【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第五章 それは日々の話

9 焼きについての考察 1  広末

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「ただいま!」
「お土産持ってきたー。」

 力丸りきまるさまとなる坊が、朝からずっと声をかけたそうにしているのは気付いていた。昨日、泊まりの仕事から帰ってきたばかりだから、今日の二人の仕事は休みなんだろう。顔を見合わせてはこちらを伺っている。作ってほしい食べ物があるに違いない。気付いていても、忙しくてなかなかこちらから話しかけてやれないでいるうちに昼を過ぎていた。
 二人とも、いつの間にか姿が見えなかったから、皇城にでも行っていたんだろう。なる坊は土産を買うのが好きだから、皇妃殿下や赤璃あかり殿下に土産でも渡しに行っていたに違いない。ちゃんと俺と村次むらつぐの休憩時間を見計らって来てくれる辺りが、よく見ていてくれるんだな、とちょっと嬉しい。
 土産だと差し出された箱は、紙がへろへろになっている。温かい物を入れて、冷めるときに水分を吸ったのだろう。開けてみると、少し潰れた丸い食べ物が並んで、濃い茶色のたれと、しんなりしたかつお節と青のりがかかっていた。酸味のある良い匂いがする。

「たこ焼きって言うんだ。作って」
「焼きは美味しい。作って」

 二人同時に喋ったら、聞き取りにくい。

「食欲をそそる匂いですね」

 村次むらつぐが俺の手にある箱に顔を近付けて言う。もともと口数の少ない奴だが、友達二人が同時にいなくて寂しかったんだろ? 今日は朝から、そわそわと二人の姿を目で追っていた。話を聞くのを楽しみにしてたに違いない。もちろん、俺もだ。

「美味しいんだよ。ね?」
「屋台で売ってて、できたては凄く熱いんだよな」

 すっかり冷めてしぼんでいるが、とりあえず一つ食べてみるか。

「これは八つ入ってるが、全部、俺と村次むらつぐで食べていいのか?」
「うーんと、壱臣いちおみも」
壱臣いちおみさんは食べてきてないのか」
「うん。俺と力丸りきまる三郎さぶろうとじいやで食べた」

 作り方についての情報が少なそうな気がするな……。
 とりあえず、冷めた焼き? たこ焼き? とやらを、刺してある爪楊枝で持ち上げて口に入れる。村次むらつぐに爪楊枝を渡すと、同じようにすぐ口に放りこんだ。
 まわりの生地は口当たりよく、冷めても固くなったりはしていない。味は、匂いを出していたたれがそのまま主張していて美味しい。噛んでいると、アクセントのように紅生姜が出てきて、それも良く馴染んでいた。かつお節や青のりともとても良く合う。真ん中に、弾力のある噛むほど味の出る魚介、たこが入って存在を出していた。
 成程、これは。

「旨いな」
「美味しいですね」

 俺と村次むらつぐが言うと、二人がにまっと嬉しそうに笑う。

「温かいと凄く美味しいだろうな」
「蒸気で温めてみますか?」
「生地がしんなりしてしまうが、やってみるか」

 俺と村次むらつぐが話していると、

「もう作れる?」

 と、なる坊が聞いてきた。

「いや。作り方は見たのか?」
「うん。白いの入れてたこ入れて、くるくると棒で回す」
「すごいよなあ、あれ。棒一本で真ん丸になるもんなあ」

 予想通りだ。
 全く映像が浮かんでこねえ……。
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