【完結】人形と皇子

かずえ

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第六章 家族と暮らす

123 たこ焼きは出来立てが美味しい  成人

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「成る程。これがたこ焼き……」
「想像とはずいぶん違いましたねえ」

 今月の誕生日会のおやつもたこ焼き。もちろん見可みかのお願いでそうなった。他の人も賛成だった。たこ焼きは何回食べても美味しいし、自分で焼くのも楽しいから、ずっとたこ焼きになるかも。甘くなくて緋色ひいろもいっぱい食べられるから、ばっちりだ。
 最初に広末ひろすえが焼いてくれて、見可みかはまた一番前で、すげー、すげーって大喜びしてる。その横で朱可しゅか茉璃まつりが二人でお話してた。俺も前にいるのは、二回目に焼くから。今月は、鼓与ことと二人で焼くんだ。

「想像と違ったの?」
「ええ、成人なるひとさま。見可みかの説明では、手妻てづまで作る恐ろしげな食べ物でしたよ」
「そうそう。白い液体の中に蛸の足を入れて棒でつつきながら焼けば、いつまでも口の中が火傷しそうに熱いのに美味しい食べ物が出来上がるのですって」

 うん。まあ合ってるんじゃない?

灯可とうかに聞いても、焼くと丸くなるから可愛いですよ、と付け足してくれただけで、いつもみたいに全然違うと言わないものだから、一体どんなものかとどきどきしてたのですよ」
「でもまあ、あの料理人の手捌きを見れば、手妻と言うのも分かりますね」
広末ひろすえ、早いから。壱臣いちおみも」
「いや全く素晴らしい」

 ふふ。うちの料理人はすごい。
 あ、俺、灯可とうかがお土産に持ってくるおやつも美味しくて好きだよ。

「いつもお土産ありがとう。美味しい」

 お礼を言ったら、二人ともにこにこ笑った。

「伝えておきますね。そう言ってもらえると、うちの料理人も喜びます」
「私たちこそ、いつもお土産を頂いてありがとうございます。初めてのお土産の一口カステラは、使用人たちも皆で分けあって、美味しい美味しいと大騒ぎだったんですよ」
「え、あ、ありがとうございます!」

 誕生日だから、焼く側じゃなく近くにいた村次むらつぐが、お礼を言って頭を下げた。

「あら?」
「一口カステラは、村次むらつぐが作った」
「まああ、若いのに素晴らしいわ。本当に美味しかったのよ。食べやすいのもいいわね」
「まだ調理師の免許も持っていないんですけど、食べて頂いて嬉しいです」
「そうなの?あんなに美味しいのに?免許の取得ってそんなに難しいの?」
「いえ、年齢がまだ。あ、でももうすぐ試験を受けにいきます」
「まああ、応援してるわ。きっと受かるわよ。あんなに美味しいんだもの」
「そうだな。あの者が師匠なんだろう?」

 朱可しゅかが見たのは、すごい早さで綺麗な形のたこ焼きをどんどん仕上げている広末ひろすえだ。

「はい」
「大変そうだ」

 そうかも。広末ひろすえってすごいから、こうやってするんだぞって教えてもらっても、すぐにはできないことが多いって、村次むらつぐはたまにぶつぶつ言ってる。もちろん、広末ひろすえがいない時に。
 誰でもできる訳じゃないんだよお、あんたは天才なんだーって叫んでる時もある。もちろん、広末ひろすえがいない時に。
 壱臣いちおみさんもできちゃうんだよなあ、とか、色々言ってるけど、俺はやっぱり村次むらつぐもすごいと思うんだよね。
 応援が増えたね。
 村次むらつぐの試験、楽しみだなあ。
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