【完結】人形と皇子

かずえ

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第五章 それは日々の話

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末良すえよし、これもどうぞ」

 俺の手にまたプレゼントが返ってきた隙に、力丸りきまるが手に持っていた袋からボールを取り出して末良すえよしに渡した。
 受け取った末良すえよしが、ぎゅっとボールを握ると、ブベッ、て間抜けな音がした。
 ええー。
 何これ、面白い。

「うゃ?」

 びっくりして変な声を出した末良すえよしが、ボールをぶんぶん振っているけど、何にも音が出ない。 

「あう?」
末良すえよし、くーださい」

 力丸りきまるが手を出すと、あい、とボールが返ってくる。

「ありがと。はい、どうぞ」

 ブベッ。

「あひゃ」
「あはは」

 分かった。きっと、ぎゅって握ると音が鳴るんだ。末良すえよしは笑いながらまた、ぶんぶんと振っている。
 違うよ、末良すえよし
 教えてあげようと思ったら、ぶんぶん振りすぎたボールが末良すえよしの手からころりと落ちた。ころころと転がっていくボールを、あ、あ、と言いながらはいはいの体勢になった末良すえよしが追いかける。
 周りの人が、末良すえよしが机に当たらないように移動しながら見守っていたら、真剣な顔で追いついてボールをぎゅっと捕まえた。
 ブベッ。
 きゃ。きゃきゃきゃきゃきゃ、と末良すえよしが笑う。お座りの形に戻るまでに何度もつぶれたボールが、そのたびにブベッ、ブベッと音を立てて、皆で大笑いした。

成人なるひとさんの贈り物は、私が預かっててもいいですか?」 

 もちろん。
 斑鹿乃むらかのが差し出してくれた手に、すっかりくしゃくしゃになった桃色の紙袋を渡すと、ちゃんと受け取らずにごめんなさいね、と謝られた。
 え?大丈夫。だって。

「ありがとうってしてくれたよ」
「はい。ありがとうございます」

 そう言いながら中を見た斑鹿乃むらかのが、まあ、可愛い、と笑顔になった。
 ふふ。そうでしょ?

「一緒」

 そう言いながら、服に付いてる帽子を被る。今日は、くまの服を着てきたんだ。帽子がお揃いになるからね。

「まああ。ほんと。そのお洋服、可愛いですもんね。一緒なんて嬉しいわ」

 力丸りきまるとボールできゃあきゃあ遊んでいる末良すえよしに、斑鹿乃むらかのが帽子を被せた。

「わ。すえ、可愛い」
「おお。似合う似合う」

 周りで声が上がる。
 末良すえよしは顔を上に向けて何か探しているようにした後、ぶんぶん頭を振ってからボールをポイと投げ捨てて、帽子を頭から取った。じーと見て、少し振ってみて握ってみてから、ぽい、と投げる。さっき投げて転がったボールに向かって、またはいはいしていった。
 くそー。
 俺も、音の出る帽子にすれば良かった。

「はーはっはっ。俺のボールが一番人気だな」

 力丸りきまる
 悔しいけど、あのボール、面白かったよ。
 
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