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第六章 家族と暮らす
77 我が家が一番 緋色
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「あれー?今日は夕方まで戻らないんじゃなかったんですか?」
父と母との会食を終えて、真っ直ぐ離宮に帰った。成人を抱いたまま移動する俺を誰も止めなかったから、あっという間に家に着く。
早足で外を歩いているうちに、少しだけ頭は冷えた。成人は何も言わず、俺の腕の中で景色を見ていた。後ろから常陸丸と半助が付いてきていたが、こちらも何も言わなかった。
茶をもらおうと厨房に行くと、食事中の広末に驚かれた。珍しく村次が休みらしい。皿を洗っていた壱臣も、とんぼ返りとなった半助を見て驚いている。食事をしに離宮へ戻った半助と共に食べて、片付けを引き受けていたのだろう。
「部屋に茶を持っていく」
「はいはい。なる坊のもいりますか?」
「ああ」
頷いてから思い出した。
「おやつ無しでいい」
「ええ?」
俺の言葉に、それまで黙って腕の中にいた成人が抗議の声を上げる。
「ただでさえ多かったってのに、苺の後でアイスクリームを出しやがった」
「ははあ。なる坊、アイスクリーム食べれたのか?ちょっと来い。お腹痛くないか」
箸を置いた広末が手招きするので、下におろした。
素直に広末の側に歩いていく様子を眺める。動けないほど腹一杯って訳ではなさそうだ。いつの間にか、思ったより食べられるようになっていたんだな。
「ははは。お腹がぽっこり出てるぞ。苦しいだろ」
「大丈夫」
「そうかそうか」
成人の薄い腹を服の上から撫でた広末が、成人を隣の椅子へ座らせる。
「殿下も、まずは一杯飲んで行きませんか?」
皿洗いの手を止めて、先ほど注文した温かい茶を淹れてくれていた壱臣が、机に茶を置いた。
邪魔にならないように折り畳んで置いてあったパイプ椅子を出してくれたことに甘えて、腰を落ち着ける。淹れたての熱い茶は、好みの香ばしい香りを漂わせていてほっとした。
城で出された高級茶葉より少し劣る品らしいが、こちらの方が好みだ。子どもや病人がたくさん飲んでも体に負担を掛けない品、という基準で選ばれているらしいが、その中でも俺の好みの味を選んでくる所が素晴らしい。
「で、どんなもん食べてきた?」
「えーと、ご飯とお味噌汁と、おかずが四つあって……」
「四つ?そりゃ多いな。大変だったろ」
「緋色が選んでくれた」
「そうかそうか」
「ご飯もいつもとおんなじくらいに見えたけど、減らなくて」
「そうかあ。茶碗がでかかったかな」
「お肉、辛くって」
「殿下に避けてもらわなかったのか?」
「避けてた。でも、ちょっと味見」
「ははは。いいぞ、その挑戦する気持ち。自分で食べてみねえと分からねえもんな」
「うん。でも、辛かった」
「また今度、辛い味の練習もしてみるか?」
「んー。甘いのが好き」
「ははは。知ってる知ってる」
成人と広末の会話を聞きながら、好みの茶を飲む。
ああ、やっぱりうちが一番だな。
父と母との会食を終えて、真っ直ぐ離宮に帰った。成人を抱いたまま移動する俺を誰も止めなかったから、あっという間に家に着く。
早足で外を歩いているうちに、少しだけ頭は冷えた。成人は何も言わず、俺の腕の中で景色を見ていた。後ろから常陸丸と半助が付いてきていたが、こちらも何も言わなかった。
茶をもらおうと厨房に行くと、食事中の広末に驚かれた。珍しく村次が休みらしい。皿を洗っていた壱臣も、とんぼ返りとなった半助を見て驚いている。食事をしに離宮へ戻った半助と共に食べて、片付けを引き受けていたのだろう。
「部屋に茶を持っていく」
「はいはい。なる坊のもいりますか?」
「ああ」
頷いてから思い出した。
「おやつ無しでいい」
「ええ?」
俺の言葉に、それまで黙って腕の中にいた成人が抗議の声を上げる。
「ただでさえ多かったってのに、苺の後でアイスクリームを出しやがった」
「ははあ。なる坊、アイスクリーム食べれたのか?ちょっと来い。お腹痛くないか」
箸を置いた広末が手招きするので、下におろした。
素直に広末の側に歩いていく様子を眺める。動けないほど腹一杯って訳ではなさそうだ。いつの間にか、思ったより食べられるようになっていたんだな。
「ははは。お腹がぽっこり出てるぞ。苦しいだろ」
「大丈夫」
「そうかそうか」
成人の薄い腹を服の上から撫でた広末が、成人を隣の椅子へ座らせる。
「殿下も、まずは一杯飲んで行きませんか?」
皿洗いの手を止めて、先ほど注文した温かい茶を淹れてくれていた壱臣が、机に茶を置いた。
邪魔にならないように折り畳んで置いてあったパイプ椅子を出してくれたことに甘えて、腰を落ち着ける。淹れたての熱い茶は、好みの香ばしい香りを漂わせていてほっとした。
城で出された高級茶葉より少し劣る品らしいが、こちらの方が好みだ。子どもや病人がたくさん飲んでも体に負担を掛けない品、という基準で選ばれているらしいが、その中でも俺の好みの味を選んでくる所が素晴らしい。
「で、どんなもん食べてきた?」
「えーと、ご飯とお味噌汁と、おかずが四つあって……」
「四つ?そりゃ多いな。大変だったろ」
「緋色が選んでくれた」
「そうかそうか」
「ご飯もいつもとおんなじくらいに見えたけど、減らなくて」
「そうかあ。茶碗がでかかったかな」
「お肉、辛くって」
「殿下に避けてもらわなかったのか?」
「避けてた。でも、ちょっと味見」
「ははは。いいぞ、その挑戦する気持ち。自分で食べてみねえと分からねえもんな」
「うん。でも、辛かった」
「また今度、辛い味の練習もしてみるか?」
「んー。甘いのが好き」
「ははは。知ってる知ってる」
成人と広末の会話を聞きながら、好みの茶を飲む。
ああ、やっぱりうちが一番だな。
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