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第四章 西からの迷い人
122 御守り 成人
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「長かったな。何をお願いしたんだ?」
俺がお祈りを終えて神様の前から避けると、力丸はとっくに避けて待っていた。
「えーと。」
「成人さま。お願い事は胸に秘めて人に知らせぬ方が叶いやすい、と言われております。」
「え?そうなの?じゃ、言わない。」
「ちぇっ。じい様はお堅いことだ。」
何か力丸がぶつぶつとふてくされてるけど、言わない方がいいって知らない人に聞くの、悪いんじゃない?
「力丸は何をお願いしたの?」
「言わねえよ。」
ずるい。自分は聞いてきたのに。俺だって絶対言わないからね。
「御守り買います?」
「ああ。一つあってもいいかもしれませんね。記念です。」
力丸とじいやが話している。
御守りってなに?と思ったけど、口には出さずにじいやと手を繋いだ。力丸は笑うから聞かない。
「おい、成人。俺と繋ごうぜ。」
「力丸は三郎と繋いで。そしたら、ちょうどいい。」
「むう。そうだけどさ。」
「あ、私はちゃんと付いていくので大丈夫ですよ。」
三郎が慌てて言ったけど、力丸は、じゃ、そうするか、と言ってひょいと三郎の手を取った。三郎は口とは反対にそのまま手を繋いで、ちょっと嬉しそうだった。
お詣りしたお社から少し歩くと、屋敷のような建物があり、窓を開けた所に何か品物が並んでいて、たくさんの人がその品物を選んでいる。
「御守り買おうか。」
力丸がにやにやしながら言う。御守りってなに?って絶対言わないからね。
ぷい、と横を向いて人だかりの後ろから覗いてみる。小さな手の平に乗るくらいの四角い袋?いろんな色があって、文字が書いてある。文字も色々な形だった。読めなくはないけど、普段使わない言葉は意味が分からない。読み方があってるかも分からないから、口をつぐむ。
「御守りだよ。身に付けておくと、神様が守ってくれるんだって。だいたい皆、生まれて一月で親とお社に行って神様にお詣りして、御守りをもらうんだ。大きくなってからは、自分の願いに近い御守りを買ったりもする。」
力丸が教えてくれたので、へえ、と言いながら御守りを眺める。
こんな小さいのに、すごいんだなあ。
「お願いに近い御守りはあるか?」
家内安全。どういう意味?
商売繁盛。分からん。
学業成就。読めん。
交通安全。車の運転できないしなあ。
厄除。読めん。
恋愛成就。だから、読めんのよ……。
健康長寿。……これかな。健康を願ってる気がする。長寿が分かんないし、読めないけど。
健康長寿を持ってみると、へえ、成る程ねと力丸が呟いている。
「元気で長生きできることを願う御守りですね。」
じいやが言ってくれた。
おお。それだ。
俺、大当たり!
こんなに小さいのに四百円もするのか。
ちょっと悩んで、御守りは買わずにそこから離れた。
「買わないの?」
「うーん。」
俺は右手の指輪を見つめる。生まれてから最初に貰う、大事に思う気持ちを込めた物が御守りなんだとしたら、俺の御守りは死ぬまで一つだけだ。
「あるから、いらない。」
俺がお祈りを終えて神様の前から避けると、力丸はとっくに避けて待っていた。
「えーと。」
「成人さま。お願い事は胸に秘めて人に知らせぬ方が叶いやすい、と言われております。」
「え?そうなの?じゃ、言わない。」
「ちぇっ。じい様はお堅いことだ。」
何か力丸がぶつぶつとふてくされてるけど、言わない方がいいって知らない人に聞くの、悪いんじゃない?
「力丸は何をお願いしたの?」
「言わねえよ。」
ずるい。自分は聞いてきたのに。俺だって絶対言わないからね。
「御守り買います?」
「ああ。一つあってもいいかもしれませんね。記念です。」
力丸とじいやが話している。
御守りってなに?と思ったけど、口には出さずにじいやと手を繋いだ。力丸は笑うから聞かない。
「おい、成人。俺と繋ごうぜ。」
「力丸は三郎と繋いで。そしたら、ちょうどいい。」
「むう。そうだけどさ。」
「あ、私はちゃんと付いていくので大丈夫ですよ。」
三郎が慌てて言ったけど、力丸は、じゃ、そうするか、と言ってひょいと三郎の手を取った。三郎は口とは反対にそのまま手を繋いで、ちょっと嬉しそうだった。
お詣りしたお社から少し歩くと、屋敷のような建物があり、窓を開けた所に何か品物が並んでいて、たくさんの人がその品物を選んでいる。
「御守り買おうか。」
力丸がにやにやしながら言う。御守りってなに?って絶対言わないからね。
ぷい、と横を向いて人だかりの後ろから覗いてみる。小さな手の平に乗るくらいの四角い袋?いろんな色があって、文字が書いてある。文字も色々な形だった。読めなくはないけど、普段使わない言葉は意味が分からない。読み方があってるかも分からないから、口をつぐむ。
「御守りだよ。身に付けておくと、神様が守ってくれるんだって。だいたい皆、生まれて一月で親とお社に行って神様にお詣りして、御守りをもらうんだ。大きくなってからは、自分の願いに近い御守りを買ったりもする。」
力丸が教えてくれたので、へえ、と言いながら御守りを眺める。
こんな小さいのに、すごいんだなあ。
「お願いに近い御守りはあるか?」
家内安全。どういう意味?
商売繁盛。分からん。
学業成就。読めん。
交通安全。車の運転できないしなあ。
厄除。読めん。
恋愛成就。だから、読めんのよ……。
健康長寿。……これかな。健康を願ってる気がする。長寿が分かんないし、読めないけど。
健康長寿を持ってみると、へえ、成る程ねと力丸が呟いている。
「元気で長生きできることを願う御守りですね。」
じいやが言ってくれた。
おお。それだ。
俺、大当たり!
こんなに小さいのに四百円もするのか。
ちょっと悩んで、御守りは買わずにそこから離れた。
「買わないの?」
「うーん。」
俺は右手の指輪を見つめる。生まれてから最初に貰う、大事に思う気持ちを込めた物が御守りなんだとしたら、俺の御守りは死ぬまで一つだけだ。
「あるから、いらない。」
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