひとが主役たちを連れてくるまでに、食堂で皆が待っている状態にしておかないとな。

緋色ひいろ殿下!」

 渋々、食堂へと足を踏み入れると、奥の方に陣取っていた見可みかが飛んでくる。あんな奥で席を取るとは珍しい。
 ああ。
 反対側の端の席を見て納得する。
 朱実あけみから離れて座ったのか。見可みかの本能的なものか?やるな。
 お、しっかり止まって包拳礼をした。よくやった、と頭を撫でそうになってとどまる。折角、しっかりとした礼をしたのだ。こちらも応えねばな。

「お招き頂き、ありがとうございます」
見可みか、よく来たな。礼は受けたぞ」
「はい!」
灯可とうか作治さくじも。よく来た」
「お招き頂き、ありがとうございます」
「本日もお世話になります」
「おう」

 見可みかが目を輝かせて、こちらを見ている。そういえば、今日は。

「焼くのか?」
「はい!」
「火傷すんなよ」
「もう大丈夫です!」

 もう、ってことは、練習で何度かやっちまったな。ま、誰も騒いでなかったから、大したことではないんだろう。
 
「楽しみにしてる」
緋色ひいろ殿下も俺の焼いたの食べますか?」

 見可みかの焼くたこ焼きか……。

「まずは緋椀ひまりに渡せ。作治さくじにもやるのだろう?余ったら考えよう」

 うん。現物を見ないと、こいつのは怪しい。灯可とうかなら、形になっていそうだが。

「私も焼きます」
「そうか。楽しめ」
「はい」

 三人が席へ戻っていく。家の者たちには挨拶は不要と言ってあるので、挨拶が必要なのはあと、一人だけ。

緋色ひいろ

 はあ。
 無視したら……。
 くそ、常陸丸ひたちまるが範囲内にいる。ちゃんとしないと、手も口も出すやつだ、あれ。
 昨夜も念押しされた。

「俺だって腹は立ってましたけどね。殿下も、知らん顔を続け過ぎですよ。あちらが何とかしようとしているのなら、こちらもそれなりに応えなきゃ」
「何とかしようとしてるのか?」
「話しかけてきたり、誕生日会に参加したいと言ったりするのは、歩みよりでしょうよ?」
「いらねえけど……」
「兄弟なんですから。どうしたって、顔を会わせるなら、どこかでちゃんと話をしなきゃ駄目じゃないっすか?」
「…………分かった」

 つまり、今がその時な訳だ。
 仕方なく振り向く。

「本当に来るとは思わなかったよ、朱実あけみ
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