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第五章 それは日々の話
30 謹慎 成人
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じいやから、じりじりと離れるように半助は部屋に戻っていく。まるで戦闘中みたいな緊張感。ぴんと張りつめた気配に気付いた力丸の部屋の扉が、警戒しながら開く。
俺は二人から少し離れた。何かあっても避けるのが間に合わないからね。自分で気をつけないと。生松も警戒して距離を取っている。さすが、元従軍医師。緊迫した気配は分かるみたいだ。
壱臣だけが、心配そうに半助の手を離さない。支えるように体の位置を代えて、うちが連れていきます、とじいやに頭を下げた。ふ、とじいやの気配が弛む。
「壱臣さんには敵いません」
「え?」
「半助」
首を傾げる壱臣に笑いかけて、厳しい声を上げる。
「生松先生の許可が出るまで、謹慎しておれ」
項垂れた半助が、はいと小さな返事をして部屋に入った。生松が一度、自分の部屋に戻って診療かばんを手に後を追う。
「あー、半助か」
「力丸、ちょうど良い。半助はしばらく謹慎させる。一ノ瀬の手の者を朱実殿下の元へ向かわせる手配をしてくるから、その間成人さまを頼む」
あっという間にじいやの気配が消えた。力丸に頼まなくても、おうちの中で危ないことなんて無いのに。
「ねえ?」
「あん?」
力丸は欠伸をしながら頭をかく。ふふ、おはよ。
「半助見てくる」
「あー、待て。着替えて顔を洗うから」
「後で来てね」
「駄目だ。俺が荘重さまに怒られる。ちょっとこっち来い」
簡単に抱っこされて、力丸の部屋に運ばれちゃった。もう。半助の看病したいのに。
「お前、ちょっと大きくなったな」
え、そう?俺、最近調子良いんだ。
うへへ、と笑ったら、嬉しそうに背中をぽんぽんされた。それから、ぱっと下ろしてきょろきょろする。
「殿下は?」
「寝てる」
「だよなー、良かった」
何が?
力丸は、見上げる俺の頬を優しく撫でる。力丸は頭を撫でないから緊張しない。
「まあいいや。待ってろ。半助はどうせ、しばらく動けない。出張から帰ってきてから、ほとんど寝てなかったからな。そろそろ限界だと思ってた」
え?そうなの?出張?九鬼のお城に行ったこと?もう帰ってきてから十日も経つよ。
「なんで寝てないの?」
力丸は、困ったような顔で俺を見る。ちょっと考えてから口を開いた。
「なんでだろな。後で半助に聞いてみてくれ」
そうだね。
半助に聞いたらいいか。
俺は二人から少し離れた。何かあっても避けるのが間に合わないからね。自分で気をつけないと。生松も警戒して距離を取っている。さすが、元従軍医師。緊迫した気配は分かるみたいだ。
壱臣だけが、心配そうに半助の手を離さない。支えるように体の位置を代えて、うちが連れていきます、とじいやに頭を下げた。ふ、とじいやの気配が弛む。
「壱臣さんには敵いません」
「え?」
「半助」
首を傾げる壱臣に笑いかけて、厳しい声を上げる。
「生松先生の許可が出るまで、謹慎しておれ」
項垂れた半助が、はいと小さな返事をして部屋に入った。生松が一度、自分の部屋に戻って診療かばんを手に後を追う。
「あー、半助か」
「力丸、ちょうど良い。半助はしばらく謹慎させる。一ノ瀬の手の者を朱実殿下の元へ向かわせる手配をしてくるから、その間成人さまを頼む」
あっという間にじいやの気配が消えた。力丸に頼まなくても、おうちの中で危ないことなんて無いのに。
「ねえ?」
「あん?」
力丸は欠伸をしながら頭をかく。ふふ、おはよ。
「半助見てくる」
「あー、待て。着替えて顔を洗うから」
「後で来てね」
「駄目だ。俺が荘重さまに怒られる。ちょっとこっち来い」
簡単に抱っこされて、力丸の部屋に運ばれちゃった。もう。半助の看病したいのに。
「お前、ちょっと大きくなったな」
え、そう?俺、最近調子良いんだ。
うへへ、と笑ったら、嬉しそうに背中をぽんぽんされた。それから、ぱっと下ろしてきょろきょろする。
「殿下は?」
「寝てる」
「だよなー、良かった」
何が?
力丸は、見上げる俺の頬を優しく撫でる。力丸は頭を撫でないから緊張しない。
「まあいいや。待ってろ。半助はどうせ、しばらく動けない。出張から帰ってきてから、ほとんど寝てなかったからな。そろそろ限界だと思ってた」
え?そうなの?出張?九鬼のお城に行ったこと?もう帰ってきてから十日も経つよ。
「なんで寝てないの?」
力丸は、困ったような顔で俺を見る。ちょっと考えてから口を開いた。
「なんでだろな。後で半助に聞いてみてくれ」
そうだね。
半助に聞いたらいいか。
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