【完結】人形と皇子

かずえ

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第六章 家族と暮らす

46 ただいま  成人

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「なるー。久しぶり!」
赤璃あかりさま。こんにちは」

 旅行から帰ってきた次の日。早速、赤璃あかりさまに会いに来た。旅行中に、お手紙が届いたからね。すぐに会いたい。早く旅行から帰って会いに来てって書いてあった。赤ちゃんも待ってるよって言われたら、嬉しくて嬉しくて、手紙を読みながらにまにましてたみたい。緋色ひいろが、何書いてあるんだ?って覗いてた。
 お手紙のお返事も出したよ。九鬼くきのとこの町をうろうろして、お手紙を書くための便せんと封筒を買ってきた。綺麗なのが色々あったから、選ぶのが大変だった。
 散々迷って金魚の模様のを買ったら、そうだと思った、って緋色ひいろに笑われた。むう。俺はいつも金魚の模様ばっかり選んでる訳じゃないぞ。たぶん。
 お泊まりしてたお屋敷でお手紙のお返事を書いて緋色ひいろに渡したら、赤璃あかりさまに届くようにしてくれたらしい。
 先触れなんていらない、ってその時もらったお手紙には書いてあったけど、赤ちゃんがいたらお母さんは本当に大変だから、ちゃんと先触れを出してから来たよ。すぐにおいで、って返事があっという間に届いたから、大急ぎで車で来た。

「お手紙、届いたわよ。ありがとうね。とても上手に書けるようになったのね」
「えへへ」
 
 赤璃あかりさまに、ぎゅって抱っこしてもらいながら嬉しくなった。赤璃あかりさま、赤ちゃんの匂いがする。少し甘い良い匂い。好きだなあ。末良すえよしが離宮に住んでた時は、しょっちゅう会いにいって匂いを嗅いでた。今も、末良すえよしを抱っこしたらまずは匂いを嗅いでしまう。甘い匂いは段々しなくなってきて、ちょっと残念。
 お手紙は練習してる。青葉あおばとやり取りしたり、緋色ひいろにも書いたりする。文を考えて文字を書くのは難しい。でも、書くと必ずお返事がもらえるから、頑張って書いている。お手紙をもらうのは大好き。青葉あおば青葉あおばの文字で、緋色ひいろ緋色ひいろの文字で書いてあって、何だか嬉しいんだ。赤璃あかりさまからもらったお手紙も、帰ってきて宝箱に入れた。

「あー、俺もいるんだが?」
緋色ひいろ殿下、おかえり。やっと甥っ子に会いに来てくれたのね」
成人なるひとが立ち入り禁止の場所に、俺が一人で来るわけないだろう?」

 え?俺って立ち入り禁止だったの?どこに?ここ?
 びっくりして緋色ひいろを振り返ると、赤璃あかりさまが溜め息を吐きながら俺から手を離した。

「まずは朱音あかねに会ってやって」

 赤ちゃん!朱音あかねって言うんだな。会いたい!
 扉の前に常陸丸ひたちまる半助はんすけを置いて、お土産の紙袋を持ったまま部屋の奥へと進んだ。
 
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