人形と皇子

かずえ

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第五章 それは日々の話

187 仲間  成人

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 ご飯は、色々な種類が出てきたけど多すぎなくて、ほとんど食べることができた。上等で、見た目もすごく綺麗にしてあったけど、広末ひろすえのご飯だった。俺の、一番好きな味!どんな見た目でも分かっちゃうなあ。
 
「ごちそうさまでした」

 可愛い声が聞こえて、顔を上げると目が合った。着物じゃないし、髪の毛も短いから男の子かなって思ってたけど、声が可愛いし女の子かもしれない。また、にこってしてる。朱可しゅかさんとよく似てて、とっても綺麗な子どもだ。隣の子は、茉璃まつりさんと似てて可愛い。隣を見て、慌ててデザートのゼリーを食べている。詰め込んじゃ駄目よって隣の茉璃まつりさんが言っても、早く食べようと詰め込む。

「俺も、ごちそうさま」

 って俺が言うと、笑ってる子どもの目がきらきらした。

「遊ぼう」
「待って。私も」

 隣の子が、口に入ったまま立とうとする。こら、って茉璃まつりさんに抱えられた。

「口に食べ物が入ってる時に、立ち上がっちゃいけませんよ」

 うんうんと頷きながら、一生懸命もぐもぐしてる。可愛い。小さいのにちゃんとしてて、偉いなあ。
 机をぐるっと回って、誘ってくれた子の近くに行くと、朱可しゅかさんの後ろに置いてあった袋から何か出てきた。歪んだ大きな丸を描いた紙と、ばらばらの目と鼻と口。これが、福笑い?何か、目や鼻や口が大きくて、変な風に見える。
 俺の横の横の横の横くらいに座ってた子ども二人も、近くに来た。一人は、髪の毛を結って着物を着てるから女の子だろう。もう一人は、一条の二人と同じ、半ズボンとシャツ、上着だから男の子かな。髪の毛も短いし。

「ええと。はじめまして。成人なるひとです」

 さっき、名前を呼んでくれてたけど、はじめましてだから、ご挨拶。座ったまま頭を下げると、誘ってくれた子が、あ、と言って背筋を伸ばした。

「はじめまして。一条灯可とうかです。八歳です」
「一条見可みかです。六歳です」

 灯可とうかが言うと、見可みかもきりっとした顔で教えてくれた。可愛いなあ。

「はじめまして。四条美鶴みつるです。八歳です」
「はじめまして。四条鶴来つるぎです。六歳です」

 みんな、ご挨拶も上手。あ、そうだ。

「俺、十七歳です」
「え?」

 灯可とうかがびっくりしてる。どうかした?

「すみません。同じお料理を食べていたから、もう少し私たちに近い年齢かと思ってて」

 あ、美味しかったよね、料理!

「デザート、美味しかったね」

 見可みかが言ったので、うんうんと頷いた。

「人参がお花になってて可愛かった」

 美鶴みつるが、にこにこして言う。綺麗だったねえ。

「私、全部食べたよ」
「え?鶴来つるぎくん、全部食べたのか?凄いな」
「兄上、私も全部食べた」
見可みかも偉い、偉い」
「あれなら、絶対残さないよねー」
「辛くないし、しょっぱくないし、噛めないとこもなかった」
「明日も食べたいね」

 そうでしょ?広末ひろすえのご飯、美味しいでしょ?
 皆が美味しかったって言ってくれるのが嬉しくて、にこにこしてしまう。
 俺もたくさん食べたよ。一緒だ。

「あ、成人なるひとさま。一緒に遊ぶの、退屈じゃないですか?」

 灯可とうかが急にこちらを向いて言うから、びっくりしてしまった。
 俺は首を横に振る。
 ご飯の話とか、一緒にできて嬉しい。皆の話を聞くのも。

「楽しい」
「なら、良かった」

 灯可とうかはにこっと笑ってくれた。
 まだ、福笑いで遊んでないのに、もう楽しい!
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