人形と皇子

かずえ

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第五章 それは日々の話

11 作ってやるよ  広末

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「だいたい分かった。」

 たこ焼きを一つ皿に置いて割ってみる。真ん中からころんとたこが出てくる。

「なる坊は、このたこは食えるのか?」
「んーん。」

 湯呑みにふーふーしながら、成人なるひとが答える。そろそろ冷めたんじゃねえか?
 
広末ひろすえさん、これ。」

 蒸気で温めていたたこ焼きを村次むらつぐが持ってくる。頼もしくなったなあ、と思いながら、ほかほかと湯気の上がるそれを口に入れた。

「あち、あちち……。」

 流石に外側には息をかけたのに、中が予想以上に熱くなっていた。
 見ていた力丸りきまるが笑っている。

「できたては、熱くて旨いって言ったじゃーん。」
「じゃーん。」

 成人なるひとまで乗っかってるが、お前これ、絶対食えねえだろー。ああ、でも確かに美味しいな。焼き立てなら、この生地の外側がかりっとしてるんだろう?で、中は熱くてふわふわで、たこが旨い、と。
 これは、よくできた食べ物だなあ。食事にもおやつにもなりそうだ。
 俺の様子を見ていた村次むらつぐが、慎重に温かいたこ焼きを口に入れる。慎重に入れても、噛んで、はふはふとしている。これはそうして食べる食べ物なのかもな。そういうところも好ましい。

「気に入った!」
「うん、美味しい。」

 俺と村次むらつぐが言うと、力丸りきまる成人なるひとがやったー、と喜んでいる。

「明日食べるー。」

 うん?いや待て。

成人なるひと、それは無理。」

 村次むらつぐがすかさず言って、えー、と不満の声が上がった。

「あのな、これは特別な焼き型が無いとできねえ。生地は、小麦粉や出汁、卵だろうなって何となく分かるが、上にかかってるたれが、今まで食べたことのない代物だ。材料を揃えるのに時間がかかるから、お預けだ。」
「むう。たこは無くてもいいけど。」
「馬鹿、たこが無いと焼きになっちまう……。」

 と言いかけて気付く。そういや成人なるひとはずっと焼きって言ってたな。

「わはは。だから、焼きか。」
「ふふ。焼き食べる。」
「俺は、たこ焼きがいい。これは、たこが真ん中にあって完成してるだろー。」
「飴入れたら美味しいかな。」

 村次むらつぐが盛大に顔をしかめた。

「いやー、甘いー。」
「どろどろじゃーん。」

 けらけら笑った力丸りきまるが、大人しく話を聞いていた三郎さぶろうを覗き込んで、なー?と言う。

「え?あ、はい。飴は溶けると思います。」

 真面目に答える三郎さぶろうに、三人が、けたけたと笑い声を上げる。

「知ってるよー。好きな物に好きなもの入れたら美味しいかなって思っただけ。」
「あ、はい、そうですね。美味しい……のかな。」
「美味しいわけないでしょ。」
「いちいち反応すんなって。冗談だよ、冗談。」
「冗談……。」

 そういえば、落ち着いているが三郎さぶろうも、この子たちと年齢としが近そうだな。四人で仲良くできそうで良かった。
 珍しく落ち着いて座ったままお茶を飲み干した荘重むらしげさまが、目を細めてその様子を見ている。
 楽しい休憩時間だった。
 体調を崩している壱臣いちおみさんにも早く戻ってもらわねえとな。
 半分に割ったたこ焼きを村次むらつぐと食べて、残りのたこ焼きを皿に入れ冷蔵庫にしまう。
 まずは、焼き型が手に入るか調べてもらわねえと。
 ああ、楽しい!
 



 
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