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第六章 家族と暮らす
109 大切な人の大切に思う人 成人
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「はは。馬鹿馬鹿しい」
皇太子殿下の顔が、少しいつもの顔と違う風になった。
「私がそうしたいと本気で思ったら、お前の許可など取りはしないさ。今、生きていられるのは私の温情だ」
「違うよ」
「は?」
それは違う。
「俺が生きていられるのは緋色がいるから」
「いつでもお前を守ると?今、ここにはいないのに?」
「うん、そう。近くにいなくても、緋色の言葉が俺を護る。俺は緋色と、長く一緒に生きると誓いを立てたから」
「今ここで、すぐにでも私の望みを叶えようか?」
笑顔の消えた皇太子殿下が俺を見下ろしている。
殺気は感じない。
本気じゃない。
「俺は死なないために何でもするよ。こうして赤璃さまを、盾にだってする」
「へえ?」
「喜んで盾になるわ」
赤璃さまが俺をもっと自分の腕の中に引き寄せた。女の人に抱っこされるのは、柔らかくて気持ちいいから好き。細い乙羽でもふわふわなのは何でなのかな。また、青葉に聞いてみよう。
「荘重。入室の許可は与えていない」
じいやが、ゆらりと俺と赤璃さまの後ろに立って、皇太子殿下の後ろにも知らない人が立った。
「影に入室許可とは……」
じいやが少し笑う。楽しそうね。相手の影は臨戦態勢だ。
皇太子殿下から殺気は感じないのに。でも、命じるかもしれない。本気じゃなくても、口に出せば命令になる。皇太子殿下の命令は遂行される。殿下に殺気は感じなくても。
「もう、影ではないのだろう?」
「あなたの影では無くなりました」
「不敬だな」
「私は私の主を守ります」
「は。どいつもこいつも。これが?この人形がお前の?」
「ご納得頂けないのなら、主の伴侶を命に変えてもお守りします、と言い換えても?」
ふん、と皇太子殿下が緋色みたいに顔をそらした。
「で?本当にやられるので?」
無理でしょ。じいやが出てきた。
「いざというときには、お前が手を下すのか?」
「手を下しますと言えば、成人さまへの訳の分からない警戒を解いて頂けると言うのでしたら、そのように述べますが」
「それは、口だけと言っているのと同義だ」
「そんな事態は起こらないと知っておりますので」
「何故だ」
「知らないのは、あなただけ」
赤璃さまが叫んだ。
「なるは緋色殿下の大切な人。私は緋色殿下を大切な従兄弟だと思っている。大切な人の大切に思う人を大切にするのは当たり前じゃない。だから、私も両陛下も、常陸丸や乙羽やその家族も、私の家族も、なるを大切にするんだわ。荘重がなるを大切に思っているから、一ノ瀬だって皆、なるを大切にする。あなたは、私のことを大切に思ってくれているのではないの?緋色殿下のことは?もし少しでも大切に思ってくれているのなら、その私や緋色殿下の大切な人を、どうして私たちの前から消そうとするの?」
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「違うよ」
「は?」
それは違う。
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「うん、そう。近くにいなくても、緋色の言葉が俺を護る。俺は緋色と、長く一緒に生きると誓いを立てたから」
「今ここで、すぐにでも私の望みを叶えようか?」
笑顔の消えた皇太子殿下が俺を見下ろしている。
殺気は感じない。
本気じゃない。
「俺は死なないために何でもするよ。こうして赤璃さまを、盾にだってする」
「へえ?」
「喜んで盾になるわ」
赤璃さまが俺をもっと自分の腕の中に引き寄せた。女の人に抱っこされるのは、柔らかくて気持ちいいから好き。細い乙羽でもふわふわなのは何でなのかな。また、青葉に聞いてみよう。
「荘重。入室の許可は与えていない」
じいやが、ゆらりと俺と赤璃さまの後ろに立って、皇太子殿下の後ろにも知らない人が立った。
「影に入室許可とは……」
じいやが少し笑う。楽しそうね。相手の影は臨戦態勢だ。
皇太子殿下から殺気は感じないのに。でも、命じるかもしれない。本気じゃなくても、口に出せば命令になる。皇太子殿下の命令は遂行される。殿下に殺気は感じなくても。
「もう、影ではないのだろう?」
「あなたの影では無くなりました」
「不敬だな」
「私は私の主を守ります」
「は。どいつもこいつも。これが?この人形がお前の?」
「ご納得頂けないのなら、主の伴侶を命に変えてもお守りします、と言い換えても?」
ふん、と皇太子殿下が緋色みたいに顔をそらした。
「で?本当にやられるので?」
無理でしょ。じいやが出てきた。
「いざというときには、お前が手を下すのか?」
「手を下しますと言えば、成人さまへの訳の分からない警戒を解いて頂けると言うのでしたら、そのように述べますが」
「それは、口だけと言っているのと同義だ」
「そんな事態は起こらないと知っておりますので」
「何故だ」
「知らないのは、あなただけ」
赤璃さまが叫んだ。
「なるは緋色殿下の大切な人。私は緋色殿下を大切な従兄弟だと思っている。大切な人の大切に思う人を大切にするのは当たり前じゃない。だから、私も両陛下も、常陸丸や乙羽やその家族も、私の家族も、なるを大切にするんだわ。荘重がなるを大切に思っているから、一ノ瀬だって皆、なるを大切にする。あなたは、私のことを大切に思ってくれているのではないの?緋色殿下のことは?もし少しでも大切に思ってくれているのなら、その私や緋色殿下の大切な人を、どうして私たちの前から消そうとするの?」
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