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第五章 それは日々の話
189 福笑い 成人
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美鶴の目の前に、大きな歪んだ丸を描いた紙が置かれる。
「いーち、にーい、さーん……」
見可と鶴来が数を数え始めた。美鶴は、じいっと紙を見ながら、その上に目や鼻や口を置いてみている。ちゃんと置いても、変な顔だなあ。
「じゅう!」
二人が言うと、灯可が美鶴の後ろに立って目の上に布をまいた。見可と鶴来が、紙の上の目と鼻と口をどかした。
「目だよ」
鶴来が手にした片目を、美鶴の手に握らせる。美鶴は両手で持って、形を確かめた。指で縁をなぞってから、よし、と呟いて紙の上に置く。
「あ」
紙の真ん中の、本当は鼻がある辺りに目が一つ置かれて、思わず声が出る。
「成人さま。しー」
灯可が小声で言って、人差し指を口に当てた。あ、そうか。口を出したら駄目なんだ。目隠しをして、顔を作る遊びか!見可が、口を手で押さえて、うっくっくっ、と笑っている。鶴来は、楽しそうな顔でまた、美鶴の手に、目を握らせた。
「もう一個、目だよ」
美鶴は、真剣な顔で目の形を小さな手でなぞり、また紙の上に乗せる。真ん中に置いた目を手で確認して横に置いたので、今置いた目は、顔の輪郭からはみ出してしまった。
見可は、肩を震わせて笑っている。声を出さないように頑張ってるみたい。鶴来も、笑いを堪えながら鼻を手渡す。
「鼻よね?」
「うん」
笑いを堪える鶴来が、何にも言わずに鼻を握らせたから、美鶴が手の中の鼻をなぞりながら聞いてきた。俺が答えると、目の下にくっつくように置く。ますますおかしな顔になってきた。横を見ると灯可も、くっくっくって笑い始めていた。
最後に鼻の下のだいぶ離れた場所、もちろん輪郭に入っていない所に口を置いて完成。
「できた」
美鶴が目の布を外しているうちに、あーっはっはっはっは、と見可が笑い声を上げた。鶴来と灯可も笑っている。布を外した美鶴も、
「なあに、これー」
と、笑い出した。輪郭の中に入らなかった片目と口。きちんと配置しても面白い顔なのに、はみ出してたら、そりゃおかしなことになるよね。
「ふふっ。ふふふ」
見れば見るほど、変な顔だ。
皆で大笑い。
そうか、だから福笑いって名前なのか。笑っちゃうから?笑いの前についている福ってなんだろ?また、調べてみよう。
「次、成人さまの順番だよ」
灯可の声に頷く。
任せて。やり方は分かった!
「いーち、にーい、さーん……」
見可と鶴来が数を数え始めた。美鶴は、じいっと紙を見ながら、その上に目や鼻や口を置いてみている。ちゃんと置いても、変な顔だなあ。
「じゅう!」
二人が言うと、灯可が美鶴の後ろに立って目の上に布をまいた。見可と鶴来が、紙の上の目と鼻と口をどかした。
「目だよ」
鶴来が手にした片目を、美鶴の手に握らせる。美鶴は両手で持って、形を確かめた。指で縁をなぞってから、よし、と呟いて紙の上に置く。
「あ」
紙の真ん中の、本当は鼻がある辺りに目が一つ置かれて、思わず声が出る。
「成人さま。しー」
灯可が小声で言って、人差し指を口に当てた。あ、そうか。口を出したら駄目なんだ。目隠しをして、顔を作る遊びか!見可が、口を手で押さえて、うっくっくっ、と笑っている。鶴来は、楽しそうな顔でまた、美鶴の手に、目を握らせた。
「もう一個、目だよ」
美鶴は、真剣な顔で目の形を小さな手でなぞり、また紙の上に乗せる。真ん中に置いた目を手で確認して横に置いたので、今置いた目は、顔の輪郭からはみ出してしまった。
見可は、肩を震わせて笑っている。声を出さないように頑張ってるみたい。鶴来も、笑いを堪えながら鼻を手渡す。
「鼻よね?」
「うん」
笑いを堪える鶴来が、何にも言わずに鼻を握らせたから、美鶴が手の中の鼻をなぞりながら聞いてきた。俺が答えると、目の下にくっつくように置く。ますますおかしな顔になってきた。横を見ると灯可も、くっくっくって笑い始めていた。
最後に鼻の下のだいぶ離れた場所、もちろん輪郭に入っていない所に口を置いて完成。
「できた」
美鶴が目の布を外しているうちに、あーっはっはっはっは、と見可が笑い声を上げた。鶴来と灯可も笑っている。布を外した美鶴も、
「なあに、これー」
と、笑い出した。輪郭の中に入らなかった片目と口。きちんと配置しても面白い顔なのに、はみ出してたら、そりゃおかしなことになるよね。
「ふふっ。ふふふ」
見れば見るほど、変な顔だ。
皆で大笑い。
そうか、だから福笑いって名前なのか。笑っちゃうから?笑いの前についている福ってなんだろ?また、調べてみよう。
「次、成人さまの順番だよ」
灯可の声に頷く。
任せて。やり方は分かった!
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