【完結】人形と皇子

第六章 家族と暮らす

130 顔が似てる人たちも家族でした 成人

「ええ、と。こんにちは、皇太子殿下」

　とりあえず、包拳礼の形を取る。ううーん、引っ張った左腕が痛い。

「ああ、座って」

　その言葉に礼を解いて、勧められたソファに座る。
　何でこうなったのかなー。

「確実に聞いておきたいことがあってね。私たちは手紙では、なかなか分かり合えない間柄だろう？」

　うーん。まあ、そうね。
　皇太子殿下のお手紙は難しい。俺しか読んじゃいけないから、辞書で調べて繋げても分からない時は、予想するしかない。俺はいつも、答えが欲しいなーって思ってるよ。問題を解いたら答え合わせをしたい。分からないままだと、合ってるかな、どうかな、といつまでも気になるから。
　でも、皇太子殿下は俺のお手紙は分かるでしょ？
　お茶が目の前に置かれたので、とりあえず蓋を開ける。
　うわあ、絶対に熱いやつじゃん。湯気がすごい。
　ぱたぱたと湯気をあおぐ。

「氷でも入れるかい？」
「んーん。熱いお茶に氷を入れると美味しくない」
「へえ。そんなことも言うようになったのか」

　首を傾げていると、にっこりと笑われる。あ、皇族の仮面。やあね、それ。

「いや。まあいい。誕生日会の参加資格のことだが」
「あ、はい」

　おお。皇太子殿下が、話したいことをすぐに言うのは珍しい。いつも緋色ひいろに、本題は何だ、と言われるまで色々と別のことをしゃべってる印象しかなかった。

「私は、家族だと思うんだ」
「ん？」

　皇太子殿下が家族？誰の？

「誕生日会は、家族と友だちとやるんだろう？」
「はい」
「家族と友だちというのは、お前から見ての家族と友だちだな」
「んー？」

　うーん。まあ、そうかな。緋色ひいろの友だちでもいいよ。朱可しゅかと茉璃まつりは緋色ひいろの友だちだった。
　他の人が連れてきたい友だちがいたら、連れてきても別にいい。いっぱいで入れなくなったら困るかな？あ、でも、連れてきてもいいですかって聞かれたことないなあ。俺が灯可とうかを誘ったのが、離宮の仲間以外で初めてだったな。何か、いいな。友だち、誘っちゃったよ。

「笑っていないで、答えなさい」
「んん？ああ、えーと、緋色ひいろの友だちも来てた。えーと、来てました」
「ふむ。お前のだけでなく、緋色ひいろの家族と友だちでもよいということなら、私は緋色ひいろの家族だから参加できるな？」
「ん？んん？」

　家族？一緒に住んでる好きな人じゃないけど？いや、何かあったような……。
　あ。
　常陸丸ひたちまると力丸りきまると青葉あおばのやつ？顔が似てる人同士みたいな。母上とかの。
　緋色ひいろと皇太子殿下、ちょっとだけ似てるもんね。そうかあ、家族かあ。
　それなら。

「緋色ひいろがいいよって言ったら、いいよー」